挑戦手合いでの覇者の交代はつきものです。

偶然にも私は何度もタイトル交代の観戦記を担当する幸運に恵まれ、その最終局をつぶさに観察する機会を得ました。

今回は、2004年に打たれた第29期名人戦七番勝負、依田紀基名人に張栩本因坊が挑戦したシリーズ。張栩本因坊が黒番1目半勝ちを収め、歴代5人目、史上最年少の24歳で名人本因坊となった第6局の、観戦記になどにはない裏の様子を思い返していきたいと思います。

第6局の対局場は静岡県伊東市の「わかつき別邸」。第25代内閣総理大臣若槻禮次郎の別荘を改築した旅館で、現在は営業していません。

わかつき別邸は部屋数が少なく、私は記録係の加藤啓子六段、巻幡多栄子四段と同じ部屋になりました。宿に到着して部屋に入ってしばらくすると、