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阪神入りのロハス 韓国で対戦を重ねた日本人コーチが認める対応力と長打力。課題は「甲子園」

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
阪神入りが決まったメル・ロハス・ジュニア外野手(写真:kt wiz)

今年の韓国KBOリーグで本塁打と打点の両部門で1位となり、3年続けて打率3割100打点超えの好成績を残した両打ち打者の阪神入りが25日発表になった。KTウィズのメル・ロハス・ジュニア外野手(30)だ。

2017年6月、KTに途中入団したロハスは4シーズンの間、主にチームのクリーンアップを任され、今季は全144試合中、142試合に出場し打率3割4分9厘(リーグ3位)、47本塁打(1位)、135打点(1位)をマーク。得点もリーグトップの116を記録した。

⇒ 2020年韓国プロ野球個人成績(ストライク・ゾーン)

チームの公式戦2位、初のポストシーズン進出に貢献したロハスはリーグのMVPにも輝いていた。韓国での通算成績は打率3割2分1厘、132本塁打、409打点だ。

韓国で安定した活躍を見せたロハスは、阪神でも期待に応えることができるか。今季までLGツインズのバッテリーコーチを務め、対戦相手の主力打者だったロハスと対峙した芹澤裕二コーチ(元中日、楽天、ヤクルトコーチ。来季からSKワイバーンズコーチ)に訊いた。

芹澤裕二バッテリーコーチ(来季からSK。写真はLG在籍時)
芹澤裕二バッテリーコーチ(来季からSK。写真はLG在籍時)

芹澤コーチには23日に阪神入りが発表になったラウル・アルカンタラ(前トゥサン)についても訊いている。

(関連記事:阪神入りのアルカンタラ 制球力を日本人コーチが絶賛。古巣の担当者が語る成功のカギは「対話」

日本でも期待される対応力と長打力

芹澤コーチが所属したLGは今季、ロハスに痛い目にあった。ロハスの対LG戦の打率は4割4分3厘で他の9球団を大きく上回り、ホームランもLGから最も多い9本を放っている。芹澤コーチはこう振り返る。

「去年(2019年)までのロハスは左打席の時に、ひざ元のスライダーを意識させて真っ直ぐで抑えていきましたが、今年はそのスライダーでホームランを打てるようになっていました。相手の攻めを読んでスライダーに狙いを絞ったのだと思います」

ロハスは相手チームが厳しく警戒する中、対応力を見せて好結果へとつなげていった。

一時はシーズン50本ペースでホームランを量産したロハス。日本でもその力は発揮されるだろうか。

「左打席では長打は出ると思います。でも甲子園は浜風(ライトからレフトに吹く、左打者に不利と言われる風)があるので、ロハスがどうなるかというのはその点だけですね」(芹澤コーチ)

ロハスが所属したKTの本拠地・スウォンKTウィズパークは中堅120m、両翼98m。韓国の球場の中で広い方ではなく、ロハスは今季、47本塁打中26本をスウォンで放っている。

それを踏まえて芹澤コーチは「今年ほどは打たないでしょうが、30本近くは打つのではないでしょうか」とロハスの実力を認めている。

一方でロハスは三振の数も多く、今年は132個(6位)だった。その点について芹澤コーチは「(長打力のある選手なので)しょうがないところでしょう」と話した。

両打ちのロハスは右打席でも好成績を残している(写真:kt wiz)
両打ちのロハスは右打席でも好成績を残している(写真:kt wiz)

足と守備も魅力。問題は阪神特有の…

ロハスの魅力は長打力だけではない。

「今年は走ってこなかったですが(盗塁企図数1回)、足も速いです」(芹澤コーチ)

ロハスは2番打者に座ることも多かった2018年に18盗塁を記録。成功率は58.1%と高くなかったが、単独スチールが減ったこの2年でも走者、打者走者として積極的な走りを見せている。

積極的な走塁も魅力のロハス(写真:kt wiz)
積極的な走塁も魅力のロハス(写真:kt wiz)

さらに芹澤コーチは「外野の守備もうまいと思いますよ。試合の終盤に(打者によって)打球がよく飛ぶレフトに、ライトから守備位置が代わることもありますからね」と話した。

長打力と今季2位の192安打を残した出塁能力、そして足と守備力も備えたロハス。KBOリーグから阪神に活動の場を移すにロハスについて芹澤コーチは「問題は浜風だけだと思います。左バッターにとって浜風はキツいですから」と繰り返し口にし、プレーヤーとして持つ能力については太鼓判を押した。

(関連記事:やっぱりロハスだ延長11回に37号決勝2ラン 3年連続の100打点に到達

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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