【囲碁界2022年見どころ】井山裕太五冠、世界王者奪還なるか 仲邑菫二段は勝負の年
囲碁界は今年も1月5日「囲碁の日」に始動した。「打ち初め式」でタイトルホルダーらが挨拶し、今年の目標を「世界戦で活躍したい」としたのが、許家元十段、上野愛咲美女流棋聖らだ。
今年の囲碁界の注目すべき見どころを紹介しよう。
期待できる世界戦が目白押し
2022年の囲碁界はまず、世界戦に注目したい。
昨年10月に始まった農心辛ラーメン杯の最終第3ラウンドが2月21日~25日に打たれる。農心杯は3カ国(日本、中国、韓国)の勝ち抜き団体戦。
第2ラウンドで井山裕太五冠が怒濤の4連勝し、現在、日本が一番優勝に近い位置にいて、2位以上も確定している。優勝すれば16年ぶりの栄冠となり、長く後塵を拝している日本勢にとって、歓喜の瞬間を迎えることになる。
井山五冠は、七冠制覇していた(2016・2017年)ときより、パワーアップしており、ここまでの4連勝も世界ランカーを破っている。残り5戦、このまま井山五冠が最後まで勝ち抜くことも大いに期待できるし、あとにも国際戦で活躍している一力遼九段、余正麒八段が控えている。
悲願の優勝まで突っ走ってほしい。
さらに、9月中旬には、2022年アジア競技大会が中国で開催され、マインドスポーツとして囲碁が2010年以来3大会ぶりに正式競技となっている。「男子団体戦」「女子団体戦」「男子個人戦」の3種目が行われ、日本選手もどれかに派遣できることになっている。今月中には参加種目が発表される予定になっている。
普段はスーツ姿で対局する棋士がオリンピック選手と同じジャージを着用し、大会に臨む。ドーピング検査などオリンピック競技と同じルールで優勝を目指す。
井山裕太 七冠復帰へ足がかりの1年
一昨年から「令和三羽ガラス」(一力遼九段、芝野虎丸九段、許家元十段)が台頭し、世代交代がはじまるのかと思いきや、昨年、終わってみれば井山が三冠から五冠にとタイトルを増やし、一力九段と芝野九段は無冠に後退した。
AI研究は現代の棋士では必須であるが、井山五冠はAIの考え方を自分のものにしたうえで、個性も発揮している。AIの予測以上の手を発想しているのが強さといえよう。
また、昨年の挑戦手合は先にカド番に追い込まれるフルセットの戦いが続いたが、慌てることなくじりじりと逆に追い詰める姿が印象的だった。最近、メンタルトレーニングも取り入れている効果がはっきりと表れている。
井山五冠はまず、1月13日から棋聖戦の防衛戦が始まる。現在9連覇中で10連覇を目指す。また春の本因坊戦は前人未到の11連覇を狙う。5冠をすべて防衛すれば、3度目の7冠制覇も夢ではなくなる。3月開幕の「十段」はすでに敗退しているので、7冠復帰は一番早くて2023年の4月となる。
若手の躍進
昨年末、一力九段から「天元」を奪ったのが、ダークホースだった20歳、関航太郎天元だ。
関天元の渾名は「AIソムリエ」。相手の打つ手を見て、その人がどのAIを使って研究しているかの「テイスティング」ができるところから名付けられたという。そんなことできる棋士はきいたことがないのだ。従来にない研究方法で育った若手が台風の目になるか、注目される。
1月13日には棋聖戦が開幕する。挑戦者は一力九段。昨年、碁聖戦、名人戦と連続して井山五冠に負けて変調となったのか、さらに天元も関天元に奪われた。無冠を返上できるか、今年の囲碁界を占う大勝負となる。
女性棋士の活躍 仲邑菫二段勝負の年
2021年の勝ち星ランキング1位は上野愛咲美女流棋聖(54勝25敗)。2位許家元十段(45勝21敗)、3位仲邑菫二段(43勝18敗)。
上野女流棋聖、仲邑二段は若手棋戦、女流棋戦に出られるので、男性棋士や年配棋士より有利ではあるが、それを差し引いても立派な成績だ。
上野女流棋聖は若手棋戦の若鯉戦で、男性棋士をなぎ倒して優勝し、実力もトップ棋士と遜色ない。藤沢里菜女流四冠とともに、女性初のリーグ戦入りが期待される。
プロ入りの会見で「中学生までに女流タイトルを獲りたい」と語っていた仲邑菫二段も、今年中学2年生になる。目標を達成するには、今年、どこまで勝ち上がっていけるかが重要なポイントになる。女流タイトルを獲るには、藤沢女流四冠、上野女流棋聖のツートップを倒さなければならない。この2人と肉薄するまで実力が上がれば、世界戦でも戦える力が備わってきたともいえる。伸び盛りのローティーン、この時期の一瞬一瞬が大事だ。充実した1年を送ってもらいたい。
注目の対戦はインターネットで生中継、解説される。
解説棋士にチャットで直接質問して楽しむこともできるし、録画をあとから見ることもできる。家でも出先でも、スマホやPCで楽しんでいただきたい。
日本棋院囲碁チャンネル
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