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若年層ほど高い「政治家・国会に対する不信感」。どうすれば改善できるか?

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
若い世代ほど政治家を自分たちの代表だと「思わない」(出典:言論NPO)

非営利の民間シンクタンク「言論NPO」(工藤泰志代表)は11月13日、「日本の政治・民主主義に関する世論調査」の結果を発表した。

政治家を自分たちの代表だと思うかという問いに対し、「代表だと思わない」という見方が45%となり、「代表だと思う」(41.5%)を上回った。

さらに、政党や政治家に日本が直面する課題の解決を「期待できない」と考えている人は70.9%と7割を超えるなど、政治に対する国民の信頼の低さが浮き彫りになった。

こうした政治不信の傾向は20代、30代の若い現役世代ほど特に高い結果となっている。

政治家は自分たちの代表だと「思わない」(出典:言論NPO)
政治家は自分たちの代表だと「思わない」(出典:言論NPO)
政党・政治家に課題解決を「期待できない」(出典:言論NPO)
政党・政治家に課題解決を「期待できない」(出典:言論NPO)

この世論調査は2019年9月に、全国の18歳以上1000人を対象に訪問留置回収法で行われた。

圧倒的に足りていない政治に関する知識

この「政治不信が強い」調査結果自体は、従来から指摘されている傾向と大きく変わるものではなく、投票率の低下傾向などを見ても、違和感はない。

言論NPOの工藤代表らが記者会見で語ったように、「制度改革」と市民の「意識改革」を行わなければならないだろう。

「課題を考える努力を市民が放棄するのであれば、社会の安定と引き換えに自由や権利を犠牲にする監視社会、権威主義体制を選ぶしかない。それを望まないなら、意思を持った市民が選んだ代表が課題解決を進めるというサイクルを修復し、今の時代に合わせてアップデートする不断の努力が不可欠だ。世界ではその作業が始まっており、日本でも誰かが始めないといけない」

出典:「日本の政治・民主主義に関する世論調査」記者会見 報告

ただ、詳細を見て気になったのは、若者世代の「わからない」という回答の多さだ。

たとえば、「選挙で選ばれた現在の政治家を自らの代表だと思っていますか」という質問に対し、20代未満(=18歳、19歳)の45.8%が「わからない」と回答し、20代と30代でも、それぞれ28.4%、20.8%が「わからない」と答えている。

出典:言論NPO
出典:言論NPO

また、「現在の日本の民主主義の状況に満足していますか」という質問に対しても、20代未満の41.7%が「わからない」と回答し、20代の23.3%、30代の22.2%が「わからない」と答えている。

出典:言論NPO
出典:言論NPO

つまり、この調査結果からわかるのは、政治家や民主主義に対する考えどうこうの前に、政治に関する知識が全く足りていないということだ。

実際、筆者は「被選挙権年齢引き下げ」に関する全国キャンペーンで、(自発的にイベントに参加するような層ではない)全国の高校生・大学生と話す機会があったが、そもそも政治家がどういうことをしているのか、政治が普段の生活にどう関わっているのか、ほとんど知らない。

これの最大の原因は、さまざまなところで指摘しているが、現状の学校の授業(公民や主権者教育)が形式的な内容ばかりで、実態に即した内容を教えていないからである。

参考:10代の投票率は3分の1以下。主権者教育と政治報道を抜本的に見直さないと若者の投票率は上がらない(室橋祐貴)

また、テレビでも政治に関する報道番組は減っており、BS以外で、政治の専門家が出演している民放の番組はほとんどない。

もちろんテレビや学校の授業で扱われなければ、家族や友人と話す機会は少ない。

総務省が2016年12月に、全国の満18〜20歳を対象に行った「18歳選挙権に関する意識調査」 によると、家族と政治の話をすることが『ある(よくある+ときどきある)』と答えたのは36.0%、友人と政治の話をすることが『ある(よくある+ときどきある)』は26.0%であった。

家族と政治の話をする割合が36.0%というのは、2019年参議院選挙での10代の投票率31.33%とほとんど合致する。

つまり、こうした層は身近に政治の話があり、選挙に行っているが、ほとんどは日常的に政治の情報に触れることもなく、選挙にも行っていないということだ(選挙だけに限って言えば、高校に投票箱を用意し、半強制的に投票させることで18歳の投票率を上げることは可能だが、それにどんな意味があるのかはよく考えなければいけないだろう)。

政治不信の前に、まずこの政治に関する知識不足・情報伝達の問題を解消するのが喫緊の課題である。

「国会改革」が急務

次に大きな課題となっているのは、国会である。

政治家を自分たちの代表だと思わない理由として、もっとも多かったのは「政治家が有権者を意識するのは、選挙の時だけだから」という理由で、37.8%だったが、次に、「国会で真面目な議論が行われず、何をしているのか分からないから」という理由が19.8%で続く。

出典:言論NPO
出典:言論NPO

民主主義を機能させるために必要な改革としては、「議会/国会の活性化」が41.5%ともっとも多くなり、国会が「言論の府」として機能しているかという質問に対して、「思う」という人は9%で1割に満たないなど、国会に対する信頼の低さも浮き彫りになっている。

出典:言論NPO
出典:言論NPO
出典:言論NPO
出典:言論NPO

もちろん、(実際は各委員会で政策議論が行われているのに)マスコミがスキャンダルばかりを取り上げているのも大きな原因の一つだが、政治家もそれに乗じてテレビ向けのパフォーマンスを繰り返しているのは事実だろう。

国会に関しては、台風前夜の「国会待機」をきっかけに、官僚の深夜残業の原因として注目を集めているが、国会審議の活性化という意味でも「国会改革」が必要である。

参考:「簡潔な質問通告」で官僚の疲弊はさらに加速。改善するには与野党の協力が必須(室橋祐貴)

筆者が代表理事を務める日本若者協議会では、「国会改革」を促そうと各党に提言を申し入れ、議員と官僚関係者との意見交換会を開催しようとしているが(詳細)、現状の国会は、与党の事前審査制や党議拘束などを背景に、実質的な国会審議が行われておらず、内閣提出法案の修正率は1割にも満たない。

結果的に、(法案を廃案に追い込むための)「日程闘争」が中心となり、国民に政策議論が伝わりにくく、信頼も獲得できていない。

言論NPOでも議論されているが、これらを早急に見直し、法案修正の活性化や自由討議などを導入することで、国会をより活発な政策議論が行われる場所へと転換すべきである。

(北海道大学の吉田徹教授は)「法案の実質的な審議が難しい制度のもと、国会の論戦は単なるセレモニー的になり、メディアもその点をショーアップして取り上げる。そこに国会不信の原因があるのではないか」と語りました。

 そして、国会の議論に自分たちの声が反映されている、という信頼を国会が取り戻すには、一部議員が提案しているペーパーレス化のような小手先の改善でなく、こうした制度論にまで踏み込んだ改革が必要だ、と主張しました。

出典:日本でも「代表制民主主義を機能させる改革」 に取り組む必要性で一致

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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