コロナ禍が続いた2021年。

はたして2022年はどのような1年になるのか。

昨年同様、2021年の若者政策に関する進展・議論を振り返りながら、2022年の重要なテーマを考えていきたい。

2021年年頭に書いた記事では、さまざまなテーマに触れながら、今年(2021年)新たに下記5つのテーマが大きく進むのではないかと触れたが、基本的には想定通り、議論が大きく進んだテーマとなった。

2021年、若者政策の注目テーマとはなにか?(室橋祐貴)

1.ブラック校則解消は生徒自身の手で

2.教員から生徒への性暴力への対応

3.大学学費負担のあり方や奨学金返還制度の拡充

4.若者への家賃補助

5.2022年18歳成人に向けて被選挙権年齢引き下げの議論進むか

2021年、「生徒参加によるブラック校則の見直し」は急速に進み、教育界における一大トピックとなった。

関連記事:2021年なぜ校則議論は大きく進展したのか?そして来年の課題は?(室橋祐貴)

「教員から生徒への性暴力への対応」では、まだ後述の「こども家庭庁」の議論と並行して日本版DBSなどが残っているが、昨年(2021年)わいせつ教員対策の新法が成立し、一定の進展を見せている。

また、大学学費負担軽減に関して、自民党総裁選等で、「出世払いの奨学金制度」が打ち出され、岸田総理の重点政策の一つとなっている。

ただ、衆院選では同じく与党の公明党が給付型奨学金の中間層への拡大を打ち出しており、2022年大きな焦点の一つとなるだろう。

以前記事に書いた通り、基本的には給付型奨学金の中間層への拡大の方が若者にとっては望ましいが、設計次第のところもあり、今後の議論を注視したい。

関連記事:岸田新総理が主張する出世払いの奨学金制度「J-HECS」は本当に若者にメリットが大きいのか?(室橋祐貴)

同様に、「若者への家賃補助」も、2021年衆院選では注目を集めたテーマとなった。

今後、「新しい資本主義実現会議」などの議論を経て、夏頃にまとめるとされている「実行計画と工程表」に含まれるのか注目したい。

関連記事:なぜ衆院選で「家賃補助」が争点になったのか。各党の政策を徹底比較(BUSINESS INSIDER JAPAN)

最後に、「被選挙権年齢引き下げ」は期待(願望)を込めてテーマの一つとして掲げていたが、想定より成人年齢引き下げへの注目度が低く、2022年に入ってから急に報道されるようになっている。

関連記事:成人年齢18歳への引き下げで起こる「社会的なインパクト」。子ども・若者との向き合い方を変えるべき時(室橋祐貴)

ただそれでも、韓国では昨年末に被選挙権年齢の18歳への引き下げが決まり、衆院選では新たに国民民主党が18歳への引き下げを公約に掲げるなど、徐々に進んでおり、今年の議論の進展に期待したい。

関連記事:韓国で「被選挙権年齢」18歳に引き下げへ。日本での議論の現在地は?(室橋祐貴)

2022年は?

では2022年の注目テーマはなにか。

今年も新たに5+1つテーマを提示したい。

若者政策以外では、もちろんコロナ対応が与える影響がもっとも大きいが、ほかには、台湾有事などを踏まえた国家安全保障戦略・防衛大綱・中期防衛力整備計画の改定憲法議論気候変動対策・生物多様性(2022年は中国で生物多様性のCOP15が開催される)、「デジタル臨調」「デジタル田園都市国家構想」、人権問題、皇室、女性議員の割合あたりが注目を集めるだろう。

経済的には、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げがどうなるかによって世界的な経済状況は変わりかねない。

またアメリカで中間選挙、韓国で大統領選挙、フランスで大統領選挙、日本で参議院選挙と、今年も大型選挙イヤーであり、その動向も注目される。

何より、日本では、2022年夏参議院選挙が終われば、3年ほどは国政選挙が行われる可能性は低くなるため、与党が勝利すれば、政権の推進力は大いに高まる。

1.こども家庭庁、こども基本法、こどもコミッショナー

2022年注目の若者政策の一つ目は、「こども家庭庁」関連の動きだ。

具体的には、「こども家庭庁」に「財源」と「人員」というリソースがどこまで割かれるか、また「勧告権」にどこまで実効性を持たせるか、省庁横断的なデータベース整備がどうなるか、子どもの意見を反映する仕組みがどう整備されるかなど、論点は多い。

また、その基盤となる、子どもの権利を包括的に定めた「こども基本法」、独立した子どもの権利擁護機関である「こどもコミッショナー」が設置されるのかも注視していく必要がある。

2.賃金上昇に向けた具体的な改革案(「新しい資本主義」)

次に、昨年議論の的となった「賃金上昇」に向けた具体的な改革内容。

日本ではここ30年程度ほとんど賃金上昇が起こらなかったという事実にようやく目が向けられるようになり、さまざま議論が行われているが、今のところ、賃上げ税制や保育・介護士などの給料引き上げなど、局所的な改善策しか打ち出されておらず、全体的な改革案は見えてこない。

その最大の要因が、結局「新しい資本主義」が何なのかが、明確に打ち出されていないからだ。

具体的な改革内容は、「新しい資本主義実現会議」などの議論を経て、夏頃にまとめるとされているが、その時に全方面にいい顔をしようとせずに、成長への阻害になっている既得権益や規制を変えていく、思い切った投資をしていく心意気が必要だ。

しかしこの間の、いい言い方をすれば「臨機応変な」、悪い言い方をすれば「優柔不断な」、政権運営を見ていると、心許ない。

将来の日本を作っていく若者世代としても、どのように日本を変えていくべきか、積極的に提言していきたい。

関連記事:日本の賃金はどうすれば上がるのか?目指すべきは「フレキシキュリティ」?EUを参考に(室橋祐貴)

3.生理政策の広がり

2021年、一大トピックとなった「生理の貧困」。

着実に生理用品の配布や学校等へのトイレ設置が進んでいるが、今年は金銭負担に限らず、もっと議論の範囲が広がっていくだろう。

昨年から徐々にタブー視される風潮はなくなりつつあるが、男女問わず、生理教育の広がりや、生理休暇への理解が進むのではないかと思われる。

関連記事:学校にも「生理休暇」の導入を!学生らが声を上げるワケ。生理痛で倒れる、嘔吐する現状(室橋祐貴)

また「飲む中絶薬」など、リプロダクティブ・ヘルスの問題への対応も進むだろう。

リプロダクティブ・ヘルスとは:「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、性や子どもを産むことに関わる全てにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも本人の意思が尊重され、自分らしく生きられること

4.部活動の見直し

四つ目は、部活動の見直しだ。

教員の長時間労働の観点から、部活動の議論が進んでいるが、その中心的テーマである「部活動の地域移行」にあわせて、学習指導要領における部活動の位置付けが見直されようとしている。

2021年12月20日には、スポーツ庁から第3期スポーツ基本計画の中間報告が示され、2023年度から始まる中学校における土日の部活動の地域移行を踏まえ、学習指導要領での部活動の位置付けを見直すと明記されている。

なお、中間報告に対して、現在パブリックコメントを募集しており、意見がある方は積極的に投稿されたい。

「第3期スポーツ基本計画(中間報告)」に関する意見募集の実施について

実施期間(予定) 令和3年12月21日~令和4年1月19日

また2021年10月に設置された「運動部活動の地域移行に関する検討会議」は、2022年7月を目途に提言を取りまとめる予定だ。

他方、これまで生徒側の視点から部活動が語られることは少なかったが、いまだに強制加入も続いており、生徒側の視点も含めて、改善が進むことを期待したい。

部活動の強制加入の完全撤廃を求めます!署名のお願い(日本若者協議会)

5.いじめ・不登校対策の強化・見直し(教育の多様化)

五つ目が、「いじめ・不登校対策」。

2020年度、自殺した児童や生徒は初めて400人を超え、小中学生の不登校は19万人以上、いずれも過去最多となるなど、子どもをめぐる環境は深刻化している。

その原因の一つであるいじめ問題では、学校や教育委員会が隠蔽するなど、問題解決に向けた目処は立っていない。

「こども家庭庁」の3つの部門(「企画立案・総合調整部門」、「成育部門」、「支援部門」)の一つである「支援部門」では、いじめ対策が含まれているが、どこまで行政が介入するか、加害生徒への「出席停止」など対策を強化するか、考えなければならない点は多い。

参考記事:いじめ対応 教育的アプローチの「限界」 いじめ加害者の出席停止の勧告等、市長による積極介入から考える(内田良)

また、岐阜市に「不登校児専門公立中」(岐阜市立草潤中学校)が開校したように、画一的な学校から多様な形へと選択肢を増やしていくことが重要である。

広島県福山市では、公立初の「イエナプラン教育」を取り入れた小学校(常石ともに学園)が2022年4月に開校される予定となっており、その兆しは見えつつある。

イエナプラン教育とは:オランダで広まったオルタナティブ教育の一つ。異年齢集団で活動するのが大きな特徴で、対話・遊び・仕事(学習)・催し(行事)という4つの活動を通じて、一人ひとりの個性を尊重しながら自律と共生を学んでいく。

6.国会改革に向けた議論進むか?

最後に、やや期待を込めたかつ直接的に若者政策ではない(が、全ての根底にある)テーマを掲げると、「国会改革」だ。

ここ数年、国家公務員の長時間労働に関して注目が集まり、改善が進んでいるが、国会議論の質的な改善はほとんど進んでいない。

しかし、現状の「国会議論」は、多くの若者から「非生産的」だと思われており、政治離れの一因になっていると思われる。

国会の議論を変えるためには、大きな構造改革が必要であり、そのハードルは高いが、将来の日本にとって不可欠の改革である。

衆院選で議席増となった日本維新の会と国民民主党が独自の動きを見せ、立憲民主党の党首交代など、野党内では大きく世代交代や勢力図の変化が起きようとしており、国会で建設的な議論ができるように、国会改革の議論が進むことを期待したい。

関連記事:野党躍進のカギ、「国対政治」を見直せるか?「批判ばかり」の脱却策として隔週・夜に党首討論の開催を(室橋祐貴)