10月28日、フェイスブックが社名をメタバースからとった「Meta」(メタ)に変更してからというもの、流行語大賞を目指せるかのようにメタバースの文字がニュースに、SNSに飾られるようになりました。

ところでメタバースとはなんでしょうか。一般にはコミュニケーションが行えるバーチャルな3D空間を指すと言われています。これを広義として捉えると、セカンドライフもファイナルファンタジーXIも、あつまれどうぶつの森もメタバース。若年層を中心として流行している対戦ゲームのフォートナイトも雑談ができるモードを備えましたし、渋谷区公認のバーチャル渋谷を支えるclusterも、スマートフォンでバーチャルマーケット2021に参加できるVket cloudもメタバース。VRヘッドセットを装着しておしゃべりができるVRChatや、Meta社が開発しているHorizon(ホライゾン)もみんな仲良くメタバースです。

さて12月7日、仮想通貨交換事業者4社による「日本メタバース協会」が設立されました。公式サイト上に掲載されている「目的」を見ると、次のように記されています。

一般社団法人日本メタバース協会(以下”本協会”という)は、メタバース(インターネット上で広がる三次元の仮想空間)技術(以下、「本技術」という。)及び関連サービスの普及、本技術に関する健全なるビジネス環境及び利用者保護体制の整備を進めることで、我が国の産業を発展させることを目的としています。

具体的には、本協会が内外の情報を収集し、また情報を発信する起点となればと考えています。そしてメタバースに関係する企業や個人が会員となり、情報交換、場合によっては協力しあうことで、シナジーが生まれ、わが国が『メタバース先進国』となることに資することを目指しています。

一般社団法人日本メタバース協会サイトより引用

この日本メタバース協会設立のニュースが流れるや否や、TwitterやFacebookといったSNSでは様々な意見がポストされていきます。しかも筆者の観測圏内だとネガティブな意見が多い。その理由を探ってみました。

NFTの仮想通貨取引を前提で話を進めようとしている

日本メタバース協会設立へ 市場づくりに着手(日経新聞)

日経新聞の記事を読むと、日本メタバース協会はデジタルアイテムの所有権に関する法律が整備されていないことや、メタバース上にある土地の売買を行う際にNFTが使われることに関してロビー活動を行ったり、ルール整備に関わる活動をするのが主目的なのではと考えられます。

確かにメタバースの1つとして考えられるThe Sandbox(ザ・サンドボックス)やDecentraland(ディセントラランド)などのNFTゲームは、ゲーム内の土地というNFTをイーサリアムブロックチェーン上にある仮想通貨で取引しています。

イーサリウムの価格高騰を見れば、同様のサービスを立ち上げて一山当てたいと考える人や企業が出てきてもおかしくありません。

しかしメタバースに、必ずしもNFTや仮想通貨は必要ではありません。ゲーム内の土地データやアバター、アイテムは最終的に各ゲームのサーバーで中央集権的に管理されているものです。複数のゲーム間でデータをやり取りするためにNFTが必要となる時代を見据えているのかもしれませんが、それにしてはシステム・サービスの開発会社や企画会社が入っていない座組に疑問をいだきます。現実世界とメタバースをリンクさせて、新たな収益化を目指そうとしているバーチャルシティコンソーシアムのメンバーが入っているならまだしも。

既存のメタバース住民の感情を無視している

コミュニケーション重視のメタバースであるclusterやVRChatには、すでに多くの日本人が参加して友人たちと語らい、遊んでいます。彼らにとって重要なのは、いまここは自分たちにとって居心地のいいメタバースであるかどうかということ。メタバースの神=各サービスの運営会社が決めたルールは天からの啓示として受け止め、その他のルールはユーザー間でつむぎだされていったところがあります。

そこにやってきたのが日本メタバース協会です。なんだなんだ、よくわからない外国の船がやってきたぞ。しかも勝手に土地を売買するとか言ってるぞ。もしかして勝手にルールを作って、それを押し付けようとしているんじゃないだろうな。

アバターの姿をまとうことで年齢も、性別も、人種も、生まれた国も関係なく、ジェンダーレスで誰もが平等に自由に過ごせる空間こそがメタバース。この感覚はclusterやVRChatといったメタバースで時間を過ごしたことがある人ならば、だいたい得られるものです。

しかし日本メタバース協会の記事からうかがえる行動理念には、それがない。協会の人々もThe SandboxやDecentralandなどはプレイしたことがあるのでしょうけど、メタバースという大きな枠の中には様々なユニバースがあることを無視して、「俺がメタバースだ」といわんばかりに一辺倒なルール制定をしようとしているように見えることから、既存のメタバースユーザーは敵対視してしまうのでしょう。

「乗るしかない、このビッグウェーブに!」と考えて、ビジネスチャンスに備える姿勢は大事です。しかし誰もがネットで情報を得てSNSで意見を発せるこの時代に、多様なメタバースの調査や既存ユーザーの存在を考慮していなかった行動は短絡的だったと言わざるをえません。