【第5章: 欧州編】イングランド選手の誕生月に「特異性あり」は見事に打ち消された!?

EUからの離脱に続きユーロ2016からも離脱のイングランドに復活の可能性は!?(写真:ロイター/アフロ)

これまでJリーガーでも確認された誕生月の偏り(【序章: Jリーグ編】やはり早生まれはスポーツ選手には向かないのか!?を参照)を、ユーロ2016で盛り上がる欧州の主要リーグ(各国トップリーグ)でも確認してみました。各リーグのデータは、スポナビの海外サッカーで2015-16シーズンのものを抽出。オランダは残念ながらユーロ本選には出場なりませんでしたが、イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスは、ベスト16入りを果たした言わずと知れた欧州の強豪国です。

各リーグの自国選手割合には大きな差が

まず各リーグの自国選手の割合について見ておきたい。先日、英国のEU離脱についての国民投票の結果が報道され、英国外選手の契約についての見直しがどう進むのか注目割れているが、現時点でも、EU圏選手の就労の自由、外国人枠の設定、自国枠+育成枠、市民権など、参照した各リーグでも試行錯誤のようである。また11人のスタメンのうち半数を超えない5人までなら自国以外の選手を認めるという案をFIFAが出していたりもする。ただワールドカップやユーロに出場するナショナルチームに直結する純粋な自国選手についてまずは限定してみたい。他国リーグでの出稼ぎ選手については【第5章: 欧州編(おまけ)】で触れることにしたい。

では、欧州の主要リーグとJリーグの自国選手割合を見てみよう。

図1: 欧州サッカー各リーグの自国選手割合
図1: 欧州サッカー各リーグの自国選手割合

まず身近なJ1リーグでは全18チームで65人の外国人選手(1チームあたり3.6人)が登録されている。つまり自国選手割合は88%となる。これは欧州と比較すると大きな値である。次に欧州に目を向けると、イングランドの自国割合の低さが際立っている。50%を下回っているのには驚きである。実はここにアイルランド、北アイルランド、ウェールズ、スコットランドといった英国選手77名を加えた英国人割合では、52.1%となることも付け加えておきたい。さらに余談だが、ここ数年の爆買いでアジアの中国スーパーリーグの外国人枠は最大7人(内1人はアジア枠)となっており、自国割合がどの程度かはきになるところである。各国のサッカー市場の大きさなどにもよるが、外国人=助っ人=レベルが高いとなれば、この自国選手割合がナショナルチームに与える影響はポジティブと言えるかもしれない。このあたりの議論は一旦、他に委ねたい。

欧州ではちょっと違うイングランドの様子

では、本題の誕生月について、欧州各リーグの自国選手に絞って見てみたい。

図2: 欧州主要リーグ自国選手の誕生月比較
図2: 欧州主要リーグ自国選手の誕生月比較

図2の上部グラフを見て分かる通り、育成年代のサッカーカレンダー通りに1月から3月生まれの割合が多いようだ。さらに図2の下部グラフには、1月から12月の四半期(3か月ごと)に集約してみた(注: 日本のみ4月スタートで並べている)。その結果、イングランドを除いて、各リーグで揃って綺麗な下り階段状が確認された。やはり欧州ではサッカーカレンダーに合わせた日本でいう早生まれ(1月・2月・3月)が有利なのかもしれない。育成に力を入れていると考えていたオランダやスペインも、早期育成の結果から相対的年齢効果を無意識に取り込んでいるのだろうか。そして、ここで違和感を抱くのは、イングランドの結果だろう。4月スタートに並び替えると、日本とは真逆の上り階段状にもとれる。そして、もう一度、上部グラフのイングランドの月ごとのデータに目を向けると、9月(12.8%)、10月(10.2%)と他国と異質な数値に目が向くだろう。

やはり欧州でも誕生月は下り階段

そこでイングランド(プレミアリーグ)の始まりを9月に再編して日本(J1リーグ)と比較してみた。

図3: プレミアリーグ自国選手の誕生月割合
図3: プレミアリーグ自国選手の誕生月割合

結果は見ての通り、9月をスタートした下り階段状となった。実はイングランドはFA(日本でいうサッカー協会)が基準を定め、各クラブがアカデミーを構え育成に注力している。そのアカデミーの基準に「選手登録は9月1日がスタート(イギリスの学校と同じ)とされる9歳から18歳の選手」とある。つまり、9歳の時点で9月生まれが優位になる条件でエリート育成がスタートしている。日本の育成世代と同じく、相対的年齢効果に従う形となっていた。

以上のように、欧州では、それこそ選手の素質を可能性も含めて適正に評価し、育成を経てトップリーグでは日本とは異なる状態と期待していたが、外れたようだ。欧州でも育成年代の早い段階で勝利至上主義に支配された、身体的に優位な選手がエリートして選抜されていくのだろうか。もしそうであれば、相対的年齢効果で早期に取りこぼされた可能性のある選手の発掘と、育成システムの再編には大きな可能性がありそうだ。例えば、ユーロ2016でイングランドを破ってベスト8入りしたアイスランドは競技人口が少数がゆえに取りこぼしのない効率良い育成が出来ているのかもしれない。であれば、敢えてアイスランド、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ウェールズに注目して見るのも面白いかもしれない。。。

(つづく)