子どもの意見が反映されていない日本社会

若者の社会参加への関心は高まる一方、影響力を発揮できていないーー。

国立青少年教育振興機構は6月22日、日米中韓の4カ国の高校生に対して実施した、高校生の社会参加に関する意識調査の報告書を公表した。

調査概要:

日本では昨年9月~今年2月に、全国の高校40校で質問紙やインターネットで実施。有効回答者数は4623人だった。同様に米国は昨年10~12月に7校の1300人が、中国は昨年9~12月に24校の5019人が、韓国は昨年9~12月に34校の1526人が、それぞれ回答した。

それによると、「学校の校則は生徒の意見を反映しているか」という問いに対し、「反映している」と回答した者の割合が日本は2割未満で、最も低く、日本社会は、子ども・若者に関することを決定したり、解決する際、子ども・若者の意見を表明する権利が「保障されている」「まあ保障されている」と回答した者の割合が4か国中最も低い結果となるなど、子ども・若者の声が聞かれていない日本社会の実態が改めて浮き彫りとなった。

国立青少年教育振興機構
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国立青少年教育振興機構
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一方で、日本の高校生は、「学校の運営や今後の方針などについて、学校が生徒の意見を求める必要があるか」に対し、「ぜひ求めるべきだ」「まあ求めるべきだ」と回答した者の割合は9割を超え、米国に次いで高く、高校生自身、声を聞く必要性や意義は感じているものの、実際に影響力を発揮できていない学校の現状も明らかとなっている。

つまり、これまで度々指摘してきている通り、問われているのは子どもの意見を受け止める「大人」側の姿勢であり、子どもの意見をどう受け止めていくべきかは、社会的な課題である。

関連記事:「学校のことに関して意見を表明する場がない」校則見直しに生徒が関わる機会を求める児童生徒の声(室橋祐貴)

国立青少年教育振興機構
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意見を表明「しても何も変わらない」

同様に、日本の高校生は、子ども・若者が社会や政治に対し、自分たちの意見を表明することについて、良いことだと回答をした割合(「とてもそう思う」「まあそう思う」)が 95%を超えている一方、子ども・若者は社会や政治について自分たちの意見を表明しやすいと「あまり思わない」「全く思わない」と回答した割合が56%で、4か国中最も高い。

表明しづらい主な理由として、「しても何も変わらない」「社会からの理解を得られない」が多く挙げられ、いずれも5割弱となっている。

国立青少年教育振興機構
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私的事柄に偏る日本の高校生の関心事項

学校外の活動への参加や関心の項目では、「趣味に関する活動」や「アルバイト」への関心は高いが、「政策に対する意見表明に関する活動」に関心を示した高校生は4か国中最も低い。新聞やニュースはよく見るが「エンターテインメント」に関心が高く「政治」「経済」「文化」への興味が低い。

また、学校内においても、生徒会活動への関心は高いものの、自治的な生徒会活動とい

う公的な要素の強い事柄には関心が低いことから、学校内外にかかわらず、全体として社会参加が私的な事柄に偏る傾向にあるといえる。

国立青少年教育振興機構
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この背景には、主権者教育の量的・質的な不十分さや、社会的活動への参加経験の乏しさが挙げられるだろう。

「民主主義」にとって重要なのは、⑴公開による透明性、⑵参加を通じての当事者意識、⑶判断に伴う責任、であるが、日本の学校・社会ではこの要素が弱く、その結果、社会的な物事に対して当事者意識が弱い、社会的決定に対する責任感も弱い、のが現状となっている。

「子どもの参画」ロジャー・ハートから筆者作成
「子どもの参画」ロジャー・ハートから筆者作成

ニューヨーク市立大学教授の環境心理学者であるロジャー・ハートは、「子どもの参画のはしご」で参画の段階を8つに分け、下三段を「非参画状態」として批判しているが、学校の自治組織である生徒会など、表面上は「参加」していても、実質的にはほとんど影響を持っていない、「形だけの参画」「お飾り参画」「操り参画」の事業が日本には非常に多い。

校則見直しへの生徒参加は一つの試金石

こうした現状を踏まえると、社会的な機運の高まりと同時に、文部科学省や教育委員会が求めるようになっている「校則見直し過程での生徒参加」は、今後の社会参画の意欲を高めるか否かの試金石となるだろう。

仮に、学校内で児童・生徒の声が反映されるようになれば(社会参画への効力感を得られれば)、学校を卒業しても社会参画への意欲が高くなるだろうし、一方、声を上げても実質的にほとんど反映されない、明確なフィードバックもない状態となれば、日本の高校生の「諦めの感情」がさらに増すことにつながり、社会参画はさらに停滞してしまうだろう。

ただ、これまで日本では、学校運営に生徒が参加するケースが非常に乏しく、校則の内容も校長(学校長)に大きな権限が与えられていることから、教員、生徒ともにどう変えていくべきなのか、よくわからないという実態がある。

その結果、むしろ「秩序に主体的に従うための校則改革」(国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター研究員 両角達平)に留まる可能性は高い。

そのため、校則見直しの判断軸になるようなガイドラインが必要ではないかと考え、日本若者協議会では、「校則見直しガイドライン作成検討会議」を設置。

今後数ヶ月かけて、高校生、教員、元校長、学者、弁護士らによって、ガイドラインをまとめようとしている。

■委員(敬称略)

・上山 遥香  奈良女子大学附属中等教育学校5年

・内田 良   名古屋大学准教授

・後藤 富和  弁護士

・西郷 孝彦   元世田谷区立桜丘中学校校長

・斉藤 ひでみ 公立高校教員

・末冨 芳   日本大学教授

・藤田 星流  東京大学教育学部附属中等教育学校6年

・山本 晃史  認定NPO法人カタリバ「ルールメイカー育成プロジェクト」担当

これまで日本若者協議会では、ブラック校則見直しや「学校内民主主義」(校長だけで意思決定するのではなく生徒・教員・保護者なども交えた意思決定)の実現を文部科学省などに対して訴えてきましたが、先日文科省から各教育委員会に対してブラック校則見直しや、生徒・保護者も交えた校則見直しの事例が紹介され、今後全国的に学校内で生徒も含めた校則の見直しが加速することが想定されます。

一方、校則の内容については、生徒指導提要(平成22年3月文部科学省)において示されているとおり、「学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内において定められるもの」とされており、その範囲は曖昧かつ理不尽な校則を妨げるには至っていません。実際、黒染め強要のような行き過ぎた校則も「合理的」として認められてきたことはこれまでの判例で明らかです。

また、生徒・保護者に意見を求めるにしても、これまでさまざまな点において細かく校則を定めてきた既存の延長線上でしか考えられず、必要以上に自らを制約(細かくルールを定める)してしまう、少数者の権利が尊重されないといったケースも散見されます。

そこで、政治教育におけるボイテルスバッハ・コンセンサス(※)のような、校則見直しの際の判断軸になるようなガイドラインが必要ではないかと考え、日本若者協議会では「校則見直しガイドライン作成検討会議」を設置します。

※ボイテルスバッハ・コンセンサス

1976年にドイツの政治教育学者らがボイテルスバッハで議論し発表した、政治教育の基本3原則。

1.圧倒の禁止の原則。教員は、期待される見解をもって生徒を圧倒し、生徒自らの判断の獲得を妨げることがあってはならない。

2.論争性の原則。学問と政治の世界において論争がある事柄は、授業においても議論があるものとして扱う。

3.生徒志向の原則。生徒は、自らの利害関心に基づいて政治的状況を分析し、政治参加の方法と手段を追求できるようにならなければならない。

引用元:「校則見直しガイドライン作成検討会議」を設置しました(日本若者協議会)