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楽天が台湾・ラミゴ球団を買収 日韓ではロッテが両リーグで球団所有の事例あり

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
千葉ロッテと同デザインを採用の韓国ロッテのマスコット(写真:ストライク・ゾーン)

今から7年前、鹿児島市で行われた韓国・ロッテジャイアンツの春季キャンプ。そのキャンプにインストラクターとして千葉ロッテマリーンズから派遣された、元投手の園川一美さんは誇らしげにこう話した。

「世界でプロ野球のチームを2つ持っている企業(グループ)はロッテだけです」

14年間の現役生活、そして引退後もコーチ、球団職員としてロッテ一筋だった園川さんのロッテ愛を感じたそのひと言。しかしその言葉は過去のものとなった。19日、楽天が台湾プロ野球・ラミゴモンキーズの買収を発表したからだ。

野球協約では同一の企業が日本国内の複数球団を所有することは出来ないが、海外の球団に関して規制はない。

日韓で長きにわたり球団を所有するロッテ

ロッテは1969年に球団との業務提携(命名権)という形で「ロッテオリオンズ」として日本球界に参加。71年からは親会社として球団を所有した。

ロッテは韓国では流通、建設など幅広い事業を手がける財閥企業で、82年に1リーグ6球団制でスタートした韓国プロ野球(KBOリーグ)に参入。韓国でも球団のオーナー企業となった。

韓国第2の都市・プサン(釜山)を縁故地(日本における本拠地、保護地域)として誕生したロッテジャイアンツ。韓国プロ野球は現在、1リーグ10球団で運営されているが、ロッテとサムスンライオンズだけがリーグ発足当時からチーム名と本拠地を変えていない。ロッテは韓国の中で古株の球団だ。

マスコットとユニフォームから感じる間柄

日本の野球ファンにロッテジャイアンツについて知っていることについて聞くと、「マリーンズとマスコットが同じ」という声がよく上がる。

2004年から採用されているマスコットのヌリとアラ(写真:ロッテジャイアンツ)
2004年から採用されているマスコットのヌリとアラ(写真:ロッテジャイアンツ)

またかつてはユニフォームも日本のロッテと似たデザインを採用していた時期もあった。

今月初め、侍ジャパン稲葉篤紀監督の韓国視察に帯同していた日本のスポーツ紙記者は、ロッテファンのユニフォーム姿に目を奪われていた。それは日本では川崎球場時代のロッテを思わせる、肩から脇にかけて赤いラインが入ったユニフォーム。

韓国のロッテファンの間では球団発足時から長らく採用されたオールドユニフォームというだけではなく、過去の2度の優勝時(84、92年)のユニフォームであることから、「チャンピオンユニフォーム」として親しまれている。

「チャンピオンユニフォーム」を着たイ・デホ(左)とパク・セウン(写真:ロッテジャイアンツ)
「チャンピオンユニフォーム」を着たイ・デホ(左)とパク・セウン(写真:ロッテジャイアンツ)

両球団での人の交流は?

かつて千葉ロッテと韓国のロッテは定期的な選手の交流を行い、韓国側の有望な若手選手が千葉ロッテのキャンプに参加した時期もあった。

日韓ロッテの選手間の交流は以前に比べると減っているが、今年はシーズン中にプロ3年目のユン・ソンビン投手が技術の向上と体力強化を目的に、千葉ロッテの2軍施設・ロッテ浦和球場で研修を行った。また韓国から日本への球団職員の派遣研修は近年も行われている。

ロッテ浦和で研修を行ったユン・ソンビン(左)。右は投球中の島孝明(写真:ストライク・ゾーン)
ロッテ浦和で研修を行ったユン・ソンビン(左)。右は投球中の島孝明(写真:ストライク・ゾーン)

(関連記事:ロッテ浦和で研修中の韓国長身右腕に日本人にはない「伸びしろ」

ちなみにKBOリーグから千葉ロッテへと海外FA移籍したイ・スンヨプ(04~05年在籍)とキム・テギュン(10~11年在籍)は韓国ロッテに所属したことはない。また韓国ロッテのイ・デホは日本ではオリックスと福岡ソフトバンクでプレーしたため、両球団間でのFA移籍は実現していない。

台湾での事業の展開と球界発展への貢献を目指す楽天

楽天とラミゴは19日に台北市で会見を行い、リーグを運営する中華職業棒球大聯盟(CPBL)はその模様をインターネット配信した。

楽天の担当者はその席で、「ラミゴモンキーズ運営会社の全株式取得を通じた台湾プロ野球参入の機会をいただいた」とし、「この参入を通してより一層、我々の展開しているサービスを知っていただき台湾に根差した事業を展開していきたい」と話した。

日韓のロッテのケースとは異なり、買収によって海外のプロ野球球団を所有することになった楽天。

チーム運営については、「ラミゴがこれまで培ってきたものを尊重しつつ、東北楽天イーグルスで得た経験を生かして台湾プロ野球のさらなる発展に貢献し、ファンのみなさんに楽しんでいただけるよう邁進していきたい」とした。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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