2021年、若者政策の注目テーマとはなにか?

(写真:show999/イメージマート)

誰もが予想だにしていなかったコロナ禍に見舞われた2020年。

2020年の若者政策に関する進展・議論を振り返りながら、2021年の重要なテーマを考えていきたい。

なお、若者政策の対象は、「子ども・若者育成支援推進法」と同様に乳幼児期から30歳代までとし、子育て政策や若手社会人の労働政策なども含める。

今後の学校の形を大きく変えるGIGAスクール構想

まず教育面。休校期間中に小中高でオンライン授業をできなかった反省は大きいものの、全国の小中学校で児童生徒が1人1台のパソコンなどのICT端末を使って学ぶ環境を整える「GIGAスクール構想」が従来のスケジュールより前倒しで進んだのは大きい。

新学習指導要領の実施・普及も含め、今後、校務のオンライン化による教員の働き方改革や、生徒や保護者とのコミュニケーションの変化、ICTを活用した授業が行われていくことを期待したい。

大学でもオンライン授業の導入が進んだが、学生から高評価の声も出ており、コロナ禍が収束しても、一方通行の大講義授業はオンライン(オンデマンド)で行い、双方向で積極的に議論を行う、反転授業の導入や少人数授業の割合を増やすなど、より授業の質が上がっていくことを期待したい。

教養科目や基礎科目の大学間連携(オンラインで同じ授業を受けられる)が進めば、教員は個別の学生に指導時間を割くことができるようになるなど、より大きな可能性も秘めている。

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また長年大きな課題となっていた若手研究者への支援が、来年度予算から大幅に増加される予定となった。今後さらなる経済的支援やアカデミックポストの増設などキャリアへの支援が求められるが、大きく前進したと言える。

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そして文部科学省と財務省が折衝していた「少人数学級」は小学校全学年「35人学級」で決着。学級編制の引き下げは約40年ぶりの改革で、2021年度から5年間をかけて段階的に下げる。今後、都市部を中心に教室不足や、教員の人材確保が大きな課題になる。その意味でも以前から大きな問題となっている、教員のさらなる働き方改革が欠かせない。

男性の家庭進出に向けた議論が進む

次に労働面は、コロナ禍によって多大な影響を受け、ほとんどはその対応(所得保障やテレワーク化)に追われた1年であった。

その中でも、女性の社会進出、少子化対策の大きなボトルネックになっていた女性の家事・育児の偏りの是正、つまり男性の家庭進出の議論が大きく進み、2021年通常国会で「男性の育休取得働きかけの義務化」、「男性の産休」新設の関連法案が提出される予定になっている。

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また菅義偉首相に変わってから、「不妊治療への支援」の議論が急速に進み、2021年3月から助成拡充(2回目以降も30万円助成)、2022年4月の保険適用をめざしている。

他方、児童扶養手当は、待機児童解消の予算確保という名目で、高所得世帯向けの給付を一部廃止。2022年10月をめどに夫婦のうちのどちらかが年収1200万円以上の世帯は受給対象から外れる予定に。

さらに、「全世代型社会保障検討会議」はコロナ禍によって大きく議論が遅れ、結果的には、75歳以上の医療費窓口負担について、年収200万円以上の人を対象として、2022年度後半から2割に引き上げることとなった。

ただ対象が非常に狭く、部分的には若者重視の政策が進む一方、高齢者にも大きな配慮と、チグハグな印象を受ける子育て政策の議論となった。

近年大きなアジェンダとなっている「選択的夫婦別姓」は前進どころか、後退。政府が2020年12月25日に閣議決定した今後5年間の「第5次男女共同参画基本計画案」では「選択的夫婦別氏」という表現が消え、「さらなる検討を進める」という表現に。

ただ2021年10月までに行われる衆議院選挙では大きな争点になる可能性も高く、議論が急に進む可能性もなくはない。

緊急避妊薬の薬局販売」は「第5次男女共同参画基本計画案」に盛り込まれたものの、まだ産婦人科医会が反対しており、道半ばとなっている。

国家公務員の働き方改革もたびたび話題に

2019年10月の台風でも帰宅できなかった「問題」などを契機に、たびたび話題になっている国家公務員の長時間労働。

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これまで「官僚の働き方改革を求める国民の会」や(株)ワーク・ライフバランスといった民間からの取り組みで長時間労働の実態が明らかとなっていたが、河野太郎議員が行政規制改革相になったことで、国家公務員の「サービス残業」の実態調査が内閣府人事局によって行われ、2020年12月25日に公表。

河野太郎大臣は12月25日の記者会見で、「過労死ラインと呼ばれる月80時間を超える残業をした人が全体の1割以上もいる。サービス残業はないという建前を横行させた人事院には厳しい反省を求める」と厳しく指摘し、「若手に負担が偏っている実態が見える化できた。この長時間労働が早期の離職につながっている。このデータを見る限り、サービス残業がないということは考えられない。各省庁に管理職への研修義務づけなどを求めていく」と、今後の決意を語った。

ただ、コロナ禍においても、政治家のICT対応やオンライン国会もなかなか進まず、国会改革が進む様子も見られない。

霞が関の取り組みももちろん重要であるが、国会対応が長時間労働の大きな要因になっているため、永田町も大きく変わっていくことを期待したい。

これまで見てきた内容も引き続き2021年の重要テーマとなるが、新たに5つテーマを提示したい。

1.ブラック校則解消は生徒自身の手で

写真:アフロ

一つ目は、「ブラック校則」見直しの動き。

2017年の女子生徒による大阪地裁への提訴をきっかけに、「ブラック校則」撤廃を求める運動が起こり、ここ数年で見直しの動きが強まっているが、これまでは大人が主導して見直しを決めることが多く、その決定過程に生徒が入ることは稀となっていた。

2018年3月に林芳正文科大臣(当時)から「(校則は)絶えず積極的に見直す必要がある」「児童生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決定するということが望ましい」という答弁が国会で行われたが、具体的な取り組みはあまり進んでいない。

ただ、生徒の納得感や主権者教育の観点からは、学校運営に生徒が参加することは非常に重要であり、本来は学校の一員としてルールメイキングに参加できるようにすべきだ(校則に限らず、学校行事や授業も含め)。

実際、諸外国ではそうした取り組みが積極的に行われており、それが後の社会参加を促す大きな要因の一つにもなっている。

日本でも2020年後半から徐々に、弁護士会や教育委員会から生徒の意見も踏まえるよう提言が出ており、2021年にはこの動きがさらに加速するものと思われる。

たとえば宮崎県教育委員会は、2020年12月23日付けで、県立の各学校などに通知を出し、校則を見直す際には、生徒や保護者が参加できる工夫も求めている。

宮崎県教育委員会人権同和教育課は「この通知をきっかけに、校則全般の見直しを生徒や保護者の意見も参考にして積極的に推進してもらいたい」としています。

引用元:NHK「下着の色は白」などの校則 高校に検証や見直し求める 宮崎

すでに校則の見直しに生徒が参加している事例も見られ、こうした仕組みが全国的に広がることを期待したい。

(佐賀県)鳥栖市の県立香楠中は、教員側が11月に見直しの原案を示し、生徒会の風紀委員を中心に生徒の意見を集約しているという。本年度末までには結論を出す方向だ。

「校則見直しに関われてやりがいを感じる」と風紀委員長の女子生徒(14)。宮副健治副校長は「権利と義務のバランスを考えるのは主権者教育にもつながる」と手応えを語る。

引用元:西日本新聞「ブラック校則」見直しの動き 下着は白、友人宅外泊× 生徒が議論

筆者が代表理事を務める日本若者協議会でも、2020年8月に「学校内民主主義を考える検討会議」を設置し、現在提言内容やガイドライン案を検討しており、この動きを加速させていきたい。

関連記事:「学校のことに関して意見を表明する場がない」校則見直しに生徒が関わる機会を求める児童生徒の声(室橋祐貴)

文科省・主権者教育推進会議の「中間報告」に欠けている視点(室橋祐貴)

2.教員から生徒への性暴力への対応

続いて、教員による性暴力への対応。

2018年には、児童や生徒へのわいせつ行為などで懲戒等の処分を受けた公立学校の教員の数は282人と過去最多となり(2019年は273人で過去2番目)、対応が急がれる。

しかし、政府が検討していた、教員免許法の改正(わいせつ行為で懲戒免職となり教員免許を失効しても、3年経過すれば再取得可能としている教育職員免許法について、期間を延長して規制強化する)は、内閣法制局が、個人の権利制限につながるとの見解を示したため当面は断念。

ただ学校教育法の改正やイギリスDBSのようなシステム導入(イギリスでは、個人の犯罪履歴がデータベース化されており、子どもと関わる仕事をする人は、必ずこのDBSに照会して、犯罪履歴がないという証明書を発行してもらう必要がある)など、ほかにもできることはある。

日本大学教授・末冨芳さん

子どもや保護者が勇気を持って声を上げても、教育委員会が対応してくれない現状があります。なぜそうなるかというと、根拠となる法律が日本にはないからです。

特に、学校教育法には大きな課題を感じています。学校教育法は、いまは体罰に関しては禁止行為であると厳しく定めているので、実際に教員が児童や生徒に体罰をして、教育委員会に訴えられた場合は処分されます。ところが、“子どもに性加害”をしてはいけないという禁止規定はないんです。

引用元:NHK 学校での “教員からの性暴力”なくすために オンライン・ディスカッション/後編【vol.109】

そもそも実態調査も全国的に行われておらず、「懲戒処分は氷山の一角」である可能性が高い。(弁護士ドットコムニュース:教員から生徒への「性暴力被害」調査、実施は4府県のみ NPO代表「懲戒処分は氷山の一角」

実際、上述の「学校内民主主義」に関して日本若者協議会でアンケートを実施した際にも、教員がセクハラ行為をしていてもクビにならないというコメントも散見されている。

◯東京都・国公立中学校 生徒

公立学校の場合、公務員なので犯罪を起こさないめったにクビにならないので先生のセクハラ行為などがある。

◯神奈川県・国公立中学校 生徒

1年時当時の理科教員が他クラスの担任でスキー教室や面談にてスカート内の盗撮や女子贔屓が多く、評価が低い人とかは辞めさせられれば良いなと思った。

引用元:「学校のことに関して意見を表明する場がない」校則見直しに生徒が関わる機会を求める児童生徒の声(室橋祐貴)

日本では性的同意年齢が低い割に、性教育も遅れており、性被害防止の教育も含めて、早期に対応が望まれる。

関連記事:NHK 児童生徒の性被害防止 来年度からモデル授業実施へ 文科省

3.大学学費負担のあり方や奨学金返還制度の拡充

次に、コロナ禍で保護者/学生の収入が減る中で、大学授業料の負担が重くなっており、奨学金利用者がさらに増えることが予想される。

そのため、ボーナスの減った現在の若手社会人の奨学金返済負担や、将来的な返済負担を軽減するため、奨学金返還制度の拡充が求められる。

具体的には、先日発表された企業による代理返済に加え(勤務先企業が奨学金を代理返済、来年4月から制度導入へ)、奨学金の所得連動型返還制度の拡充(既卒生への適用、第二種への適用、機関保証料の減額、マイナンバーに所得を紐付けて自動的に返還猶予、返済猶予の年限撤廃、ブラックリスト入りなくす等)や、奨学金の返済免除制度の拡充(イギリス:30年間返済した後は帳消し、教師や看護職だと給付型奨学金に転換、アメリカ:10年間公的職業に就いた場合ローンの残額返済免除、その他は20年で帳消し)が挙げられる。

また根底には、大学学費の家計負担の大きさがあり、学費自体の減額(運営費交付金や私学助成金の増額)や中間世帯への給付型奨学金の拡充が求められる。

関連記事:学生緊急支援の成果と課題。今後必要な学生支援とは何か?(室橋祐貴)

4.若者への家賃補助

このテーマはこれまでほとんど議論されていないが、若い現役世代にとってもっとも大きな固定費となっている家賃。

コロナ禍でも住居確保給付金の対象に普通学生が含まれないなど、日本では若者向けの家賃補助がほとんど存在しない。

欧米では幅広く家賃補助が行われているが、韓国でも2025年までに若者向けの公営住宅を整備する方針を打ち出されており、日本でも同様の動きを期待したい。

関連記事:KBS 政府 2025年までに「青年住宅」27万戸整備 若者の住まい確保支援する

5.2022年18歳成人に向けて被選挙権年齢引き下げの議論進むか

写真:アフロ

最後に、18歳選挙権以降、制度的な改善が進んでいない若者の政治参加。

徐々に若者の意識は変わり、政治参加の多様化(投票だけではなく、陳情や署名などによる参加)が進んでいるが、初めての18歳選挙となった2016年参議院選挙で各党が公約に載せた「被選挙権年齢の引き下げ」や「若者政策担当大臣」などの取り組みは一向に進んでいない。

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2022年4月1日からは、民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に変わる。

保護者の同意なくさまざまな契約を結べるようになることから、それに向けた消費者教育や金融教育が求められるが、成人にもかかわらず、選挙に出馬できないというのは違和感がある。

ましてや地方では議員のなり手不足も叫ばれている。

2022年には参議院選挙が予定されており、それに向けて被選挙権年齢引き下げをはじめとした若者の政治参加の議論が進むことを期待したい。

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