【序章: Jリーグ編】やはり早生まれはスポーツ選手には向かないのか!?

スポーツを始めたこどもたちの将来は大人の都合で作った社会の中で育っていく(写真:アフロ)

知ってはいたが!? エリートスポーツと誕生月の関係

4月の終わり。新年度開始のバタバタも落ち着いた頃合い、晴れて小学生になった、進級したを機に、多くのこどもたちが新たにスポーツを始めるタイミングだろう。こどもたちは、ただただ楽しくてスポーツをやっているだけなのに、将来は日本代表選手だの、オリンピック選手だのと、我が子の秘めた才能に淡い期待をしながら、こども以上に夢を膨らませるのが親(大人)だろう。否定しているわけではないが、考えて欲しい問題が一つある。タイトルにも挙げた早生まれの問題である。生まれ月とエリートスポーツの関係は取り上げられることが多い。特に日本の場合、スポーツの現場では、学校教育法で定められた4月で1年ごとに学年としてカテゴライズすることが通例となっている。この学年という一見合理的な制度が、特に低年齢層から積み重なることで、将来的に「早生まれ(1月から3月生まれ)がエリートスポーツには不利になる」という大きな問題につながっている。スポーツの入り口で、いや、それ以前にこの世に生を受けたタイミングで、すでに将来の可能性が一部限定されてしまったら!? 大人の都合で作られた社会の仕組みでこどもたちの夢が夢で終わる可能性も大いにある。長々と前置きに費やしてしまったが、「誕生月とスポーツの関係性」について数回にわたり触れてみたい。まず本稿では、筆者が長く触れてきたサッカーのケースから、Jリーガーと誕生月の関係について現状を確認しておく。

事実1: Jリーガーでも4月生まれが多かった!!

まずJリーグ選手名鑑2016(Jリーグ公式HP掲載)を参照し、出身地が日本国内の選手(1531名)について誕生月を調査した。その結果、下の図1のように、4月生まれが多く、早生まれ(1月~3月)が少ない事実を改めて確認することができた。ちなみに、2月は28日(または29日)しかないため、そもそも月の出生数が若干少ないが、4月生まれが有利だからできるだけ4月に出産しようと計画的に産むタイミングをコントロールした結果を、総務省統計局の公表データからは読み取ることができない。

図 1: Jリーガーの誕生月別人数及び割合(1) 4月生まれが多く早生まれは少ない
図 1: Jリーガーの誕生月別人数及び割合(1) 4月生まれが多く早生まれは少ない

事実2: 4・5・6月生まれのJリーガーは1・2・3月生まれの2倍以上

もう少し誕生月をシンプルに比較するため、四半期(3か月ごと)にデータをまとめてみた。下の図2を見て欲しい。

図2: Jリーガーの誕生月別人数及び割合(2) 四半期で誕生月を集計した結果
図2: Jリーガーの誕生月別人数及び割合(2) 四半期で誕生月を集計した結果

見ての通り、これが自然の原理であれば、平均の338名(25%)ラインを保つはずだが、4・5・6月生まれのJリーガーが1・2・3月生まれの2倍以上の数となっていた。何か作為的にそうなったのか!?としか思えない数字だ。そして、4月を開始とする第1四半期から第4四半期まで綺麗な下り階段となっていることも見て分かるだろう。

事実3: 年代別にしてみると異様な状況が!!

せっかく年間には生年月日が記載されているので、年齢別に細かくデータを見てみた。すると、どうだろう、下の図3のように20歳以下の数値に異様な状況が確認された。

図3: 年代別Jリーガーの誕生月割合
図3: 年代別Jリーガーの誕生月割合

まずここまでくると驚きもしないが、どの年代も概ね早生まれの割合が低い事実が確認できる。一方でまず目に飛び込んでくるのが、20歳以下の4月生まれの割合だろう。実に21.3%。つまりは、20歳以下のJリーガーの約5人に1人が4月生まれという驚くべき事実だ。もうこれは何かしら特別な理由があるとしか思えない。実はサッカーに限らず、野球やバスケットボールなど、運動能力や体格が重視されるスポーツではこのような傾向が強く見られる。国際的な総合科学ジャーナルnatureでもBirth date and sporting successと題して論文が発表されていたりする。また国内でも、多くの専門家が問題視し、議論しているのも事実だ。ただその問題は未だ解決される気配がない。ある意味、育成年代で合理的とされた学年や年齢でカテゴライズするため、その境界で有利不利が生じるわけである。低年齢からエリート育成が、この奇妙な誕生月の偏りを正常なバランスに整えることを許さないのが現状だろう。

事実4: 歴代W杯代表選手では早生まれ選手も多い!!

次に面白いデータがある。ここまで早生まれの割合が低い事実を述べてきたが、実は過去のサッカーW杯出場選手の誕生月を調べてみると、面白い事実に気がつく。下の図4に先ほどのJリーガーとW杯日本代表選手の四半期で集計したデータを示した。

図4: 歴代W杯日本代表選手との誕生月比較
図4: 歴代W杯日本代表選手との誕生月比較

データは1998年のW杯フランス大会から前回2014年のW杯ブラジル大会の本大会に登録された選手のべ110人を集計したものだ。補足として、呂比須、三都主、闘莉王の3選手は除外した。のべ人数としたのは、各大会が独立しており、その大会ごとに選手が選抜されたと仮定したからである。実際に実人数で集計しても数値に大きな違いはないことも補足しておく。

さて、データを見てみると、これまで問題視されていたはずの早生まれが平均25%ラインを超えているという事実に気がつくだろう。つまり、日本代表レベルでは早生まれの選手は少ないわけではないという事実だ。代表的な早生まれの選手の実名を挙げると、中田英寿(1月)、遠藤保仁(1月)、明神智和(1月)、今野泰幸(1月)、長谷部誠(1月)、柿谷曜一朗(1月) 、宮本恒靖(2月)、松田直樹(3月)、内田篤人(3月)、川島永嗣(3月)、酒井高徳(3月)と、どの選手も育成年代の日本代表として活躍した経歴がある。実は、日本のクラブや部活動では、学校教育法に準じた4月を年代の開始としているが、国際大会では1月がその年代の開始となっている事実がある。つまり、国際基準では早生まれ(1月から3月生まれ)は決して不利な条件ではないという裏事情があったりもする。つまり、Jリーガーに4月生まれが多いように、国際大会に出場する選手は早生まれも多いのだ。ただ、ここで新たに問題視すべきは、10月・11月・12月生まれの選手の割合が低いという事実である。それは代表レベルでは顕著で、6.4%という実に驚くべき数字だ。実名を挙げると、山口蛍(10月)、森岡隆三(10月)、中村憲剛(10月)、清武弘嗣(11月)、名波浩(11月)、名良橋晃(11月)、戸田和幸(12月)の7人しかいない。日本を代表してW杯を戦った12月生まれの選手はたった1人という驚愕の事実だ。

事実5: 憂えるのは早生まれ以上に12月生まれかも!?

多少、話をまとまりづらくなってきたが、そろそろ無理矢理でもまとめに入りたい。ここまでのJリーグやW杯日本代表のデータから浮き彫りになった事実を鑑みると、実は、ドメスティックにインターナショナルな事情を含めると、問題は早生まれではなく、10月から12月生まれの選手の少なさも問題なのではないかと思い始めた。いずれにせよ、育成年代からの選抜システムが、選手として成熟する以前に行なわれていることから、身体能力に優位な条件が揃った選手が多くの機会を得られるという状況は容易に想像できる。言うまでもなく、スポーツ選手にとっては経験が何より重要である。その陰で、現行のシステムでは多くの可能性のある選手を見逃しているという事実も忘れてはならない。

今こそタレント発掘に革命を!!

なかなかまとめに入れず恐縮だが、本稿の最後に一つ読者にも投げかけたい。実は過去(2004年)に日本サッカー協会では、過去に早生まれセレクションを実施したことがあった。内田篤人(3月)はそのセレクションで注目されたという説もある。ただ、その後は、育成と言えども勝利至上主義的な流れに踏ん張りきれず、多くの選手は、早期の身体的な能力の優位性で評価されエリートとして扱われる傾向はまだまだ解消されていない。そう言った現状を、今こそ、打ち破る画期的なアイデア(解決策)が求められているはずだ!! となると、未来は明るいと感じられるだろうか。例えば、スペインの育成年代では、試合にクオーター制を導入し、全員を公平に出場させるルールも試行されているようだ。このあたりの意見は、現場に関わられている読者の皆さまのコメントを是非期待したい。

次回はサッカーに限定せず、他のスポーツ競技や分野にも目を向けながら、誕生月をキーワードに育成及びタレント発掘についても、もう少し視野を広げて探求しよと思う。

(つづく)