若手が会社を辞めるときの「捨て台詞」とは何か?:仕事を任せるときの3つのポイント!?

(写真:アフロ)

かなり前のことになりますが、ある人事部の方とお話していた際、興味深いことをおっしゃっていました。

若手が会社を辞めるとき、捨て台詞のように残していく言葉で、(その会社で)最も多いのは、

「自分の存在意義が感じられないから辞める」

なのだそうです。

特に、最近は、その傾向が強まっているのだとか。皆さんの会社・組織ではいかがでしょうか?

わたしたちはここで深呼吸をしてあくまで理性的に問題をとらえなければなりません。

まず深呼吸をして「会社はてめーの存在意義を確認する場じゃねー」と言いたくなる気持ちをぐっとぐっと押さえ(笑)、「人間とは意味を見いだせずに長くモティベーションを保つことは難しい」という社会科学の常識を「牛」のように反芻したとき、先ほどの命題も一理あることを、認めざるをえないのではないでしょうか。

だとすると、ここに難問が生じます。

もっとも難しいのは、「仕事を通じて、自分の存在意義をいかに確認するか」ということです。

まさか「存在意義を感じなさい!」と命令しても、事態は好転することはあまり期待できません。

また、会社の中には「存在意義を感じられるような仕事」ばかりが溢れているわけではありません。みんなが嫌がる仕事も、地味な仕事もたくさんあるのです。

僕の研究のなかで、これに関連する対処策としては、仕事を任せるときの「意味づけかた」がもっとも効果的であるような気がいたします。

(かなり前ですが,仕事の任せ方研究というのをデータをとってやったことがあります)

ベタでドロドロで全く取り柄も工夫もない方法ですが、結局は、腹をくくって、そうした時間を若手ととる以外に方法は限られているようです。ワンセンテンスで申し上げますが、若手の目を一瞬で輝かせる「魔法の杖」は存在しません。人にまつわることは、結局、ぬるくてかったるい方法しか存在しないのです。

つまり、その人に、ある仕事を任せるときが勝負のときです。仕事を「任せるとき」には、まずは背筋を伸ばして、意識を集中させる必要があります。

そのうえで、当該の人にとって、わかりやすく、

1.「任せたい仕事は何か」?:

仕事の前工程・後工程など、仕事の全体像を言葉にすること。仕事の手続きだけをいうのではなく、その仕事の広がりを説明すること

2.「なぜあなた」なのか?

これを為すことがいかに自分の能力やスキルにとって意味があるのか?を言葉にすること

3.「なぜやる」のか?

組織にとって、それをやることがどんな意味やメリットが生まれるか?目標とどのように関連があるか?

に関して時間は短くとも長くてもよいので、「納得解」をつくってもらうしかないような気がいたします。100%満足を得ることはまず難しいものです。あくまで欲しいのは70%以上の「納得解」です。

特に難しいのは2です。

先ほどもお話しましたとおり、組織の中には、「やりたい仕事」だけが存在するわけではありません。「みんながやりたい仕事」がある一方で、「みんながやりたくない仕事」もあります。

他方「イノベィティブな仕事」中で「ルーティンどっぷりの仕事」も存在します。誰かが、それぞれを担わなくてはなりません。そして、人が組織で働くかぎり、みんながやりたくない仕事や地味な仕事をこなすことから、たいてい逃げられません。それが組織から給料をもらうということです。

そうなると、容易に想像できる事態は、任せる仕事と本人がやりたいことの落差です。

すなわち、

「自分がやりたい仕事」と「会社が今、その人にやってもらいたいと考える仕事」にギャップが生まれること

がすぐに想定されます。

「オレとしては、こっちが適性だし、能力にあっていると思っている。でも、組織としては、違う方向を向け」

と言われる。そういう事態が生まれます。そうなると、先ほどの2つめの条件「なぜあなたなのか条件」が毀損されます。

しかし、ここで、わたしたちが冷静に心にとめなければならないことは、「自分がやりたい仕事」と「会社が今、その人にやってもらいたいと考える仕事」がぴったり重なることというのは、ほぼ「希」に近いという単純な事実です。つまり、それが重ならないことをわたしたちは「現実」として受け入れなくてはなりません。

だとするならば、結局は、何とかかんとか意味をやりくりして(Manage:マネージ)、「納得解」を作ってもらうほかはないのです。例えば、

「今は、この仕事をやってもらうけど、この仕事で培った経験は、今後、あなたのやりたいところに生きるから」

とか

「この仕事をやりとげることは、会社の伸びていく方向にぴったりと重なっているので、今後のキャリアにもつながるから」

という具合に、言って聞かせるしか方法はありません。

マネジャーの動詞「マネージ(Manage)」の語源は、「やりくり」です。マネジャーに為しうることは「問題を鮮やかに解決すること」ではありません。まさに語源通り「問題をやりくり」していくことです。

マネジャーとは「問題を解決する人」ではなく「やりくりする人」なのです。

今日は「存在意義を感じられないから辞める」ということを皮切りに、仕事を任せるときのことを書いてみました。これは本当に難問中の難問であり、多くの人々が、ここに違和感や困難を感じつつも仕事をしています。いや、これ、本当です。僕は15年近く、この研究を

もし皆さんのなかで、これに悩んでいる方がいらっしゃったら、まず言えることは

「それはあなただけではありません」。

そして、今ある状況をすてて、他の場所にいこうとも

「どこにいこうと、その問題は生まれます」。

まずは、今ある場所で、事態が好転することを願っています。

そして人生は続く

よい週末をお過ごし下さい!

(この記事は、中原の個人ブログ:NAKAHARA-LAB.NETの2015年2月20日の記事の再掲です)