海外の状況を横目に、「日本企業の人材開発投資のあり方」を拝見させていただいたとき、非常に「特徴的」だな思うことがあります。人材開発施策ごとの各国の投資金額を正確に記録するデータを持ち合わせていないので(信頼にたるデータが見当たらない)、以下は、印象的なものになりますが、僕の直感を端的にまとめるのだとすると、以下の2点です。
1.新入社員教育への「投資」っぷりがすごい(笑)
2.マネジャー教育や上級管理職への「投資」がぺらぺらに薄い(泣)
以下、これを考えてみましょう。
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1「新入社員教育への投資がすごい」というのは、読んでそのままです。
新卒一括採用の雇用慣行が支配する我が国では、新入社員を一時期に大量に採用し、この時期にいっせいに「社会化」していきます。そこには大量のコストが投じられています。短い企業でも数週間、長い企業になれば1年以上、新入社員教育が続くケースもあります。
ですので、日本で「人材開発」というと、ほぼ、新入社員への教育をさしてしまうケースも少なくありません。新人教育は「人材開発の顔」と形容される場合もあるくらいです。
もちろん技術職など、教育に時間がかかる業種・業態もございましょう。
また、こうした企業の投資は、その前過程である「教育機関から企業へのトランジション(移行)」がうまくいっていないために、企業側でそのコストを負担せざるをえない、といった「やむにやまれぬ事情」もありうるのかな、と思います。
いずれにしても、新入社員教育への投資は、他からくらべて非常に大きい印象があります。
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反面、手薄になってしまうのが「マネジャー教育や上級管理職への投資」のように思います。
海外の文献などを読んでおりますと、むしろ「人材開発の顔は管理職教育」という感じがいたします。が、それは日本では、あまり感じられません。
日本では、
・新入社員1年目を終えたら「一人前」とされる傾向がある
・管理職を呼びつけて、教育なんてできない・・・と思い込んでいる
・管理職になるくらいの人材は「現場」で勝手に学べ・・・という根性主義がまかりとおる
という傾向があるせいか、マネジャーやリーダー育成などが、あまりなされない傾向があるように思います。
一般には階層別研修などは行われていますが、よくて3日、たいてい2日くらいで「考課者研修」「コンプライアンス研修」「ハラスメント研修」「心構え」「経営者からの薫陶」の5セットが「定番コース」かな、と思います。
会社として「いっておきたいこと」「やっておいたことにしなければならないこと」「しくみをまわすために必要なこと」の最小レベルをあわせた感じです。
その際、抜けてしまいがちなのは
・管理職の仕事をするために知っておいたらいい現場のリアル
・管理職の仕事をするために必要な部下を動かすスキル
・管理職として仕事をしつづけるために必要な「成長の鏡=フィードバックの機会」
などかな、と思います。つまり管理職になる人が、これから相対する現実の課題をコンテンツとすることが抜け落ちる傾向があります。
RPGにたとえるならば、リーダーや管理職の皆さんは、「武器」や「防具」をまったく持ち合わせないまま、街を出て闘わなければならないのです。
あのね、武器も防具も持たないで「町」を出てしまったら、「スライム」にだって、やられちゃうよ。
どの先行研究もこの結果支持しますが、効果の高い管理職研修は「移行期」がベストです。
つまり「管理職になる直前」と「管理職になったあと」です。僕は「管理職への支援はプラスマイナスワン(+ー1)の時期:管理職になる1年前から1年後にかけて」行うとよいのでは、ということを申し上げておりますが、リソースのせいか、なかなかそれが実現しません。
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今日は人材開発投資のあり方に関して雑感を述べました。
要するに言いたいことは、日本の人材開発投資は、しょっぱなの新人教育時期に「ドカーン」とやって、あとの管理職支援は「チョロン」だということです(笑)
絵にかくと、こんな感じですね。

現在、おおくの企業は人手不足の背景のなか、大量の新入社員採用を行っておりますので、それへの「投資」も必要なのでしょう。
しかし、「能力やスキルが多様な大量の人材」をマネジメントしなければならないのは「現場のマネジャー」です。 今後、人材開発投資のあり方を少し見直していく必要性があるのかな、とも思います
大量の採用を行いつづけるならば「現場の管理職への支援のあり方、強化」も問題になってくるだろうな、と思っています。
大変なことは、すべて現場で起こります。
そして
多様性に相対するのは、現場の管理職なのです。
皆さんの会社・組織の現状はいかがですか?
武器も防具ももたずに、町をでて、スライムにやられていませんか?
そして人生はつづく