目の不自由な少年が囲碁の棋士を目指す

プロを目指す盲学校5年生・岩崎晴都さん=2019年12月1日筆者撮影

小学校2年で碁を覚え、アマ四段にまで上達した盲学校5年生の岩崎晴都さんは、プロ棋士を目指している。目が不自由なハンディがあっても専用の碁石と碁盤があり、しっかり碁は打てるのだ。岩崎さんがプロ棋士に挑む記念指導対局の様子を取材した。

「アイゴ」で楽しむ

目が不自由な人が打てるような碁盤と碁石がある。

碁盤の縦横の線が塀のようになっていて、碁石に掘られている溝をかちっとはめ込んで着手していく。
碁盤の縦横の線が塀のようになっていて、碁石に掘られている溝をかちっとはめ込んで着手していく。
黒石の上部にだけ突起がついていて、黒石と白石の区別がつく
黒石の上部にだけ突起がついていて、黒石と白石の区別がつく
碁を楽しむ宇田尻浩司さん(67)。50年近く前に碁を覚えた。中途失明なので、打っていたときのイメージが残っているという。「150手くらいまで頭に入ります。頭の体操にとってもいい」
碁を楽しむ宇田尻浩司さん(67)。50年近く前に碁を覚えた。中途失明なので、打っていたときのイメージが残っているという。「150手くらいまで頭に入ります。頭の体操にとってもいい」

打つ人は石に触りながら石の配置を確かめて状況を理解するのだ。この専用の碁石、碁盤は「アイゴ」という。

公開対局でプロに挑戦する

アイゴを使って、岩崎晴都さんはプロ棋士の水間俊文七段に4子のハンディキャップで挑戦した。

これは「高次機能障がいと囲碁&心の唄コンサート」(主催:フォーラム大田高次脳 「高次脳機能障害と囲碁」実行委員会)の第1部として公開対局で打たれたものだ。

岩崎晴都さんプロフィール

埼玉県立特別支援学校塙保己一学園(県立盲学校)5年生。アマ四段(1年前は4級)。2019年全国台湾韓国盲学校囲碁大会で優勝。視覚障がい者として初のプロ棋士を目指している

水間七段に4子のハンディキャップで挑戦する岩崎晴都さん
水間七段に4子のハンディキャップで挑戦する岩崎晴都さん

母方の実家の一階がたまたま碁会所だった。母親が「目が不自由でもできそうな気がして」、小学2年の晴都さんを連れて行ってみると、自然にはまっていったのだという。

晴都さんは弱視で、明暗はわかる。しかし乗り出して碁盤に顔を近づける必要があるので、ふつうの碁石と碁盤でやると、石を崩してしまう。碁を覚えて1年くらいたってアイゴに出合ってから、急激に上達した。

近所にある指扇の囲碁サロンに最低でも週2回、行けるときは行って、6時間も碁に集中しているというから、すごいものだ。

プロ太鼓判の実力

この日、水間プロには惜しくも負けてしまった。

晴都さんは「最初勝てるような気がしていました。形勢がいいと思って堅く打って……」。「その分、少しずつ白に追いつかれました。素直で石の形がよく、大人でもなかなかこれだけしっかり打てません。立派な四段です」と水間プロは太鼓判を押した

「将来はできればプロになりたい」と晴都さん

多くの人たちのサポートで、一歩一歩前進している最中だ。「性格が大事です。素直でへんに勝ちにこだわらずに楽しんでいるところがいいですね」と水間プロ。

これからさらなる努力を積んで行くことになるだろうが、晴都さんの頑張りに期待しよう。

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「NHK囲碁講座」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。棋士の世界や囲碁の魅力を発信し続けている。著書に「井山裕太の碁 強くなる考え方」(池田書店)、「それも一局 弟子たちが語る『木谷道場』のおしえ」(水曜社)、「囲碁の人ってどんなヒト?」(マイナビ出版)。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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