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猫用活動量計で外出中も留守番猫の様子をモニタリング

武者良太ガジェットライター
RABOより画像提供

歩いた歩数、ジムトレーニングの時間、そして睡眠の状態を常にチェックしてくれるFitbitやMisfitなどの活動量計は、多忙な生活であっても健康を維持したいビジネスマンに必須といえるアイテムとなってきた。

どのような仕組みで人体の動きの種類を検出しているのか。実は活動量計には加速度センサーが組み込まれており、装着している人の動きを記録し、そのパターンから歩いている・走っている・寝ているなどの動きの状態を検出するようになっている。GPSや心拍センサーを内蔵し、移動距離や消費カロリーも可視化できるモデルも存在する。

もっとも身近なウェアラブルガジェットといえる活動量計。今後はどのような進化を遂げるのだろうかと考えていたら、筆者自身はまったく想像もしていなかった分野に波及していることがわかった。それがペット用活動量計だ。

多くのデータを集め、深層学習により特定の運動の振動パターンを見極められれば検知できる項目は増える。それが人間以外の動物にも当てはまるとは。

猫専用活動量計を開発しているRABO

RABO CEOの伊豫愉芸子さん。筆者撮影
RABO CEOの伊豫愉芸子さん。筆者撮影

現在クラウドファンディングMakuakeで、猫専用首輪型活動量計「Catlog」のプロジェクトを展開しているRABOのCEO、伊豫愉芸子さんの話によると、すでにペット用活動量計は存在している。機能としては人間用腕時計型活動量計とほぼ同じで、運動量や睡眠量を測るものだ。

しかし大型犬にマッチするサイズのものが多く、猫用として使うには適さない。また飼い主が、猫の行動をチェックしたいタイミングはリアルタイム。いま、自宅にいる猫がなにをしているのかを把握できるシステムが好ましい。

そこで「Catlog」は、猫の行動と、ベースステーションが計測した室温を常にクラウドにアップロードして、飼い主はどこにいてもスマートフォンの専用アプリで猫の状態を確認できるようにする。また猫の行動タイムラインも見られるシステムになる。

もともと伊豫さんは東京海洋大学で、ペンギンやオオミズナギドリの行動生態を調査するバイオロギング研究に従事していた。新卒入社したリクルートではインターネットサービスの企画やプロダクト設計、新規事業開発に従事し、退社後は複数のスタートアップ企業でプロダクトマネージャーを務め上げた。

猫との生活も20年以上。いままでの経験をすべて生かし、猫の生活をテクノロジーで見守れるようにと「Catlog」の開発に着手した自称「猫バカ」さんだ。

「共働きなので、猫は家でお留守番の毎日なんです。ペット用の見守りカメラなども設置しているんですけど、仕事中にずっと見るわけにもいきませんし。ほぼ寝ているとはわかっているんですけど、やっぱり気になってしまうんですよね。なにか解決する手段はないのかなと考えた時に、『わたし、バイオロギングの研究をやってたじゃないか』と思ったんです」(伊豫さん)

動物にかかわる仕事がしたいなと考えていた伊豫さん。自身のバックグラウンドも含め、「このプロダクトは私しか作れないんじゃないか」と感じて、猫のストレスにならないような薄型・小型の首輪型活動量計のアイディアに行き着いた。

RABOより画像提供
RABOより画像提供

猫が首を動かしてもヒゲに当たらない、首に優しくフィットするようにスエードやベロア生地を用いる、猫の可聴周波数内ではノイズレス、力が加わるとベルトが自動的に外れるセーフティ・アジャスターなど、猫との生活が長いからこそのアイディアがつまっている。

活動中は短いスパンでセンシングを繰り返し、寝ていることがわかると長いスパンでセンシングを行い、バッテリー消費を抑えるなどの工夫がされている。

データが集まってくれば複雑な行動もロギングできるように

猫の行動パターンはだいたい17パターンに収まるという。「Catlog」の初期状態は遊んでいる・寝ているといった行動が検出できる活動量計としてリリースするが、多くの猫の行動データを集めて精度を高めていけば、食事をしている・水を飲んでいる・嘔吐している(異常行動)といった状態も把握できるようになる。

「多頭飼いの環境でしたら、ケンカをしているときも検出したいですよね。複数の猫の動きが絡まり合ってるとか、普通の行動とは違った動きであることを見極められるようになると分かるようになるかもしれません」(伊豫さん)

取得したデータは家族だけではなく獣医師にもシェアするシステムを考えている。動物病院にいくのを嫌がる猫であっても、活動量の低下や異常行動のデータから通院を促すことができるし、獣医師のオンライン相談サービスや遠隔治療の可能性も広がる。

記事執筆時、プロジェクト終了まで3ヶ月以上を残しながら支援者は259人・目標額の951%を達成。多くの猫の飼い主たちが、「Catlog」に期待をしていることがわかる。

なお、日本国内のペット市場は1.5兆円以上。「Catlog」を筆頭とする、ペットの生活を守るデジタルデバイスが普及したら、より多くの伸びを見せるかもしれない。あらたなビジネスの市場となるかどうか、注目していきたい。

ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

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