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阿部慎之助との日々のLINEが刺激に 新正捕手目指すトゥサンの29歳

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
ブルペンでボールを受けるトゥサンの捕手パク・セヒョク(写真:ストライク・ゾーン)

ブルペンにとどろく、投手を鼓舞する響きのある低音ボイス。その声の主は自信に満ちた表情をしていた。

トゥサンベアーズのプロ8年目の捕手、パク・セヒョク(29)には今年、多くの視線が注がれている。しかしそれはプラスの意味ではない。

攻守に大活躍を続けた先輩捕手のヤン・ウィジ(31)がFAでNCダイノスに移籍。「パク・セヒョクはその大きな穴を埋められるか?」と、注目されている。

同い年の投手、ホン・サンサム(左)と会話を交わすパク・セヒョク(写真:ストライク・ゾーン)
同い年の投手、ホン・サンサム(左)と会話を交わすパク・セヒョク(写真:ストライク・ゾーン)

パク・セヒョク自身も「重要な年」と話す2019年。春季キャンプを前にある願いをかなえた。それは巨人・阿部慎之助(39)との合同自主トレだ。

「以前から優れたベテラン選手から学びたいと思っていた。阿部選手は高校生の時から憧れていた捕手。後藤前コーチ、チョ・インソンコーチのおかげで実現しました」。

昨年1年間、トゥサンで打撃コーチを務め、今年から巨人に復帰した後藤孝志コーチ(49)とチョ・インソンバッテリーコーチ(43)の働きかけで今年1月、パク・セヒョクは阿部のアメリカ・グアムでの自主トレに参加した。

「何でも阿部さんがやることについていくことにした。キャッチャーとしてどうあるべきかという姿勢、バッティングに関しても聞く話すべてがためになりました」とパク・セヒョクは話す。阿部とパク・セヒョクはどちらも右投げ左打ち。背番号も同じ10番でもある。

パク・セヒョクは阿部と濃密な15日間を過ごした。しかし「阿部野球塾」は短期講習ではなかった。

「気になることがあったら、いつでも何でも聞いてこい」

阿部からそう言われたパク・セヒョクは無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通して、その後も言わば「通信教育」を受けている。

「毎日、いや2日に1度くらいでやり取りしている。阿部さんからも“今日はこんなバッティング練習をした”と映像が送られてくることもあります」

日韓の2人の間には言葉の壁がある。しかしその点はLINEの通訳機能が解決している。

後藤コーチと共に阿部とパク・セヒョクを結び付けたチョ・インソンコーチは、現役時代から小田幸平(元中日)、嶋基宏(東北楽天)ら日本球界の捕手たちと積極的に交流。阿部とも接点があった。

「阿部に(パク)セヒョクのお礼を伝えたら、“むしろ、こちらがありがとう”と言ってくれた。阿部にもプラスになったのだろう。セヒョクには阿部から何事に関しても目的意識を学んでほしいと思う。セヒョクは元々、他のチームなら正捕手になれる選手。責任感を持ってやってくれるだろう」とチョ・インソンコーチは話す。

パク・セヒョク(左)とチョ・インソンコーチ(写真:ストライク・ゾーン)
パク・セヒョク(左)とチョ・インソンコーチ(写真:ストライク・ゾーン)

沖縄・うるま市でキャンプを行っているトゥサン。パク・セヒョクを相手にブルペンで投球を行った左腕のユ・ヒグァン(32)はパク・セヒョクの昨年までとの違いをこう話した。

「セヒョクは控え捕手だった時でも自信にあふれていた。今はさらに余裕が出てきたので(ヤン)ウィジの穴を埋めてくれると期待している。阿部選手という実績のある選手から学んだノウハウはきっとプラスになるだろう」

パク・セヒョクの昨季の成績は89試合、打率2割8分2厘、3本塁打、22打点。捕手としては73試合に出場、うち先発出場は32試合だった。

39歳の阿部慎之助と29歳のパク・セヒョク。年も実績も立場も異なるが、通じ合った2人が共に目指すもの、それは正捕手の座だ。

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韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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