栗田佳樹アマ、プロ九段らを次々なぎ倒す快進撃 アマチュアのレベルはなぜ上がったのか

棋聖戦Cリーグで勝利した栗田佳樹アマ=日本棋院、2020年4月2日、筆者撮影

囲碁界で今最も注目されているアマチュアが、栗田佳樹さん(21)だ。

アマチュアが参加できる棋戦で、プロとの対戦成績が9勝1敗とすごい数字をたたき出している。

アマチュアがなぜここまで強くなったのだろうか。背景を考察する。

アマ・ツートップ

アマチュア碁界では、栗田さんと会社員の大関稔アマ名人・本因坊(25)がツートップだ。

3月に打たれたプロアマ名人戦で、大関さんは、芝野虎丸名人に先番逆コミ6目半の手合いで、11目半勝ちを収めた。ときの名人に逆コミのハンディが要らないほど肉薄した形だ。

九段、元棋聖をなぎ倒して

栗田佳樹さんは東京理科大3年生。前アマ名人でもある。

早碁の阿含・桐山杯では予選A決勝で星合志保二段に敗れたものの、4勝1敗。高木祥一九段、新垣武九段、さらに元棋聖の小林覚九段に4連勝と九段だけではなく元タイトルホルダーに勝つとは、大変なことなのだ。

棋聖戦はアマチュアに門戸を広げていて、予選を通過したアマがプロ予選に参加できる。

栗田さんはアマ予選を勝ち抜き、プロのファースト・トーナメント予選に駒を進めた。元本因坊の趙善津九段らに勝つなど5連勝して予選を突破。Cリーグ入りも果たし、現在躍進中だ。このまま勝ち進めば、井山裕太棋聖に挑戦してタイトルを獲る道も開かれている。

優勝賞金は4500万円。もし、栗田さんがタイトルを獲ったら賞金はどうなるか。

これまでの慣例は、商品券での授与だったが、4500万円の商品券というのは現実的ではない。賞金や手合料はプロより少額での支払いになるようだ。

アマチュア躍進の背景

アマチュアがなぜここまで強くなったのだろうか。

まず、幼いときに碁と出合うチャンスが広がっていることが大きいだろう。

習い事としての囲碁教室や、学童保育などで子どものころから碁を始めることで、実力が伸びていく。

さらに情報化社会となり、これまでプロの中で研究されていたことでも、比較的簡単に手に入るようになった。

強いAIが登場したことによって、強い相手と簡単に対局する機会が増え、子ども達の実力も飛躍的に上がった。

大関さん、栗田さんはプロを目指し院生のトップAクラスまで力をつけたが、あと一歩のところで断念している。

プロになれる人数は毎年決まっていて、実力者が多数揃うと、運の悪い何人かはプロになれない。これは昔からある現象だったが、最近では院生のレベルが上がってきているのが大きく違う。

「新初段シリーズ」は新しくプロになった棋士が、トッププロに胸を貸してもらう週刊碁(日本棋院発行)紙上の人気企画。以前はハンディ2子が当たり前だったが、現在は互先(ハンディなし)になっている。さすがにトッププロのほうが勝率はいいのだが、実力が肉薄しているのは間違いない。

近年の枠組みでは、プロとして十分やっていける実力者がアマチュアプレイヤーになっているのだ。

現在、新型コロナウイルスで学校が休みなので、栗田さんは碁に専念できる状況だ。今のところプロになる気持はないというが。プロ入りの年齢制限(23歳未満)にはまだ達していない。

栗田さんの快進撃とともに進路にも目が離せない。

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「NHK囲碁講座」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。棋士の世界や囲碁の魅力を発信し続けている。著書に「井山裕太の碁 強くなる考え方」(池田書店)、「それも一局 弟子たちが語る『木谷道場』のおしえ」(水曜社)、「囲碁の人ってどんなヒト?」(マイナビ出版)。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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