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京都国際、決勝戦サヨナラ負けで初の甲子園ならず 元カープの韓国のOBも後輩の健闘をたたえる

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
京都国際高OBで元広島のシン・ソンヒョン(写真:トゥサンベアーズ)

第101回全国高校野球選手権京都大会は28日、わかさスタジアム京都で決勝戦が行われ、立命館宇治が京都国際に3-2で9回裏サヨナラ勝ち。37年ぶり3回目の夏の甲子園出場を決めた。

一方、敗れた京都国際は創部21年目初の決勝戦で、8回表まで2点をリードするも甲子園行きはならなかった。

韓国系の国際学校で1963年に京都韓国学園として開校。2004年から現在の名称となった京都国際は、08年に韓国から野球留学していた内野手のシン・ソンヒョン(申成鉉、28)が広島の入団テストに合格しドラフト4位で入団。高校通算30本塁打の長距離砲が同校初のプロ野球選手となった。

シン・ソンヒョンは広島での5年間で1軍出場はなく、13年限りで戦力外となるも、帰国後、独立球団を経て、15年に育成選手としてKBOリーグのハンファイーグルス入り。現在はトゥサンベアーズでプレーしている。

シン・ソンヒョンは母校の初の決勝進出に球団を通して以下のようにコメントした。

「決勝戦はインターネットを通じて生中継を初回から見守った。よく戦ったが本当に惜しかった。それでも後輩たちを感心するし誇らしい。来年は必ず優勝することを願うし、来年も応援する」

甲子園にあと一歩のところまで迫る強豪校となった京都国際だが、「外国人学校」だった99年、野球部創部1年目の夏は、1回戦で京都成章に0-34で大敗。2年目は京都学園に0-15で敗れている。

そして3年目、海洋を相手に10-3で7回コールドで公式戦初勝利。その時、1年生遊撃手として活躍したファンモク・チスン(荒木治丞、34)さんは17年までLGツインズでプレーした。

LG在籍当時のファンモク・チスンさん(写真:ストライク・ゾーン)
LG在籍当時のファンモク・チスンさん(写真:ストライク・ゾーン)

ファンモク・チスンさんは祖父が日本人、祖母が韓国人のいわゆるクオーター。韓国・済州島の中学から同校に野球留学し、亜細亜大、セガサミー野球部を経て韓国でプロ選手となった。

また、同校野球部出身者には在学中に身につけた日本語を生かし、通訳として日韓の球団で活動した元留学生もいる。

捕手だったキム・ヨンロン(金玲瓏、32)さんは卒業後帰国し、LGツインズでブルペン捕手の職に就いた後、投手コーチだった加藤初さん(元巨人など)の通訳に転身。以後10年以上、韓国球団の日本人コーチの通訳を務めた。

また10年から2年間は千葉ロッテに移籍したキム・テギュン(金泰均)内野手の通訳として活動した。

2010年に千葉ロッテでキム・テギュンの通訳をしていたキム・ヨンロンさん(写真左。ストライク・ゾーン)
2010年に千葉ロッテでキム・テギュンの通訳をしていたキム・ヨンロンさん(写真左。ストライク・ゾーン)

キム・ヨンロンさんは、「僕らは在学当時、他校と戦力的には劣っていないと思っても実際は4回戦止まり。学内の設備も恵まれたものではなく、甲子園というのは夢として持っているだけだった。しかし今の選手たちは甲子園が目の前まで近づくようになった。決勝進出は学校の歴史に残るものすごい出来事だ」と話した。

中学生の時にテレビで見た甲子園大会に魅せられ、親元を離れて野球留学することを決めた韓国のOBたち。彼らにとって甲子園は遠い夢だったが、後輩たちは夢舞台にあと一歩のところまで近づいた。

<京都国際出身のプロ野球選手>

同校出身で現在、NPBでプレーする選手には広島の曽根海成内野手(24)、ソフトバンクの育成選手、清水陸哉外野手(20)がいる。

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韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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