ドイツ女子代表が9年ぶりに世界大会でタイトルを獲得できた要因とは

(写真:ロイター/アフロ)

外国籍選手という「異物」と競争、共創して発展する女子ブンデスリーガ

リオ五輪が閉幕してから2ヶ月弱。サッカー競技女子において金メダルを獲得した女子ドイツ代表。日本が出場していなかったため日本での注目度はそれほど高くはなかったと思うが、過去5大会において4回金メダルを獲得していたアメリカが準々決勝で敗退し、そのアメリカを破ってスウェーデンが決勝に進出するなど、波乱の大会であった。

ドイツ代表は2011年、地元ドイツで開催されたW杯では準々決勝敗退、その結果ロンドン五輪の出場権は得られず。さらに昨年のW杯では準決勝、3位決定戦でも敗れ4位という結果に終わった。このように、ドイツ代表は常にFIFAランク上位にいながらも、2007年のW杯で優勝したのを最後にこの9年間、世界大会でのタイトルからは遠ざかっていた。

ドイツ代表選手の大半はドイツ国内のブンデスリーガでプレーしており、国外でプレーしている代表選手は現在、ジョセフィン・ヘニング(アーセナルレディース)、ジェニフアー・マロジャン、パウリーネ・ブレマー(オリンピックリヨン)の3選手。近年では代表選手以外が出場機会やプロ契約を求めてイングランドやフランス、スウェーデンのリーグに移籍していく傾向にある。

現在ブンデスリーガは外国人選手が増え、その比率は全体の約3割となっている。

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筆者がブンデスリーガに移籍してきた2010年頃、外国籍の選手は全体の1割程度だったが、ここ4、5年でその割合は大きく変動してきた。特にバイエルンミュンヘンやヴォルフスブルグといった資金面に恵まれているクラブは、外国籍の選手を積極的に補強している。そのほとんどがその国の代表選手としてレギュラークラスで活躍している。

特に驚いたのは、スイス人選手15人、オーストリア人選手11人がブンデスリーガでプレーしていることだ。

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スイス代表は昨年初めてW杯に出場し、ベスト16という成績を収めた。グループリーグで日本とも対戦したので覚えている人も多いと思うが、ラモーナ・バッハマン(ヴォルフスブルグ)をはじめタレント性のある選手や技術力の高い選手が多い。そしてオーストリア代表だが、彼女達はW杯の出場経験はないが、来年行われるヨーロッパ選手権の出場権を獲得するなど、近年ヨーロッパでも成長を遂げてきている国の一つだ。オランダ代表も近年急成長を遂げており、ヨーロッパ全体のレベルは近年右肩上がりの傾向にあると言える。

外国人の影響で、技術やプレー面も進化

外国籍選手がこれだけブンデスリーガでプレーするようになり様々な発想や価値観がもたらされ、全体的に選手の技術力や発想力も上がり、ボールをディフェンスラインから意図的に繋いでいくスタイルが当たり前になりつつある。以前までは単純にロングボールを放り込み、体格とスピード勝負で押し込んだり、1vs1を重視して個人技だけで突破をしていくスタイルだけに偏っていたが、守備面での進化もあり、2~3人がしっかりと連動して局面を突破したりと、日本が得意としているプレーの質が上がってきている。さらに、ドイツが元来攻撃のスタイルとしてきた「縦に速い」サッカーも顕在で、着実に進化を遂げてきているといえる。

女子ブンデスリーガのサッカーは、外国籍選手によって進化しているといっても過言ではない。現に、チームの半数が外国籍選手で形成されているチームもあるほどだ。単純に、ドイツ人選手の実力が彼女達より劣っているという見方もできるかもしれないが、そこは競争の世界でもある。さらに、外国籍選手ばかり獲得しているから国内の選手が育っていないという見方もできるだろう。ただ、ドイツの女子サッカー人口は25万人。育成システムもしっかりしており、2部リーグや17歳以下のリーグで出場機会を得ながら経験を積み、ドイツ国外へ移籍していくことでもさらに成長していく可能性を秘めている。

今回ドイツ代表チームがリオ五輪で9年ぶりに世界の舞台でタイトルを獲得した背景には、国内リーグであるブンデスリーガの進化が少なからず影響しているはずだ。外国籍選手とは、ある種の異物のようなもの。その「異物」と競争し、共創していくことでさらに発展していくだろう。今後女子ブンデスリーガとドイツ女子代表のサッカーがどのような発展を遂げていくのか、注目だ。