【2019年を振り返る】答責性の欠如、官僚機構の悲鳴、政治参加の多層化、日本政治3つの潮流

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

2020年の日本政治はどうなるのか。

7月に東京都知事選、秋頃には衆院選も予想され、東京五輪後の日本の方向性を定める重要な1年となるが、まずは、3つの重要な観点・事象から2019年を振り返ってみたい。

・答責性(アカウンタビリティ)の欠如

新元号、参院選、消費税増税、相次ぐ不祥事など、様々な出来事が起きた2019年。

政治の中枢である永田町を中心に見ると、安倍一強の「負の側面」が表面化した1年であった。

具体的には、安倍一強、強い官邸と弱い国会を背景にした、答責性(アカウンタビリティ)の欠如である。

アカウンタビリティは一般的に「説明責任」と訳されることが多いが、正確には、単に説明するだけではなく、責任者が責任を取ることまで含めた概念である。

1990年代の政治改革によって、勝者総取りの小選挙区制が導入され、 首相(官邸)の権限が強化されるようになったが、その分、責任者を明確にし、答責性を強化するのが改革の趣旨であった。

しかし、安倍政権では、アベノミクスの「成果」などは政治家が誇る一方で、公文書改ざんなどの不祥事が起きれば、政治ではなく行政側の責任に帰す、もしくは、責任の所在を曖昧にする態度が目立つ。

特に2019年の後半にはそうした場面が多く見られた。

臨時国会での「桜を見る会」の疑惑を巡っては、首相官邸では、安倍首相が「国会から求められれば、説明責任を果たすのは当然」と話す一方で、予算委員会を開かず、審議拒否。

(技術的にはほぼ確実に可能なのに)廃棄した招待者名簿の電子データの復元も「できない」と回答する。

はたまた、公選法違反などの疑惑が報じられた河井案里参議院議員と大臣を辞任した夫の河井克行衆議院議員は、「説明責任を果たす」としていたにもかかわらず、ずっと公の場から姿を消したままである。

これでは政治不信が高まる一方だ。

さらに、曖昧な回答が長続きすれば、その分国会やメディアなどのリソースがそこに費やされ、他の課題に割けなくなってしまうのも大きな問題である。

制度的にどう答責性を確保するか、議論を深めていく必要があるだろう(一つは、委員会を開く/開かないといった「日程闘争」をなくす、少数者調査権の導入などの改革を行い、国会を強化すべきである)。

また、根本的には野党が「弱すぎて」牽制が効いていない側面も大きく、制度的に野党をどう強化していくべきかも、議論すべきだ(日本が議院内閣制の範とするイギリスでは、公的資金を野党に配分する「ショート・マネー」があり、議会では、野党が自由に議題を設定できる「野党日」など、必然的に人的/資金的リソースが欠ける「野党のためのアファーマティブ・アクション」が導入されている)。

・官僚機構の悲鳴

一方、政治を支える官僚機構も限界を迎えつつある。

2019年8月、厚生労働省の働き方改革に取り組む若手チームが、業務・組織改革のための緊急提言を根本匠厚労大臣(当時)に提言。

内容は人事制度改革から国会改革まで多岐にわたり、その中では、現場の悲鳴の声も取り上げられている。

・ 「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」(大臣官房、係長級)

・ 「毎日いつ辞めようかと考えている。毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った。」(保険局、係長級)

・ 「家族を犠牲にすれば、仕事はできる」(社会・援護局、課長補佐級)

・ 「今後、家族の中での役割や責任が増えていく中で、帰宅時間が予測できない、そもそも毎日の帰宅時間が遅い、業務量をコントロールできない、将来の多忙度が予測できないという働き方は、体力や精神的にも継続することはできないと判断した」(退職者)

出典:厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言

近年、統計不正の問題なども起こっているが、大きな原因の一つが人手不足であり、従来の「削る」方向性を変えていかなければもうもたない状態になりつつある(なぜか日本は「大きな国家」というイメージを持つ人が多いが、国際比較をすると先進国で最も「公務員の少ない国」である)。

厚生労働省の過酷な労働環境が引き起こす「負のスパイラル」

○ このような過酷な労働環境は、さらなる悪循環を引き起こしている。厚生労働省においては、近年、毎年のように不祥事が継続して発生しているが、昨年に発覚した毎月勤労統計調査における不適切な取扱い事案についても、一昨年の裁量労働制データの不適切な比較事案についても、それぞれの調査報告では、不十分な人員体制による業務遂行・チェック体制の不備が、事案発生の理由の一つとして掲げられている。

出典:厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言

10月には台風が迫る中でも帰宅できない、国会対応の大変さ(異常さ)が大きな話題となったが、国会改革や人員の増加も含め、労働環境を早急に改善しなければ、政策立案や公的サービスの質が低下し、国民に大きな不利益を与えることになるだろう。

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・政治参加の多層化

統一地方選挙と参院選が重なる亥年となった2019年。

参院選の投票率は50%未満となり、特に若者の投票率は大幅に低下した。

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一方で、2019年のはじめに「徐々に広がりつつある「投票」以外の若者の政治参加。政策提言で社会を変える方法」という記事を書いたが、政治参加の多層化がさらに進んだ1年でもあった。

もちろん投票が重要であることは言うまでもないが、実際に社会に変化を及ぼすためには、政治家の構成や政策、世論が変わらなければならない。

そしてそれを変える手段は、数年に一回程度の選挙の時にしかできない投票だけではなく、他にも多く存在する。

ドイツやスウェーデンなどの欧州各国では、小学生の頃から社会を変える手段として、世論形成の仕方(メディアの活用や署名)やデモ、陳情の方法が教えられるが、日本でもようやくこうした手段が若年層にも浸透し、成功事例が着々と積み重なってきている。

特に、従来からあったような党派性の強い「倒閣運動」ではなく(最初は違っても結果そちらに流れていくパターンが多い)、あくまで課題解決にフォーカスした運動が活発化しているのが近年の特徴である。

署名やデモによる世論喚起

2019年は特にジェンダー関係の動きが活発な1年であった。

国が企業に求めるハラスメント対策には盛り込まれなかったものの、グラビア女優の石川優実さんが署名を立ち上げた#KuTooや、学生らが署名やデモで訴える就活ハラスメントは社会的なアジェンダとなっている。

議会への陳情

こうした動きは小学生や中学生にまで広がっている。

沖縄県・糸満市の西崎中学校では、生徒会が女子生徒の制服に関する校則の変更を求めた陳情書を学校側に提出、今年1月からスカートとズボンの着用を自由に選ぶことが可能になった。

また、東京都・板橋区では、小学生が公園やグラウンドの使用ルール改善を求めて議会に陳情、公園の利用可能時間が延長されるなどルール変更を勝ち取ることができた。

与党部会への参加

筆者が代表理事を務める日本若者協議会では参院選を中心に様々な政策提言を行い、数多くの提言が公約に反映されたが、大学入試の記述式延長に関しても、12月2日、与党・公明党の文部科学部会ワーキングチーム(部会長・浮島智子衆議院議員)に出席し、高校生が問題点を指摘、延期を訴えた。

結果、12月5日に公明党の斉藤鉄夫幹事長らが萩生田光一文科大臣に延期の検討を求め、延期が決定された。

大学入試改革について問題提起する高校生(写真・日本若者協議会)
大学入試改革について問題提起する高校生(写真・日本若者協議会)

◆記述式 公明の提言書 転機

(中略)

12月5日、党幹事長の斉藤鉄夫は文科省で萩生田に提言書を手渡し、記述式問題の導入について見直し・延期の検討を求めた。提言書は、党文部科学部会長の浮島智子がまとめた。浮島は11月19日以降、部会のワーキングチーム(WT)で関係者から意見を聞いていた。心を動かされたのは、12月2日のWTに招いた高校生の切実な意見だった。

 「結論を早く出してほしい」「地方の高校生の声を聞いてあげてください」

 浮島はその日のうちに提言書を書き上げた。初稿は曖昧な表現だったが、高校生の声を思い起こし、「ぼやっとした書きぶりでいいのか」と自らに言い聞かせた。修正後は「見直し・延期」を明確に打ち出した。

 斉藤から提言書を受け取った萩生田は「重く受け止めたい」と応じた。翌6日には首相官邸で安倍に会い、「記述式に関しても、これ以上改善が図れません。何らか決断しなければなりません」と伝えた。安倍は「任せるよ。受験生のことを考えるのが一番だよね」と理解を示した。

出典:2019.12.30読売新聞「[検証・大学共通テスト]民間試験延期「任せるよ」…首相の一言 文科相決断」

※太字は筆者

このように、従来は若者の政治参加=投票と見られてきたが、近年は徐々に多層化が進み、より影響力の強い、アジェンダ・セッティングや政策立案過程に若者が入りつつある。

今後は、より若者の声を社会に反映させるために、各党内の学生部・青年部の権限強化(意見の吸い上げ)、若い政治家を増やすことが大きな課題となるだろう。

そのためにも、現状25歳・30歳になっている被選挙権年齢を早急に引き下げるべきだ。

(ちなみにフィンランドで34歳の女性首相が誕生したが、フィンランドは女性に被選挙権を与えた世界で初めての国であり(1906年)、政治の中に参画してもらうためには被選挙権が非常に重要である)

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