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全く異なる!?インターンシップの「7つのパターン」!?

中原淳立教大学 経営学部 教授
(写真:アフロ)

インターンシップとは、一般に「学生が、まだ教育機関に在籍しているあいだに、自らの興味関心に近い会社・組織において、短期間ー中期間の就業体験を行うこと」を意味します。

こうした就業体験は、学生の「働くこと」に関する「適切な初期期待」や「明瞭なイメージ」を醸成することが期待できますし、自らのキャリアを考えるきっかけにもなりますので、個人的には「よいこと」のように思います。

しかし、一方で、それを受け入れる企業にとっては、ただでさえ「ク●忙しい時期」に「学生の体験学習」を組織化しなければならないので、負荷・コストはそれ相応にかかります。

先だってヒアリングさせていただいた、ある企業の採用関係者の方は(この企業では採用にインターンを紐付けて捉えています)、こんなことをおっしゃっていました。

「昔は採用担当は、"季節労働者"と言われていたんです(採用活動のないときがあったから)。

それが今は(インターンを1年中やっているため)1年間、常に"繁忙期"です。」

この企業では年に100回を超える短期間のインターンを組織なさっているようです。

ところで、企業にとって、インターンをどのように経営活動に位置づけるのか、意味づけていくのかというのは、なかなか悩ましい問題です。

インターンは、仕事の現場に配属する以上きちんと仕事をしてもらわなければならないため、一定の負荷に現場にかけてしまいます。インターンには、一定の経営資源を投入することを意味しますので、であるならば、インターンの組織的意味づけが必要になります。

現在、インターンの組織的意味づけは、下記のような7つくらいの類型が存在しているように思えるのですが、いかがでしょうか。

1.安価な労働力としてのインターン

2.社会貢献としてのインターン

3.新規プロジェクトとしてのインターン

4.職場活性化としてのインターン

5.育成経験としてのインターン

6.採用活動としてのインターン

7.ただ何となくインターン

まず第一は「安価な労働力なインターン」です。

つまり、学生を受け入れても、あまり学習になることはさせず、「オペレーショナルな仕事」の一部を任せて、労働力の一部として使うということです。

これは、インターンの趣旨とはかなりズレているようですが、ケアのないインターンは、これになってしまいがちです。

第二に「社会貢献としてのインターン」は、インターンを企業のCSRに位置づけることです。企業にとっては、直接のメリットはないけれども、社会貢献としては実施しましょう、というスタンスです。

また、インターンは、もはや国が推進しているものでもありますので、「義務化」といったら言い過ぎですが、企業としては「立場上、断れない」ところもあるようです。こうした動きもここに含めることにしましょう。

第三に「新規プロジェクトとしてのインターン」です。

これは、フレッシュな感覚をもつ学生のグループに、やる気のある従業員を加えてグループをつくり、これをきっかけとして、通常業務では行わない「新規プロジェクト」を立ち上げ、実施していくというものです。

「イノベーション」というと大げさですが、そうした「新しいもの」を生み出すきっかけとして「インターン」を利用しようと考えます。

第四には「職場活性化としてのインターン」です。これは、たとえばあまり若手が配属されない職場などに、あえて学生を配属させ、職場を「活性化」させるための触媒にインターンを利用することです。

第五には「育成経験としてのインターン」です。これは、学生をケアする役割として社員をひとりアサインし、育成経験を担ってもらう、ということです。これは、育成経験をあまりもたない社員がいる会社で、時折行われるものです。

第六には「採用活動としてのインターン」です。これは、もうおわかりですね。

インターンの最中に見所のある若者を選別してしまい、そのまま採用するか、あるいは就職活動にとってプラスになるような「ファストパス」を渡してしまうことです。

「仕事の能力」を見分けるために、「仕事を実際にさせること」以上に精密で間違いのない「測定手法」は存在していません。

さすがに「インターン終わったら、即採用」というのはケースとしてはまだ少ないようですが、明示的、ないしは非明示的に「ファストパス」を渡してしまうこと、理論上は、ありえます(ただ就職協定に縛られている企業は、その存在を明示はできないと思いますが・・・ま、これに関しては、すでに一億総抜け駆け状態が生まれているので、敢えて触れないことにしましょう)。

最後は、「ただ何となくインターン」です。

まわりの企業が、なんか、インターンというのをはじめたから・・・。

時流に遅れたくないから・・・・

社長がやれといったから・・・

なだ、何となくインターン(笑)。

経営的な意味づけは、これからでしょうか?

今日は、企業は「インターン」をどのように意味づけるか、ということで7つの類型を出してみました。

実際には、これらは明確に別れているわけではなく、たとえば「3.新規プロジェクトとしてのインターン」と「5.育成経験としてのインターン」などが結びついていることがほとんどですが、この記事では、わかりやすいように敢えて別々に記述しました。

最後に、学生さんにとって、このことからわかることは何か?

それは、会社によってインターンの位置づけは相当異なり、また、そこで提供される体験、クオリティも様々である、ということです。また、インターンで、あなたに期待されている事柄も内容も、異なっているということです。

要するに、インターンといっても「十把一絡げ」で考えることはできません。

「学生の望むインターンのあり方」と「企業が望むインターンのあり方」がマッチすればよいですが、それはなかなか難しいことでもあります。

中には「ペンペン草もはえないようなインターン」もありますし、「担当者が"やる気なし男君"なインターン」も存在します(ブラックなインターンが)。しかし、それも「社会」です。会社は「均質な価値を均等に提供してくれる教育機関」ではありません。

インターンなら何でもいいや、と軽く考えるのではなく、やはりここでも「賢さ」が必要なようです。

インターンシップを見極める智慧を!

そして人生は続く

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(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」に掲載され2014年4月22日 の記事に、加筆・修正を加えたものです)

立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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