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村田兆治さんが10年前に韓国のレジェンドたちを本気にさせた渾身の125キロ

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
韓日プロ野球レジェンドマッチでの村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)

日本球界のレジェンド、元ロッテオリオンズの投手、村田兆治さんが11日に亡くなった。72歳だった。村田さんの凄さは現役当時を知る日本のファンなら感じていることだが、10年前には韓国の野球人、ファンたちを驚かせる出来事があった。

村田さんは2012年の7月、韓国・ソウルのチャムシル球場で行われた、日韓OBのオールスター戦、韓日プロ野球レジェンドマッチに参加した。そうそうたる顔ぶれが揃ったこの試合、一番の注目されたのは現地メディアに「怪物老人」として紹介された当時62歳の村田兆治さんだった。試合では村田さんの球速に期待が高まった。

記念撮影する日韓のレジェンドたち(写真:ストライク・ゾーン)
記念撮影する日韓のレジェンドたち(写真:ストライク・ゾーン)

試合前の国歌斉唱(写真:ストライク・ゾーン)
試合前の国歌斉唱(写真:ストライク・ゾーン)

登板前に入念な準備をしていた村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)
登板前に入念な準備をしていた村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)

村田さんは先発の佐々木主浩さん、津野浩さん、槙原寛己さんに続き、5回裏に4番手として登板。観客は村田さんの60代とは思えない「マサカリ投法」にくぎ付けとなり、投じるごとにスコアボードに表示される球速表示へと目をやった。

最初の打者、リュ・ジヒョンさんへの2球目に125キロ※を記録。スタンドから歓声が上がり、リュ・ジヒョンさんは空振り三振に倒れた。

※手元のスコアシートでは128キロでしたが電光掲示板の表示は125キロであることを、本記事掲載後に確認しましたので修正いたします。

すると62歳の本気モードに韓国のレジェンドたちにスイッチが入った。イ・ジョンボムさん、チョン・ジュンウさん、ヤン・ジュンヒョクさん、イ・マンスさん、キム・ギテさん、キム・ソンハンさん、ハン・デファさんのオールスターメンバーが真剣勝負を挑んだ。

その熱のこもった対決に日本チーム最年少の捕手、藤本博史さんは必死に村田さんのフォークを止めた。

マウンドでの村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)
マウンドでの村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)

村田さんは打者8人に対し、野手の間に落ちるアンラッキーなヒットを含む被安打3、四球2、失点2でマウンドを降りた。悔しそうな表情を見せる村田さん。しかしファンから大きな拍手が送られた。

マウンドに駆け寄った石毛宏典さんはプロ初打席の相手が村田さんだった(写真:ストライク・ゾーン)
マウンドに駆け寄った石毛宏典さんはプロ初打席の相手が村田さんだった(写真:ストライク・ゾーン)

打者を打ち取り喜ぶ村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)
打者を打ち取り喜ぶ村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)

ここで村田さんはお役御免。かと思いきや、村田さんは5回終了後に行われたスピードガンコンテストにも登場した。記録は124キロ。1位の村上隆行さんとは10キロ差、イ・ジョンボムさんに次ぐ3位という結果だった。この時も村田さんは納得がいかない様子だったが、スタンドからは温かい拍手が響いた。

あの日、村田さんが見せた意地の投球、本気の姿。それを現地で見つめた人たちが忘れることはないだろう。

スタンドにボールを投げ込む村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)
スタンドにボールを投げ込む村田兆治さん(写真:ストライク・ゾーン)

韓日プロ野球レジェンドマッチ2012 日本チームメンバー

日本OB監督:藤田平

遊→二 石毛宏典

二→中 笘篠賢治

一   駒田徳広

指   清原和博

中→遊 村上隆行

三   初芝清

左   高橋智

捕   伊東勤→ 捕 藤本博史

右   小牧雄一

投手:佐々木主浩(1回)、津野浩(2回)、槙原寛己(1回)、村田兆治(1回)、金村暁(1回)、西崎幸広(1回)、落合英二(1回)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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