生涯未婚時代と地方の若者たち

(写真:アフロ)

==・「結婚するかどうかは場合による」の内実とは何か

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 2017年の5月にアップロードされた経済産業省の若手官僚によるプロジェクトでは「昭和の人生すごろく」というモデルが示されました。人生は一本道のすごろくのようなもので、就職や結婚といった人生の「イベント」をこなさなければ先には進めない。そして、その「昭和の人生すごろく」をコンプリートできる人がとても少なくなっているといった説明が同報告書ではなされています。しかし実際これからこれらの「イベント」を進めようかという若者に話を聞いてみると「結婚をしたくない訳ではないが、絶対ではないし、するかどうかは時と場合による」といった考え方がよく聞かれます。

 「場合による」という姿勢は、東京ではない地域においてより顕著にみられるようです。広島県の南西部にある府中町と北部の三次市をフィールドに地方に暮らす若者を調査した轡田竜蔵さんによれば、「20年後、子育てを経験し、配偶者と暮らしていると思う」に賛成した30代未婚は府中町26.7%、三次市43.0%となりました(『地方暮らしの幸福と若者』勁草書房)。それにもかかわらず、東京や大阪に代表される都市部では「昭和の人生すごろく」モデルを前提としていかにそれを「勝ち抜くか」について論じられているのが現状です。

==・生活のリソースは地元のネットワークが提供する

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 「場合による」との主張の背景にあるのは、いうまでもなく地方における若者の経済的困難です。しかし経済的に自立が困難な若者であっても、地域の人間関係(自営業の親を介して形成されるネットワークや、同級生などによって形成される)をうまく生かして生活の資源を確保するケースがしばしばみられます。具体的には両親との同居を前提に結婚したり、将来的には親がやっている事業を「継ぐ」という前提で学生生活を送っている若者などです。

 こうした地元の資源を生かした生活は安定性をもたらしますが、負の側面もあります。

 まず押さえておきたいのは、生活の資源を提供するのがもっぱら親世代であるという点です。経済をおさえられているため、成人後の子どもであっても親の意見に従順になる必要が出てきます。親は自分の人生を基準に子どもの将来を考えるために時代の変化についていけず、結局子どもの人生が取り残されるというケースがよくあります。

 また、ごく親しい仲間や家族とだけ形成される地元の人間関係はノイズレスになってしまうという点も忘れてはならないでしょう。初めて生活をする他者が配偶者となってしまう若者は、生活上の些細な食い違いを重大なものとしてみなしてしまいがちです。周囲との人間関係が断たれてしまうと途端に生活が詰んでしまうのも、生活の資源を地域社会に依存することによって生じる負の側面です。不意の妊娠や配偶者の暴力などの事態に直面した時、セフティネットの不在が大きくのしかかってきます。

 地方で暮らす若者の実態について、本稿で少しずつ紹介していきたいと思います。