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きょう8月6日は「囲碁界の一番熱い日」 名人挑戦へ井山裕太棋聖があと1勝

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
名人挑戦へあと1勝とした井山裕太棋聖=日本棋院本院、2020年7月27日筆者撮影

8月6日は「囲碁界で一番熱い日」。芝野虎丸名人への挑戦者を決める名人戦リーグ最終一斉対局が行われる。

もっとも挑戦権に近いのが、7戦全勝の井山裕太棋聖。1敗で追う一力遼八段との直接対決は終わっているので、井山棋聖が勝てば挑戦者決定。井山棋聖が負けて、一力八段が勝つと同星になり、8月10日に行われるプレーオフで挑戦者が決まる。

井山棋聖、一力八段とも絶好調だ。

井山棋聖は、2カ月間の中断期間がとてもよい休養期間になったようだ。

昨年、五冠から三冠にまで後退したが、自粛期間が終わり6月に再開されてすぐ始まった本因坊戦七番勝負では最強の挑戦者・芝野虎丸名人を4勝1敗のスコア以上に内容で圧倒し、九連覇を達成。七冠を独占していたころの強さが戻ってきた

ここ数年ずっとスケジュールが過密で、満足に研究する時間も持てなかった。

13歳でプロデビューして以来、こんなに長く休めたのは初めて。以前は「対局を打つことでリズムを作っている」ので、手合いが空くと調子を崩す傾向もあったが、今回はじっくり研究でき、AIに対しても自分なりにつかむものがあったという。

一力八段も好調の波に乗っていて、現在、挑戦中の碁聖戦五番勝負では8月3日に2勝目を挙げ、悲願のタイトル獲得まであと1勝としている。

私が直接観戦した名人戦リーグでも、自信を持っている雰囲気が感じられ、充実しているのが傍目からでもよくわかる

一力八段は今春早稲田大学を卒業し、本業の囲碁に費やす時間が増えたことも好調の一因だろう。

一方、リーグ落ち3つの枠は、まだだれも確定していない大混戦(残留が決まっているのが、井山棋聖、一力八段、許家元八段、河野臨九段の4人)。

危機にあるのが、前名人の張栩九段、羽根直樹九段と山下敬吾九段。「平成四天王」のうち3人がピンチなのだ。さらに前十段の村川大介九段、林漢傑八段も負ければリーグ陥落の崖っぷちにいる。

8月6日の対戦カードは以下の通り。

井山裕太棋聖-林漢傑八段 

一力遼八段-村川大介九段

張栩九段-羽根直樹九段

山下敬吾九段-許家元八段

持ち時間は各5時間。朝10時に開始され、当日中には終局し、結果がわかる見込みだ。

日本棋院ではYouTubeで中継し解説する予定があるので、是非ご覧いただきたい。

囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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