新入社員だけじゃない!?迫りくる「6月病」ストレスの解消法

新入社員だけではない新しい春の病

かつて、5月病とはやる気に満ち溢れ、期待と不安を胸に張りきって4月を乗り越えたフレッシュマン達がゴールデンウイーク中に緊張の糸が途切れ、ふさぎ込んでしまう気持ちになったりして、何かしらストレスを感じるという春の風物詩のように捉えられてきました。

しかし、今や、5月病は新入社員だけのものではなく、人事異動などによって新しい環境に対する適応の状況の中で見られるものとして幅広くとらえられています。

5月病に関して行われた調査によると、年齢や職位に関係なく、不特定多数の男女4323人に実施したアンケートで「5月病になったことがある」と答えた人は、全体の4割近くを占めました。

またそれだけでなく、新入社員においては5月で終わっていたはずの春の病は、年齢や職位に関係なく広がりを見せている中で、「6月病」と呼ばれるケースも増えてきているようです。

そもそも「5月病」という診断名は医学的には存在しておらず、4月には新しい環境への期待があり、やる気があるもののその環境に適応できないでいると、人によってはうつ病に似た症状が出現し、しばしばゴールデンウイーク頃から起きることから、俗称として呼ばれています。

「6月病」も当然のことながら、俗称であるのと共に、梅雨のジメジメした時期である特徴から気持ちが晴れやかになれないこともあり、この名称が使われるようになったことが想定されますが、そのような季節的な特徴はこれまでも同じだったので、特段、真新しい話ではないはずです。

にもかかわらず、まるで症状であるかのように「6月病」と呼ばれるようになった背景が、ここ最近浮き彫りになってきています。

あなたも他人事ではない「6月病」

先ほど、「5月病」の由来をご紹介しましたが、一言でいえば「新しい環境への適応ミス」がこの「病」の発端です。

「6月病」と呼ばれるようになったのは、どうやら梅雨という季節的なものだけではなく、職場環境の変化によって「病」が長期化していることが主たる要因のようです。

バブル華やかなりし頃はもちろんのこと、IT革命が本格化する前の90年代半ばくらいまでは新しく異動してきた人を温かく受け入れる余裕が受け入れる側にはありましたし、異動してきた人も「ならし運転」をしながらスロースタートを切って新しい環境下で仕事をすることができました。しかしながら、今やメールその他の通信手段によって、職場ではもちろんのこと、朝の移動の電車の中ですらもひっきりなしに仕事をしなければいけない状況にある人は山のようにいます。

ハンドルの遊びのない職場の環境は、さながらF1サーキットのようです。

そのような高速で動き続けているサーキット(職場)に、ピットから新参者である異動者がのこのこ入ってこようものなら、轢かれそうになるのも無理はありません。

しかも、業務の複雑性も高まっていることから、引き継がれた業務そのものの困難度も高まってきており、それをこなせるようになることすらも容易ではなくなってきています。

そうした異動した先の職場の受け入れ態勢のなさや、業務の複雑性の高まりが異動者の適応の苦しみを長期化させています。

「○月病」の引き金は「評判プレッシャー」

5月病や6月病が起こる一番の原因はなんでしょうか。

単純に「新しい環境に慣れていない緊張感からくる疲れ」もあるでしょうが、私はそれ以上に、ちょうどこれぐらいの時期から、その新しい環境で「実質的な成果を出すこと」を求められる始めることがこの「病」に拍車をかけていると考えています。つまり「新しい環境で評判をちゃんと得なければ」というプレッシャーが、この時期のストレスの正体なのです。

人は、人からどう見られるかを気にして生きているものです。端的に言えば「できない奴だと思われることが恐ろしい」のです。

新しい環境ではたいてい、それまで自分が培ってきた「評価」とか「評判」がゼロになっています。人間は社会的な動物なので、こうした「評判残高」を失うことに、根本的に不安を感じます。

そこで、新しい環境でも評判残高を増やそうとします。つまり、仲間として認めてもらおうとするということです。そして、そのためには、「そこそこ仕事ができる奴だ」という評判を得なければいけません。その環境で、適切なアウトプットを出せるようにならなければいけないということです。

けれど初めての環境下で仕事をするときは、これまでの方法論が通用しないことは少なくありません。

それは仕事の内容がわからないだけでなはなく、新しい職場の人間関係の輪の中にどう入るのか、誰とどのように関わっていけば、仕事をやりやすい環境を作るのかなど、社会的な動物としての新しいお作法をつかみきれない状況は多かれ少なかれ発生します。

その結果、新しい環境では「適切なアウトプットの出し方がわからない」という状況に陥りやすくなります。そしてこの状況が、新しいことを始めた人にとってプレッシャーに拍車をかけるのです。

成果を生み出すまでの「見通し」をつける

こうしたストレスに対峙したときに効果的なのは、新しい環境で成果を出すための「見通し」をつけるということです。

先ほどのアンケートによると、5月病を経験した人の中で、人に相談すると解消されると感じている人は50%を超えています。とくに注目すべきなのは「先輩や上司に相談すると解消されると思う」と答えた人が30%を超えているということでしょう。これは、先輩や上司に相談することによって「成果を生み出すまでの見通し」が見えてくるからではないかと思います。

そして、大切なのはこの「見通し」は直属の上司と一緒にみつけるべきということです。自分で見通しをつけるとか、状況を知らない人からのアドバイスだと、見落としてしまうことがあるのです。

わかりやすい例で言えば、仕事の締め切りの問題があります。当人の感覚としては、その仕事を完遂するためには半年ぐらいの期間が必要だと思っていたとしましょう。けれどもし、上司が、その仕事を1か月でやってほしいと思っていたら、たとえ半年後に成果を出せたとしても評価はされません。つまり仕事というのは、どれくらいの成果を、どのように(いつ)出すかという「基準」と「方法」をクリアしてはじめて評価されるものなのです。

「新しい職場の上司と合わない!」と言って悩んでいる人も多いですが、上司とうまくいかないのは、性格の不一致という根本原因だけに限らず、成果の基準と成果を出す方法を上司とすり合わせることがそもそもできていないことが話をややこしくさせています。

「評判を得なければ」というプレッシャーから来るストレスは、闇雲に頑張っても解消されません。評価をする人とそれを受ける人が、この2点についてしっかりすり合わせることで、そのストレスはかなり解消されるはずです。

2人のスパーリングパートナーが決め手となる

困ったことに人は、不安なときにはますます「うまくいかない状況証拠」を集めてしまうものです。そして、そのマインドのせいで、よけいに物事がうまくいかなくなっているのです。ですから、新しい環境で不安やストレスを感じたら、そういう自分に正直になって、できるだけ早く対策をとるのがよいでしょう。

先ほど、上司とのすり合わせの必要性をお話ししましたが、最初からいきなり上司に相談するというのは、ハードルが高いと思います。不安で混乱した頭のまま上司に相談したら「何を言っているかわからない」「何と的はずれな質問だろうか」と評価を下げられてしまうリスクもあります。

最終的にはそこの上司に相談するとしても、その前の「頭の整理」は、新しい環境とは関係のない場所で始めるのが効果的です。

「上司への相談」という本番を迎える前に、2人のスパーリングパートナーの協力を得ましょう。

まず、一人目は「感情」を落ち着かせるためのスパーリングパートナーです。

新しい職場に適応ができていない状況においては、自分でも気がつかないうちにプレッシャーを必要以上に感じ、不安な気持ちにさいなまれていることは少なくありません。

そうしたベストコンディションではない状態で、施策を考えたとしても良いアイデアが出るとは限りません。

まずは、そうした「感情」を落ち着かせるために、自分の弱さをさらけ出せる人に話をしてください。

人が不安を感じる根本には「孤独感」があります。まずは「自分には思いを打ち明けられる人がいる」という感覚を取り戻し、心に巣食った孤独の影を取り払うのです。

その人からアドバイスは必要ありません。ただ、気持ちを聞いてもらうだけでいいのです。話すことで孤独が取り払われると、そこではじめて自分の「思考基盤」が立ち上がります。悪く考えがちになっていた頭が、客観的に冷静に考えるためのスタート地点に立てるのです。

「思考基盤」が立ち上がったところから次に協力してもらうのが、二人目のスパーリングパートナーです。

この人には、「思考そのものの整理」、すなわち新しい環境下でアウトプットを出すためのブレーンストーミングに付き合ってもらったり、アイデアを出してもらったりすることに協力をしてもらうのです。

特に有効なのは、今の自分の状況を第三者の目として冷静に分析してもらうことです。

自分の陥っている状況を、整理してもらうことではまり込んでいた狭い視野から抜け出すことが可能になります。この役割を果たすのは、自分の会社の状況をよく知っている人である必要はまったくありません。

論理的に考えられる人であれば、それだけでもサポートになりますが、さらに加えて人生経験の豊富な方であれば、より自分がこの後何をしていけばよいのかが見えてきやすくなるはずです。

こうした「感情の整理」と「思考の整理」を行い、「こういうふうにやれば成果が出せる」という仮説を自分なりに立てた上で、次の段階の上司とのすり合わせに挑むことで、評判残高を下げることなくすり合わせをすることが可能になります。

セーフティーネットは一日にしてならず

今回ご紹介させていただきました「○月病」からの脱出法は、今その「病」にかかっている人のためのものではありません。

異動に限らず、転職や結婚など新しい環境に身を置く可能性がある人にとって誰に対しても当てはまるものです。

複雑な社会環境の中において、自分が身を置いたコミュニティの中で、自分一人の力で何とか乗り越えようとすることそのものに限界があると言えます。

人間関係が希薄になっている現代だからこそ、「困ったときはお互い様」と言える関係をセーフティネットとしていかに構築できているかが、将来の自分の身を守るだけでなく、大切な人が大変な時期に助けてあげられることにつながります。

普段から目の前の人間関係を大切にすることが、何よりも「病」の予防となるはずです。

最後に、新しい環境へ行ったときに相談すべき3人と相談すべき順番を示して終わります。

第1段階 弱い自分をさらけ出せる人……孤独感を取り払い「思考基盤」を立ち上げる

第2段階 置かれた状況を分析できる人……論理的に問題の解決方法を導き出す

第3段階 自分を評価する上司……成果の基準と成果を出すための方法をすり合わせる

以上