学生緊急支援の成果と課題。今後必要な学生支援とは何か?

(写真:アフロ)

今後必要な学生支援とは何か?

前期に行われた「緊急支援」の成果を振り返りながら、今政府に求められる学生への支援策について考えていきたい。

学びの継続の実現

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

学生も含めた一律10万円の特別定額給付金や、困窮学生を対象に10万円or20万円を給付する学生支援緊急給付金をはじめ、さまざまな緊急支援策が打ち出された前期。

結果としては、文部科学省の調査によると、国公私立大学などの学生の今年4~8月の中退率は0.38%で、昨年の同時期と比べて0.1ポイント減とほぼ横ばい。中退の理由では「経済的困窮」が23.1%で最多だったが、昨年の同時期(22.1%)と比べても大きな変化は無しとなった。

基本的には、新型コロナウイルス感染拡大の大きな影響による「コロナ退学」を防ぐことに成功したことは大きな成果と言って良いだろう。

一方で、今年度の前期授業料の納付を猶予された人は20万4685人で全学生に占める割合は6.76%。昨年度の13万9015人(4.52%)を大きく上回っており、今後も継続的な支援が必要な状況になっている。

では具体的にどのような支援策が必要か、それぞれ見ていこう。

(困窮学生への支援)次は一律支援より困窮世帯への重点的支援が必要

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

前期では、スピード重視、感染拡大防止の観点から、一律での現金給付が求められたが(「迅速に一律で10万円以上現金給付を実施して欲しい」。緊急学生アンケート 2020.03.27 室橋祐貴)、これまでの調査によって業種や世帯所得別の経済的影響の差も明らかになってきており、今後は特に影響の大きい困窮世帯への重点的支援が必要とされる(ただし、中間所得層にも大きな影響が出ており、家計急変世帯への臨機応変な支援が求められる)。

具体的には、下記のような支援策が考えられる。

・困窮世帯への追加給付(ひとり親世帯臨時特別給付金の再支給、児童扶養手当の増額、緊急小口資金貸付などの返還免除の拡大等)

・一人暮らし学生も住居確保給付金の対象に

・給付型奨学金、授業料減免措置の拡充(新大学1年生も)

特に三番目の給付型奨学金、授業料減免措置の拡充は、これまで政府からの支援に加え、大学が独自に学生支援を行っており、例えば関西学院大学は総額10億円もの学生支援を行っている。

しかし、寄付金を集めて実施したケースが多いため、今後追加支援が厳しく、政府による支援策が求められる。

大学院生への支援

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

次に、研究活動への大きな影響が出ている大学院生。

これまで何度か記事で紹介している通り、コロナ禍で研究に支障が出ている博士後期課程の学生への支援は進めてもらっているが、そもそも平時の大学院生への支援が非常に乏しく、今回「学生支援緊急給付金」は大学院生も対象になったが、給付型奨学金(修学支援新制度)は対象外になっており、平時から大学院生を支援の対象にしていく必要がある。

関連記事:「コロナ禍で研究できない若手研究者に支援を」若手研究者らが予算を要望(室橋祐貴)

先日NHKでも「大学院の博士課程学生数 ピーク時の半分に」という記事が出ていたが、主要先進国で博士号取得者が減っているのは日本だけであり、早急な待遇改善(経済的負担軽減、アカデミックポスト等の拡充)が求められる。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

対面授業再開やオンライン授業の質向上に向けた大学への支援

そして、1年生を中心とした対面授業の再開やオンライン授業の質向上に向けた大学への支援も必要である。

以前の記事(「大学のキャンパス再開が難しい理由と、政府に求められる大学支援」)で詳しく書いており、今回は詳しく書かないが、後期の授業が始まる中で、クラスターが発生した事例を見ると、大半が「授業外」の寮や飲み会等で発生しており、課外活動はなるべく控えてもらいつつ、対面授業をもっと再開しても良いのではないだろうか。

ただ1年生は大規模授業の受講が多いため、基本的にはハイブリッド型の授業にせざるを得ず、感染対策費や授業サポート費用として大学側に支援を実施する必要があるだろう。

萩生田光一文部科学大臣はテレビや国会等で、大学入試は実施できるのになぜ対面授業は再開できないのかと言っているが、もともと入試は受験生間の間隔が広く、教室間の移動も起こらないなど、普段の授業とは全く異なるのは明らかである。こんなことを言っている時点で現場とのコミュニケーションが足りないのは明らかであり、学生のためにもっと政府と大学が協力してもらいたいところである。

若手社会人の重い奨学金返済負担

また、近年奨学金を借りている学生が増加傾向にあるが(2005年日本学生支援機構利用率25.6%→2015年38.5%と約1.5倍増)、今回ボーナス減少や実家への仕送り等により、奨学金返済が重くのしかかっており、奨学金の負担軽減策を求めたい。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

実際、日本若者協議会の新社会人1年目の会員で奨学金の返済が厳しく、減額申請を行う人も出てきている。

●社会人1年目(私立大学出身)

高校時代から生活費、学費のために貸与型奨学金を合計400万円借りていて、生活費のために週4日アルバイトをしていた。社会人になってからもきょうだいの進学のために、実家に仕送りをしており、社会人7カ月目から始まる約1.2万円の奨学金返済も厳しい(減額申請を行う)。

→所得連動型の返還制度を平成29年度以前の奨学金採用者にも適用してほしい。

(減額申請をオンラインのみで申請できるようにしてほしい)

所得連動型の返還制度は平成29年度に導入されたが、それ以前の学生、社会人には適用されておらず、既卒生への適用や、奨学金の返済免除制度の拡充が求められる。

・奨学金の所得連動型返還制度の拡充(既卒生への適用、第二種への適用、機関保証料の減額、マイナンバーに所得を紐付けて自動的に返還猶予、返済猶予の年限撤廃、ブラックリスト入りなくす等)

・奨学金の返済免除制度の拡充(イギリス:30年間返済した後は帳消し、教師や看護職だと給付型奨学金に転換、アメリカ:10年間公的職業に就いた場合ローンの残額返済免除、その他は20年で帳消し)

就職氷河期を防ぐための就労支援

高校生、大学生を対象にした就労支援も必要である。

特により大きな影響が出そうなのは、高卒と2022年卒の大学生である。

出典:日本若者協議会
出典:日本若者協議会

2020年10月1日時点の2021年卒の大学生の内定率は88.7%と、昨年度に比べると少し下がっているものの、就職活動中に新型コロナウイルスの影響が出たため、一定程度で収まっている(20年卒と比べると6月1日時点では-13.4ポイントあった差が、10月1日時点で-5.1ポイントに縮小してきており、就職氷河期と言えるほどにはなっていない)。

一方、高校生の就職活動はコロナの影響で例年より1カ月遅れており、求人数は前年同期比24.3%減と影響がより大きいため支援が必要な状況になっている。

その際、企業への経済支援や経済対策はもちろんであるが、就職氷河期世代支援を目的とした公務員の採用を実施しているように、新卒者を対象にした公務員採用枠の拡大も期待したい。

新型コロナ休業支援金の周知徹底

最後に、新たな支援策ではないが、学生アルバイトも、事業主の協力がなくても、休業支援金・給付金をもらえることになっているが、十分浸透しておらず、政府予算の約6%しか執行されていない。

現状中小企業の労働者が対象になっているため、大企業のアルバイトも対象にするのに加え、期間の延長、そして、文部科学省も11月6日、休業支援金・給付金に関する情報を学生等へ周知徹底するべく、各都道府県や各都道府県教育委員会、各国公私立大学などへ依頼を出したが、制度の周知徹底を行ってもらいたい。

出典:文部科学省
出典:文部科学省