「専門家」として待遇があがる職業、あがらない職業!?

(写真:アフロ)

先だって、大学院・中原ゼミで、指導する大学院生のお一人が「専門職とは何か?」に関する記述を含む小論を書いてきてくれました。

彼女の小論は、大変よく書けており、どうかこのまま頑張ってほしいのですが、この小論を拝見しながら、僕は、いろんなことを考えておりました。今日はそんな話題です。

僕が考えていたことの要旨をワンセンテンスで述べるならば

「ある職業」が「専門職」として社会に認知されていくプロセスというのは「闘争の歴史」である

ということです。

別の言葉でいいかえますと、医師や弁護士など、古典的ないくつかの職業をのぞいて、

最初から「専門職」として認知されていた職業はありません

ある職業が「専門職」であるという認知は、「闘争の果て」に「獲得」されるものなのです。

この「闘争の過程」は、一般に、こんな感じで進みます。

まずは、その職業についている人々・同志が集まり、自らの「職業」が「専門職」に値する職業であるとの主張や論理や意識をあわせ、活動を開始していく。

「職業」が専門職として認知を獲得していく過程には「内部の関係者の意識あわせ」がまずは存在するはずです。「意識あわせ」というニュートラルな言葉を使いましたが、これはおそらく「内部の闘争」でしょう。いろんな考えをもった人がいるのです、人が集まれば(笑)

それが終われば、次は「外部にむけての闘争」です。

今度は、自らの「職業」が「専門職」に値する職業であるとの主張を、社会に対して声高におこない、倫理綱領、知識体系などを整備して、専門職団体をつくり、ポリティカルパワーを行政・政治に誇示いきます。

かくして

「ある職業」は「専門職になっていく」

のです。

専門職論の基礎的知識をよみときますと、「ある職業が専門職といわれる基準」には、さまざまな識者が、さまざまなことをいっております。

ただし、その共通点を「ざくっ」とまとめますと、たいがいこんな感じです。

1.明瞭な知識体系・技能体系が存在すること

2.長期にわたって、知識体系・技能体系を学ぶ場が確保されていること

3.資格認定制度など、能力の保持を明示化する社会的装置が準備されていること

4.その仕事自体に自律性が存在すること

5.その仕事自体に行動準則と倫理規定が存在すること

6.専門性を担保するような専門職団体が存在すること

7.知識をアップデートするための生涯学習の仕組みが存在していること

「知識」「能力」「学ぶ」「生涯学習」・・・ほらね「学び系ワード」のオンパレードでしょう。

だから「大人の学び」は大切なんですよ(笑)。

このような物事・諸事を、長い時間をかけて、内部の意識統一をおこない、整備して、社会にそのことを声高に主張し、

ようやく、

あの仕事は、「ちゃんと」しているね

あの仕事は、「専門家じゃなきゃできない仕事」だね

という認知されるようになります。

それは、いわば、長い長い「闘争の歴史」です。

まことに興味深いことですね。

世の中には、さまざまな職業があります。

その中には、専門職や準専門職をめざしているもの、待遇の改善をめざしている職業など、さまざまなものがあります。

しかし、ある職業を社会に認知させ「専門家」たらしめるのは、まずは「内部の力」です。

まずは、そうした「内部の意識」を統一し、力を結集できるかどうか。

内部の力の結集さえできない職業に、社会的認知の向上はありえません・・・少なくともいくつかの恵まれた職業をのぞき、歴史のうえでは。

ごく希に、国家が介入してくる場合もあります。

しかし、それとてまず試されるのは「内部の力」です。

闘争の第一段階は、まずは「内部の闘争」からはじまります。

「内部の闘争」が終われば、次は「外部の闘争」です。今度は、外部にわたって、さまざまな「主張」をおこない、専門職という認知を徐々に獲得していかなければなりません。

専門職という認知は、かくして「獲得」されるものです。

そして、

ある職業の専門性を向上させ、「待遇」をあげていくのは多くの場合「他人」ではありません

他ならぬ、その職業についている人達が動き、集まり、考え、活動を開始していく他はありません

専門性を主張し、待遇を改善していくのは、まずは、その職業についている「内部の力」である

ということです。

先だっての大学院ゼミで、僕は、論文指導をしながら、そんなことを考えていました。

くどいようですが、世の中には、社会的威信を向上させたい職業は、多々とあります。

しかし、それを為すためには、まず内部のメンバーが

闘う覚悟をもてているか

腹をくくっているか

からはじまるということです。

そして人生はつづく

(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」に掲載されていた記事を、加筆・修正したものです)

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