侍ジャパン・稲葉監督とコーチ陣 韓国視察で再びつながった数々の縁

韓国視察中の侍ジャパン首脳陣(写真:スポーツ朝鮮)

野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督(47)と井端弘和コーチ(44)、建山義紀コーチ(43)ら一行は9日、今年11月のプレミア12に備えた8日間の韓国KBOリーグ視察を終え帰国した。

(関連記事:<視察日程を掲載>KTクエバス13勝目 オクスプリング(元阪神)が持つ球団最多記録を抜く

全10球団を見ることを目的に、5球場6試合(うち2試合は雨天中止)を訪問するスケジュールを組んだ稲葉監督一行。その間には球友たちとの再会もあった。

23年ぶり、ハワイでの球友との再会

稲葉監督は訪韓5日目の6日、LGツインズ対ロッテジャイアンツ戦(チャムシル)終了後に23年ぶりの再会を果たすため、三塁側の監督室を訪ねた。

1996年冬、プロ2年目のシーズンを終えた当時24歳の稲葉監督はヤクルトからハワイ・ウィンターリーグに派遣された。日、米、韓の若手プロ選手が各チームに振り分けられる中、稲葉監督が所属したウエストオアフ・ケインファイヤーズでチームメイトだったのが5つ年上の内野手、コン・ピルソン現ロッテ監督代行だった。

「アツノリ!」

稲葉監督と顔を合わせたコン・ピルソン監督代行は、そう叫びながら大きな瞳をさらに見開き、稲葉監督と熱い抱擁を交わした。

「中継を見て韓国に視察に来ていることは知っていたけど、どうやったら会えるかと思っていたんだよ」

元々、早口のコン監督代行はさらに口調を早めて、興奮気味に稲葉監督に語り出した。

当時、ケインファイヤーズに派遣された日本人選手は稲葉監督1人。片言の日本語を話せたコン監督代行は稲葉監督をよく食事に誘うなど気遣ったという。

ケインファイヤーズには韓国人3選手、コーチ1人が所属し、稲葉監督と日々の生活を共にした。そのコーチが今年7月までロッテを率いるも、成績不振によりコン監督代行にバトンを託したヤン・サンムン前監督(58)だった。

「ヤンさんにもお世話になったんです」

そう話した稲葉監督。若き日に出会った彼らは、時を経てそれぞれ指揮官の重責を担う立場になった。

コン・ピルソン監督代行(写真:ロッテジャイアンツ)
コン・ピルソン監督代行(写真:ロッテジャイアンツ)

脳裏に焼き付く最強打者の記憶

「学年は一つ上なんですけど、同い年みたいな感じで仲良くしていました」

井端弘和コーチがそう話したのは2007年から3年間、中日でプレーしたイ・ビョンギュ現LGコーチ(44)だ。

井端コーチは6日にイ・ビョンギュコーチと再会。またその前日にはサムスンライオンズの落合英二コーチ(元中日)と語らいの時を過ごした。

井端コーチは韓国の各球場に足を運ぶ中、現役時代に目にし衝撃を受けた、あるスラッガーの姿を思い出した。

「あの選手が韓国最強のバッターじゃないですか?今は何をしてますか?」

その打者とはLGとSKワイバーンズで活躍した左打者キム・ジェヒョン氏(43)だ。

「沖縄キャンプの練習試合で見て、いいバッターだと思いました。バットを短く持ってスイングが早い。体は大きくない(身長177cm)のにパワーもある。左右に打ち分けられて、バットにボールが当たった瞬間の“タッ”って音が他の選手とは違いました」

キム・ジェヒョン氏は20代後半に大腿骨頭壊死症という診断を受け手術。以後、膝と腰の故障を抱えながら指名打者として、勝負強い打撃を発揮した。35歳で引退するまでに201本塁打、939打点を記録。生涯打率は2割9分4厘をマークした。

2009年当時のキム・ジェヒョン氏(写真:ストライク・ゾーン)
2009年当時のキム・ジェヒョン氏(写真:ストライク・ゾーン)

「(自身と)左右の違いはありますけど、バッティングのお手本になる選手でした。日本に来てもやれたと思います」と井端コーチは話した。

キム・ジェヒョン氏は引退後、巨人でのコーチ研修、ハンファイーグルスのコーチを経て現在は野球解説者を務めているが、韓国代表チームの打撃コーチでもある。同い年の2人は共に代表チームのコーチとして、再び勝負の場で顔を合わせることになるだろう。

旧友は韓国ナンバーワン助っ投に

「もし、先発(投手)じゃなかったら会いたいです」

7日のLG対トゥサンベアーズ戦を前に建山コーチが再会を願ったのは、かつてマイナーリーグでチームメイトだった、ジョシュ・リンドブロム投手(トゥサン、32)だ。

2人は2013年のシーズン、レンジャーズの3A、ラウンドロック・エクスプレスで共に開幕を迎えた。リンドブロム投手は建山コーチによく話しかけ、遠征ではしばしば食事に行く間柄だったという。

建山コーチは「本当にナイスガイ。フォーシーム(ファストボール)と大きなカーブが印象的だった」と当時を振り返った。

韓国5年目のリンドブロム投手は昨季、防御率トップでチームの公式戦1位に貢献。今季は20勝1敗、防御率2.12、166三振を記録し、勝利数、防御率、奪三振の3部門で1位に君臨している。

ジョシュ・リンドブロム(写真:トゥサンベアーズ)
ジョシュ・リンドブロム(写真:トゥサンベアーズ)

トゥサン戦視察当日、リンドブロム投手は先発登板日ではなかったが、その日は朝から台風の影響で強い風が吹き、試合開始3時間前に中止が決定。建山コーチとリンドブロム投手との再会はならなかった。

しかし建山コーチは韓国滞在中に自身のiPadでKBOリーグの中継が見られるようになった。これからは元同僚の雄姿をリアルタイムで目にすることが出来る。

いつの日も結ばれる野球人の縁

稲葉監督一行のKBOリーグ視察と時を同じくして、プサンのキジャン郡では侍ジャパンU-18代表がベースボールワールドカップに参加していた。

その大会初日、日韓の代表選手がお互いにお土産を交換している姿があった。韓国選手に「知り合いなのか?」と聞くとこう返してきた。

「彼とはインスタ(グラム)でつながっているんです」

その一週間後、日本と韓国はスーパーラウンドで相まみえた。

彼らもまた、今回韓国を訪れた侍首脳陣のように将来、それぞれの道に進み、成長した姿で再び顔を合わせることだろう。

野球が結ぶ縁(えにし)は深くて強い。

※初報後に写真を追加。