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韓国代表、敗戦の翌日に大雨の成田空港から出国 選手らが語った本音【東京五輪・野球】

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
ドミニカ共和国戦に敗れた韓国ナイン(写真:ロイター/アフロ)

東京オリンピック(五輪)に参加した野球韓国代表は、7日のドミニカ共和国との3位決定戦に6-10で敗れメダルなしの4位で大会を終了。翌8日午後、強い雨が降り続く成田空港から出国した。大会終了翌日の帰国というタイトなスケジュールにチームスタッフは「すぐに公式戦が始まりますから」と話した。韓国KBOリーグは10日(火)から公式戦が再開する。

長引く感染症拡大により多くの航空便の運休が続き、閑散とした成田空港の出発ロビー。韓国選手団のトレーニングウェアに身を包んだ一行の表情は、試合に敗れたことを知っていれば暗く見え、7試合を戦った疲れがあるようにも見える。ただ一般客と同様、搭乗手続きを待つため無表情といえばそうだ。結果が結果だけにひとりひとりに心情を訊ねることはできないが、にこやかな選手はいなかった。

成田空港出発ロビーでの野球韓国代表の一行(写真:ストライク・ゾーン)
成田空港出発ロビーでの野球韓国代表の一行(写真:ストライク・ゾーン)

30代の内野手は「兵役義務がある選手に(免除条件の)メダルを獲らせてあげられなかったのが残念」といい、「僕らもメダルがもらえると一生年金がもらえるけど、それがなくなったのは大きいですね」と本音を語ってくれた。

制約が多い中行われたオリンピックで、選手を支えるスタッフたちは奔走していた。選手ら関係者が横浜のホテルを拠点とした日本とは異なり、韓国の全24選手と監督、一部のコーチは選手村に滞在。

ある選手は「選手村で食事はもちろん、困ったことはなかった」と話したが、打撃、守備、バッテリーの3コーチと選手の体調を管理するトレーナー、チームスタッフは選手村には入れず、離れて過ごさなければならなかった。コーチとスタッフは東京・墨田区のホテルから日々、横浜スタジアムへと通った。

そのコーチらが19時開始の試合を終えてホテルに帰ると日付は変わっていた。食事は自分たちで手配しなければならず、空いている店も限られる時間帯だ。「マクドナルドかサブウェイを頼んでおいてもらうか、カップラーメンかインスタント食品ばかり食べていました」とコーチは話す。それでも「選手を支える気持ちがあれば苦ではなかった」という。

また発給された関係者パスの枚数にも制限があり、韓国のスコアラーは球場に入れなかった。「ホテルのテレビで試合を見て、分析していましたよ」と話す。結果が伴えばそれも笑い話となるが、そうはならず悔しそうな表情を見せた。

最近の日本も似てきているが、韓国では結果が良くないと国民やメディアがピークに達するまで叩くという傾向がある。それを既にインターネットを通して見聞きしている監督、選手らは帰国後にそれを黙って受け止め、再び始まるシーズンに集中していく。

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東京五輪日程・概要と韓国代表一覧(ストライク・ゾーン)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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