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ロッテが堅守のセカンドを助っ人に選んだ背景とは<韓国KBOリーグ>

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
ロッテジャイアンツ入りが決まったパドレス当時のカルロス・アスアヘ内野手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ロッテジャイアンツは20日、新外国人選手としてカルロス・アスアヘ内野手(27=前パドレス)と年俸55万1,000ドル(約6,120万円)で契約を結んだと発表しました。

韓国は各球団が外国人枠3人のうち、1枠に野手を充てる中、野手には打力、とりわけ長打力を期待するのが一般的です。しかしアスアヘ選手はメジャーリーグでのこの3年間で175試合出場の実績はあるものの、通算成績は打率2割4分、6本塁打、42打点とバットマンとしては物足りなさを感じます。ではなぜロッテはアスアヘ選手を選んだのでしょう。その背景には特有のチーム事情がありました。

ロッテ打線は4番に、日米を経て2017年に古巣復帰したイ・デホ選手(元オリックス、福岡ソフトバンク)という強力な主砲がいます。今季のイ・デホ選手は全144試合に出場、2年連続となる3割30本100打点を記録しました。

イ・デホ選手の前後には左の長距離砲、チェ・テイン内野手(36)、6年連続打率3割のミン・ビョンホン外野手(31)といった実力者が揃います。さらに1番に今季リーグ最多安打を記録し、長打力も併せ持つチョン・ジュンウ外野手(32)、2番には球界きっての安打製造機で9年連続打率3割をマークしたソン・アソプ外野手(30)が座る、代表チームレベルのラインアップとなっています。

ロッテはこの5人で指名打者、1塁手、外野手の枠が埋まり、長打力がある助っ人を求める必要や入り込む余地もありません。

強力打線の一方で不安なのがディフェンスです。そこでロッテは2017年、センターラインの強化を目的に2塁手のアンディ・バーンズ選手(28)を獲得。バーンズ選手は主に6番以降に座り、1年目は守備だけではなく打撃でもチームに貢献しました。

しかし今季のバーンズ選手は守備面で粗さが目立ち、失策数は昨年の8個からリーグワースト2位の22個と大幅に増加しました。韓国は日本の感覚だとエラーに見えるプレーでも「H」のランプがともるケースが多く、記録に残らないエラーが少なくありません。そんな中でのこの数字は相当な不安定さを表しています。

今季までロッテで指揮を執ったチョ・ウォンウ前監督(47)はバーンズ選手の守備について、「今季は焦りがあるのか捕球する前に体が次の動作に動いている」と話し、雑なプレーが失点に結びつくケースも少なくありませんでした。

ロッテはチームとしても失策数がリーグワーストの117個を数え、守備の強化を目指す中、バーンズ選手に代わる2塁手としてアスアヘ選手が補強ポイントと合致しました。

ロッテ球団はアスアヘ選手について、「メジャーでの1143イニングでわずか5失策という優れた守備力を評価している」とし、「打者としても俊足と高いミート力を持っている」と期待を寄せています。

今季7位でポストシーズン進出を逃し、ヤン・サンムン新監督(57)で上位返り咲きを目指すロッテ。アスアヘ選手にはチームの弱点を補う役割が求められています。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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