アコースティックライヴの魅力~SOUND FOREST 2013

5月12日日曜日、大阪府内屈指の緑地公園、服部緑地にあるライヴ会場、服部緑地野外音楽堂にて“SOUND FOREST 2013”が開催された。前日の大雨が嘘のような快晴、コンセプトである「春の心地いい日差しの中、アコースティックスタイルで音楽をゆったり楽しむ」にはちょっと気温が高過ぎるくらい、でも、自然と、体温を感じる音と、ビールが最高なひとときだった。

ここ数年、全国で爆発的に数が増えた野外フェス。夏フェス、という言葉が一般的なように、夏の音楽フェスが圧倒的に多いが、ジャンルやコンセプトにより、極寒の冬を除いては、1年中行われている。なんとなくフェスというものにテンションが上がってたリスナー達が、本当に観たい、聴きたいものを選ぶようになってきた気がする。僕自身、夏フェスは大好きで、FUJI ROCKなどは、ラインナップはもちろん、あの会場の雰囲気、フェス飯、ホスピタリティーを楽しみに毎年足を運んでいる。ただ、夏は暑い。実は初夏のこの時期が、野外で音楽を楽しむには一番いいんじゃないか、と思う。

今年で2回目となる“SOUND FOREST”。全体的にユルめのイベント、ということで、お昼12時オープン/スタート。開場と同時に、MCである僕と、同じくFM802のDJ平野聡との、簡単な注意事項を含めたステージトークでスタート。「なんかしゃべってるなー」とこちらをチラチラ見ながら自由席を選ぶ観客。ラインナップと出演順はすでに発表になっていたので、自分の好きなアーティストを出来るだけ近くで観るために最前列を素早く確保するお客さんもいたが、前の席からつめる感じはない。座席後方の芝生のスペースに最初からレジャーシートを広げて座る人たちもいる。2回目にして「楽しむスタイル」が出来てるなー、と感じた。すでにビールを買い求める列も出来てる。お客さんの、ゆっくりとワクワクしてる感じが伝わってくる。

それでは、出演順に。

ヒトリルーム

今年からステージ上手側、観客席の高い部分の一部を使ってサイドステージを設置。オープンから10分後に演奏スタート。アコースティックギターで弾き語りスタイル。僕も初めて観たが、その声の存在感に、一気にイベントが始まった、という雰囲気が会場を包む。カバー曲を含む数曲だったが、大きな拍手に、初見のリスナーのウェルカムを感じた。

Keishi Tanaka

メインステージのトップは、元リディムサウンターのボーカリスト、本格的にソロ活動をスタートしたKeishi Tanaka。ソロ1stアルバム“Fill”は彼の幅広い音楽性と、日々を豊かにする楽曲たちに、あらためて素晴らしい才能を感じた。なにより歌う時の笑顔。ギター弾き語り。後半、ステージを降りて、客席最前列のすぐ前にスタンドマイクを置き、オーディエンスも演者にしてしまう一体感。トップの重圧(?)から解放されたのか、ただ楽しかったのか、バックヤードでは終始片手にビールだった。

山森大輔(SKA SKA CLUB/ROCK'A'TRENCH)

続けてメインステージに登場した山森君。ROCK'A'TRENCH活動休止後、ゆっくりしたペースでソロへとシフトしてる彼の新曲は、作り込んだトラックをベースにした、意外でもあり、彼の挑戦も感じられる、新たな魅力満載だった。この日はアコースティックスタイル、優しくて力強い、いつもの彼の歌声が会場を癒した。出番後も、その後のアーティストをずっと袖で、笑顔で観てる彼の、音楽への思いに、こっちも笑顔になる。

城領明子

サイドステージに移って、じょうりょうあきこ。SLY TRIBESのボーカルであり、現在は本格的にソロ活動も行う。「大阪ニューヨーク」は、まさに大阪のミュージシャンにしか歌えない、そして彼女ならではの世界に、また会場の雰囲気が一気に変わった。直射日光に2曲目あたりで一瞬フラッとしたそう。来年は下手側にした方がいいかも。

井手綾香

今回最年少の綾香ちゃんはメインステージにてキーボード弾き語り。CMソングなどでお馴染み、すでに多くのファンも獲得してて、待ってました、な、会場。しかし、彼女も他のアーティストと同じく、キーボードと自分の声に向き合い、素晴らしい時間を作ってくれた。まだ19才。この日、彼女には大きな変化があったが、公式発表前みたいなのでここでは書かず、で。

THAMII

サイドステージは、タミー。彼の奏でるビーチサイドミュージックは、海に限らず、どこでも癒しの場所に変えてくれる魅力がある。後述する井上ヤスオバーガーもそうだが、関西のミュージシャンは、観客を掴むスキルがすごい。「次のライヴがあるんで」と慌てて会場を後にした彼のフットワークの軽さも魅力。

金廣真悟(グッドモーニングアメリカ)

今回はソロ、ギター弾き語りで、メインステージに登場の金廣君。バンドの時は、どちらかというとボーカルに徹する寡黙なイメージ~MC担当のベースたなしんの奇行(?)が目立ってるから、かもだけど~だが、ひとりでステージ、を存分に楽しんでいた。グドモのファンもまた違った魅力を楽しめたと思う。“餞の詩”の弾き語り、よかった。始まる前、「俺もステージドリンク、ビールでいいっスかね?」って尋ねる顔が、お茶目だった。

長澤知之

メインステージ続けて、長澤君登場。登場時からの存在感。まさに掻き鳴らし、叫ぶ、彼のスタイルだが、すごく優しさを感じる。イベント自体の雰囲気に、彼自身リラックスして楽しんでるなー、と感じた。あまりの暑さにジャケットを脱ぐと、拍手。「上着脱ぐのに拍手はいらないです」と笑う彼。MCもいつも通り、彼らしかった。

Predawn

サイドステージに静かに立ち、心地いいギターの音色から始まったPredawnのライヴ。今年3月にリリースされたアルバム“A Golden Wheel”にはあらためて彼女の底知れぬ魅力と実力に驚愕させられた。それはライヴも同じ。いつも、いつの間にか始まり、いつの間にか引き込まれる感じ。その不思議な感覚はこの日の観客も感じたと思う。マイペースな笑顔に魅了される。ステージ袖から観てた出演者が皆、「すごい。すごい。」と口々に言ってたのが印象的だった。

moumoon

女性ボーカルが続いて、メインステージはmoumoon。タンバリン片手に笑顔で歌うYUKAちゃんはこの日も抜群の可愛さ。アップな曲に会場も盛り上がる。カホンを台の上に置きたたく、というのは新しいな、と思ったし、普段のライヴからアコースティックスタイルの可能性を広げてるんだろう、と感じた。ステージ前の立ち見スペースもこの日一番の盛り上がり。

井上ヤスオバーガー

moumoonの盛り上がりに、メインステージ前もまだ観客がたくさん残る中、ひときわ大きな声でサイドステージに向かせたのは井上ヤスオバーガー。関西ではかなり有名なシンガーソングライター。とにかくMCが面白い。歌がうまい。喜怒哀楽をメロディーに乗せて観客を飲み込む。来年で40才。来年の誕生日に欲しいプレゼントは、人気、だ、と。この日MCに乗せられ、多くの人が「井上ヤスオバーガー」とTwitterでつぶやいただろう。

荒井岳史(the band apart)

そして、この日のトリ、メインステージは荒井タケシ君。個人的にも一番楽しみだった。体格のいい彼がイスに座り、心地いいリフを奏ではじめると、アコースティックギターの弾き語りでも、すぐにthe band apartのサウンドになる。ただ、同じ曲でも、バンドサウンドの時のスリリングさが、疾走感を残しながら、温かみに変わる。英語詞を日本語詞に変えてのセルフカバー、先月リリースされた、初の全編日本語詞のアルバム“街の14景”からの曲。「ちょっと予定より早く終わりそうだけど、いい?」と、照れながらマイクでスタッフに尋ね、会場からも笑いが。イベント終了後、「俺がトリとか、ないでしょ?」と言ってたが、まさにトリにふさわしい素晴らしいライヴだった。

アンコールに応え、ステージに再び登場した荒井君から、Keishi君がステージに呼ばれる。最近は二人でのアコースティックライヴも多く、気心知れた仲。選んだ曲はサザンオールスターズの“シャララ”。意外だったし、ホントに楽しかった。

MCで荒井君が語った、弾き語りを始めた理由。震災後、被災地に歌いに行く、というイベントに参加したくて、でもバンドで行くにはいろんな支障もあり、ギター1本持って行くことにした、と。自分たちの曲はもちろん、いろんな人の歌を歌う中、弾き語りの近さ、強み、温かさを感じた、と。

EDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)全盛で、もちろん僕も好きだし、ラジオでもOAする。いろんなジャンルがあるのが音楽。この日は、アコースティックの、演者と観客の呼吸がその場を作る凄さ、面白さを再認識したイベントだった。