部下の行動が1ミリも改善しない「なぞなぞ形式・部下指導」!?

(写真:アフロ)

 うちの上司のフィードバックって「なぞなぞ形式」なんですよ!

 中原先生、何とかしてくださいよ!

   

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 少し前のことになりますが、ある若手ビジネスパーソンのAさんが、こんなボヤキをなさっていました。僕の専門は「人材開発」です。「何とかしてくださいよ」とのAさんからのご依頼に直接おこたえするのは難しいのですが(笑)、ぜひ、そういう「なぞなぞ形式の上司のフィードバック」がこの世から減り「成仏」することを心より願い、このブログでご紹介させていただこうと思います。

  

 Aさん曰く、「なぞなぞ形式のフィードバック」はこんな感じだそうです。

  

上司 「ねー、Aさん、ちょっと時間、いい?」

Aさん「はい」

上司 「なんで呼ばれたか、わかる?」

Aさん「えっ?」

上司 「わかる?」

Aさん「いえ・・・突然なので、すみません。わかりません」

上司 「そうか、わかんないか」

Aさん「はい、すみません・・・なんでしょうか?」

  

上司 「悪かったよね」

Aさん「えっ、悪かった?」

上司 「Aさん、悪かったよね」

Aさん「B社の営業の失敗のことですか?」

上司 「ピンポーン、あたり! あれ、悪かったよね」

Aさん「あ、はい、思い通りにいかなくて・・・すみません」

  

上司 「なにが悪かった? 自責で考えた?」

Aさん「そうですね・・・」

上司 「何が悪いのかな?」

Aさん「そうですね・・・アプローチが遅かったのかな、と」

上司 「ブー、違う」

Aさん「そうですね・・・クロージングの押しが足りないとも思いました」

上司 「ブー、違うよ」

Aさん「・・・・」

上司 「わかってるよね?」

Aさん「そ、そ、そうですね。お客様のニーズ・・・」

上司 「ピンポーン、それよ。ニーズを最初からとらえてないの」

Aさん「すみません・・・以後気をつけます」

  

上司 「なんで?」

Aさん「ですので、ニーズを・・・申し訳ございません」

上司 「で、なんで?」

Aさん「わたしがしっかり、ニーズをとらえてなかったと思います」

上司 「わかってんじゃん。今度、気をつけてね」

Aさん「はい、わかりました。以後、気をつけます」

  

 なぞなぞ形式フィードバック、以上終了(笑)。

 まことに興味深いですね。世の中、これだから、面白すぎて、退屈しません。

  

 さて、皆さんでしたら、このフィードバック、どのような部分が「特徴的」だと思われますか?

 どこが改善のポイントでしょうか?

  

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 なぞなぞ形式フィードバックの特徴は、僕は、下記のように感じました。

  

1.上司とAさん(部下)とのやりとりは、「質問ー回答ー正解・不正解の通知」の連鎖になっている。

 つまりは、ここが「なぞなぞ形式」たる所以です。部下は上司があらかじめもっている答えを「当て」にいかなければならない

  

 上司 「何が悪いのかな?」(発問)

 Aさん「そうですね・・・アプローチが遅かったのかな、と」(返答)

 上司 「ブー、違う」(評価)

  

(※かつてミーハンという会話分析の研究者が、教育指導場面に「IRE連鎖」といったような会話のパターンが繰り返されることを見いだしました。IRE連鎖とは、「Initiation(発問)-Reply(返答)-Evaluation(評価)という教育指導場面で繰り返される会話のパターンです(Mehan 1979)。これに似てますね。)

  

2.上司と部下は「行動改善のポイント」については何一つ話し合ってはいない。

 上司は「なんで?」という問いかけを行っているが、これには「答えること」よりも、「謝罪すること」が求められている。すなわち、この上司の問いかけは、「具体的に行動の改善のポイント」を、部下に考えてもらう機会にはなっていない。

  

 上司 「なんで?」

 Aさん「申し訳ございません」

 上司 「で、なんで?」

 Aさん「わたしにニーズをとらえてなかったと思います」

 上司 「わかってんじゃん。今度、気をつけてね」

  

 さて、皆さん、いかがでしょうか?

 こんなフィードバックをされた経験はないですか?

  

 本来ならば、フィードバックとは「耳の痛いことを通知」しつつも、立て直しのお手伝いをすること。

  

 対して、こうした「なぞなぞ形式フィードバック」の「効果性」は、おそらく低いと思います。

 なぜなら、「答えのあてっこ」は「わかってんなら、最初から言えよ!」という反感を部下の頭に生み、自責思考にはつながらないからであろうから。

 また上司は最後に「なぜ?」と理由を聞いていますが、それは「謝罪」で終わっており、「行動の改善」について1歩踏み込んだ会話は、何もなされていないから。

   

 すなわち、部下の頭には、

  

 感情としては「反感」

 認知としては「思考停止」

  

 が生まれてしまうから(泣)

  

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 今日はフィードバックのお話をしました。

   

 みなさんは「なぞなぞ形式の部下指導」を経験なさったことはありますか?

 あなたは「なぞなぞ形式のフィードバック」をしていませんか?

  

 そして人生はつづく

(この記事は、中原淳の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」の過去記事を加筆・修正しています)