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決勝カード決まる 第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会準決勝(神戸弘陵-京都両洋戦)

中川路里香フリーランスライター
ベスト4の激突らしく、両チーム、好守備が光る緊迫感ある試合を展開した

8月1日、第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会の準決勝が、兵庫県丹波市にある、つかさグループいちじま球場で行われました。日本一になるために甲子園球場で戦う権利を得る為、二試合とも最後まで決着がわかならい白熱した試合となりました。今回は、第1試合 神戸弘陵―京都両洋の試合のリポートです。

【第1試合】 京都両洋 1-2x 神戸弘陵

京都両洋 000 100 0 1 

神戸弘陵 000 002 X 2

■バッテリー

京都両洋 野田、渡邊、漢人―家納

神戸弘陵 日高、島野―安藤

神戸弘陵先発・日高結衣さん(2年)の快投と、京都両洋先発・野田若菜さん(3年)は走者を出しながらホームを踏ませない粘りの投球で、両者3回まで無得点。そんな中、京都両洋が4回表、2死から5番・家納もなみさん(2年)の三塁打、6番・鈴嶋遥奈さん(2年)の左前安打で先制します。が、6回、1死一塁から二盗を失敗し追加点を奪えなかったその裏、今度は神戸弘陵が、代走・浜田さくらさん(3年)が二盗を決めると、9番・師子鹿南さん(3年)、1番・信貴友郁さん(3年)のタイムリーで逆転し、最終回から登板した島野愛友利さん(3年)が2人の走者を出しながらも逃げ切り、決勝進出を決めました。

同点ランナーが生還し、ベンチから大喜びで迎える神戸弘陵ナイン
同点ランナーが生還し、ベンチから大喜びで迎える神戸弘陵ナイン

仲間たちを信じて「できる、できる!」

試合後の勝利者インタビューで、満面の笑顔で答えていた、神戸弘陵・小林芽生主将(3年)。今大会にはケガで出場できず悔しい思いをしながらも、ランナーコーチャーをしながらチームを支えてきました。この試合の途中、スクイズ失敗で得点できなかった場面では内心「マズいな」と思ったといいますが「ベンチを見ると、みんな笑顔で。そうだ、私も最後まで笑顔を貫こう」と決め「仲間たちを信じて『これまでやってこれたんだから、できるよ!』、『できる、できる!』などと声をかけてみんなを励まし続けた」そうです。小林主将のこうしたひと声を力に変え、6回裏には逆転に成功、まさに全員野球で勝利しました。

思い描いた姿を実現する力強さ

7回にリリーフ登板した島野さん。先頭打者に四球を与えると2死一、三塁とピンチを招きます。しかし、スクイズをはずし三振にとると、飛び出した三塁走者を刺して併殺とし勝利をもぎ取ると、試合終了の瞬間、思わず仲間と抱き合って大喜び、涙をぬぐうしぐさも見られました。

 準々決勝後、島野さんは「あくまで目標は日本一。『あと一つ勝てば甲子園』と浮かれることなく、日本一まであと2つ勝つんだという気持ちで準決勝に臨みたい」としながらも「地元兵庫の学校である自分たちが甲子園で決勝を戦うことは大きな意味があると思う」とも話していました。思い描いた通りに事を運ぶことはとても難しいこと。それを実現させた島野さんが、決勝でどんなプレーをしてくれるでしょうか。

逆転のランナーを抱えながらも、それを許さず投げ切った、島野さん(左から2人目)
逆転のランナーを抱えながらも、それを許さず投げ切った、島野さん(左から2人目)

神戸広陵・石原康司監督談話

「勝因は、最後まで諦めなかったこと。ポイントとなった場面は、浜田の二盗。足の速い浜田をどこかで使おうと思っていた。ランナーコーチで出ていた時に相手投手の癖を盗んでいたとはいえ、思い切ってよく決めてくれた。あれでチームが勢いづいた。その後の連続ヒットなど、逆転は選手らの執念でしょう。

 日高、島野の継投は、大会前からの必勝パターン。もちろん、バックもよく守ってくれた。すべてが、まるで筋書のあるドラマのような勝ち方となった」

代走として出場し、見事、二盗を決めた浜田さん。この後、同点のホームを踏んだ
代走として出場し、見事、二盗を決めた浜田さん。この後、同点のホームを踏んだ

「長年、甲子園を目指し男子硬式野球部を指導してきたが、女子に移り、まさかまた甲子園を目指し指導ができるようになるとは。子供たちにしても、自分たちには縁遠いと思っていた甲子園が目標となったことで目の色が変わったと思う。それはどのチームも同様だったでしょう。女子野球の発展にもつながる。関係者の方々のご尽力に感謝します」

「どの試合も全力で最高の試合ができた」

惜しくも敗れた京都両洋。宮木彩主将(3年)は「日高さんのことはチェックしていて『良いピッチャーだね』とみんなで話していました。特に球速があるとわかっていたので、速い球を打つ練習をして対策してきましたが、歯が立ちませんでした」と振り返りました。それだけに、1点を奪えたことは「よくやったと思う」とも。

一方、味方投手陣も2失点に抑える好投でした。試合中、「後ろに私たちがいる、一人じゃない。どんどん打たせて来い!」と常に声を掛けていたといいます。「頑張って投げてくれました」と思いやりました。

笑顔でベンチに戻って来る、宮木主将
笑顔でベンチに戻って来る、宮木主将

宮木主将は、攻守交替でボールをマウンドに返すとき、ボールをひときわ丁寧に扱っているように見えました。「相手も使うボールなので、気持ちを込めて丁寧さを心がけていた」と教えてくれました。

毎回、ボールについた土をぬぐい丁寧にマウンドへ置いていた、
毎回、ボールについた土をぬぐい丁寧にマウンドへ置いていた、

京都両洋は今年の全日本選手権大会の出場権はなく、高校3年間の野球は今大会で終わり。「新型コロナ禍の中、去年できなかった大会を開催していただけたこと、さらに甲子園で決勝という目指す場をつくっていただけたことがありがたく、その分、『楽しんで野球をやろう』を合言葉に」大会に臨んだという宮木主将。「どの試合も全員で楽しんで最高の野球ができました」と最後はすがすがしい表情を見せていました。

(写真は全て筆者撮影)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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