先生、うちの会社は「4年目問題」に悩まされているんですよ
先生、このところ、うちの会社は呪われているんです。いわゆる「4年目問題」の離職が止まりません
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僕の専門は「人事・人材開発」です。数年くらい前からでしょうか、研究室を訪れる企業人事担当者の方から、こんなご相談を受けることが増えた気がします。
ここで「4年目問題」とは、「新入社員時期の3年間をおえ、実務担当者としてようやく「あぶら」がのりはじめた若手社員が、ぞくぞくと会社を辞めていく問題」です。
一般に「早期離職」とは「新入社員時期の3年間での離職」を言いますので、「4年目問題」とは、そのあとの問題です。会社によって事情は異なりますが、だいたい「4年目から10年目くらいの実務担当者の時期の、あいつぐ離職」のことをいうことが多いようです。いったん、ここでは、この定義で話をすすめましょう。
4年目問題は、様々な理由によって起こります。
下記に代表的な理由を3つだけ書いてみました。ここでキーワードになってくるのは「見通し」ということばです。「離職・見通し」理論とでも呼んでください(笑)。
1.「見通し」を予感させない「放置」
「見通しを予感させない放置」とは、「今後のキャリアに見通しを感じさせないくらい」、上司などから「放置プレイ」をかまされている状態です。マネジャー、上司も、最近は忙しい。ついつい育成のための行動は、後回しになります。そのようなとき、今後のキャリアに「見通し」がもてなくなり、離職につながるケースがあります。
2.「見通し」の持てない「ルーティン」
「見通しを予感させない放置」とは、「このまま、この仕事をしていていいのかな」と思えるほど、「今後のキャリア」に見通しを感じさせない「ルーティン作業」に従事していて、自分のスキル向上の実感、成長実感が持てない場合に起こります。ひとは、長いあいだ、同じような仕事をしていると、どうしても飽きが生じます。そんなとき「仕事をする意味」を見失い、離職につながる可能性があります。
3.「見通し」がもてた先にある「絶望」
「見通し」があればいいというわけではありません。今度は逆に「見通し」がもてたからこそ、離職につながるというケースもあります。実務担当者くらいになってくると、様々な社内事情にも詳しくなってきます。「自分が、あと何年来れば、どんなかたちのキャリアを積むか」・・・おおよそわかってきるのです。そして、その先の「キャリア」がショボイとなると、離職につながります。「あんな先輩にみたいになりたくない」「あんな上司みたいになりたくない」というのが、このケースの離職でよく聴く台詞です。
「見通しが持てた先にある絶望」とは「見通しがもてた先にある将来に希望が感じられずに、離職につながってしまう」ということです
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今日は4年目ー10年目くらいの若手社員がなぜ辞めてしまうのか、を「見通し」という言葉を使って説明してみました。もちろん、この他にも様々な要因があるでしょう。
たとえば、「転職の容易さ」もそのひとつでしょう。
いまや、スマホで人差し指を使ってスワイプしていれば、転職先が見つかる時代です。今日も、SNSには、人材紹介会社の広告がポップアップしているでしょう。要するに、多くの人々は、いまや「転職カード」を片手に仕事をすることができるのです。
せんだっても、中途採用を行っている方が、こんなことをおっしゃっていました。お疲れ様でございます。
「最近の転職希望者は、ひどい人もいますよ。いいところあったら、転職しようかと思って・・・と真顔でいって、スマホ片手に面談にくるのですから。」
そんな時代にあっては、離職もお手軽になるのかもしれません。
あなたの会社の若手社員が「辞めてしまう」のはなぜですか?
あなたの会社の若手社員は「見通し」の先に希望を見ていますか? 絶望を見ていますか?
そして人生はつづく
(こちらの記事は、中原の個人サイト「NAKAHARA-LAB.NET」からの転載・再掲記事です)