消費税10%後の財政政策をどうすべきか?玉木雄一郎×落合貴之×足立康史×森信茂樹

「日本の財政政策」について議論した「ユース・カンファレンス2019」セッション5

2019年10月1日、消費税が10%へと上がり、軽減税率が導入された。

安倍晋三首相は7月の参議院選挙における党首討論で、「安倍政権でこれ以上引き上げることは全く考えていない」、「今後10年くらいは(10%以上に)上げる必要はない」と発言したが、今後も社会保障費は増え続け、赤字国債も増え続けることが予想される。

はたして、消費税10%後の財政政策をどうしていくべきなのか。

9月21日、日本若者協議会主催「ユース・カンファレンス2019」が開催され、国会議員と学者が「日本の財政政策」について議論を行なった。

セッション5「日本の財政政策・経済政策」

登壇者:

・玉木 雄一郎(衆議院議員、国民民主党代表)

・落合 貴之(立憲民主党 衆議院議員)

・足立 康史(日本維新の会 衆議院議員)

・森信 茂樹(中央大学法科大学院教授、東京財団政策研究所研究主幹)

ファシリテーター:室橋 祐貴(日本若者協議会代表理事、慶應義塾大学政策・メディア研究科修士1年)

出典:日本若者協議会「ユース・カンファレンス2019」

税は「公平性・中立性・簡素」が大原則

室橋祐貴(以下、室橋)

10月から消費税が10%に上がりますが、その後どうしていくべきだとお考えでしょうか?

玉木雄一郎議員(以下、玉木):

参議院選挙の時にも訴えましたが、この消費税増税には反対です。

いろんな理由がありますが、そもそもこれまでと一番異なるのは、複数税率

つまり、8%とか10%が混在していて、この制度は何が何でもやめた方がいいと思います。

10月1日に(消費税率が)上がる直前まで反対し続けようと思っているんですが(筆者注:イベント開催日は9月21日)、世界的にも反対の多い軽減税率を伴う消費増税をするのであれば、絶対にやらない方がいい。

経済政策の観点から言っても、これから米中の貿易戦争がより一層厳しくなっていく中で、10年単位で見ると、輸出に頼れない経済にこれからなっていくと思います。

そうするとやっぱり内需が鍵で、GDPの6割を占める消費をしっかり回さなければいけない経済になってくるので、消費にマイナスになることは、できるだけやらない方がいい。

ですから、財源も消費税の一本足打法ではなく、例えば法人税についても、国際的に下げ競争をしていますが、この前の大阪で行われたG20でむしろ議論すべきなのは、最低法人税率を国際的に合意することではないかと思います。

税財源についても様々検討していくべきだと思います。

もう一つ主張しているのは、子ども国債を発行したらいいと言っています。

日本は建設国債という、橋や道路を作るための国債発行はできることになっていますが、今一番未来に残さなければならない資産は人材だと思います。

公債発行対象経費をもう一度見直して、本当に必要な、借金で賄うべき支出と、しっかりとした安定財源を充てる支出を分けて、「ワイズスペンディング(賢い支出)」という言葉がありますが、「ワイズボロイング(賢く借りること)」も大事だと思いますので、そういった抜本的な見直しも行うべきだという考えです。

落合貴之議員(以下、落合):

今までの選挙でも、消費税増税の前に、もっとやるべきことがあるだろうと、訴えてまいりました。

年々、消費税を上げられる環境ではなくなってきていると思います。

消費が弱いというのがわかっているのに、消費に税金をかける率を上げようとしている。

どんどん格差が広がっていると言われているのに、逆進性の高い消費税をわざわざ上げようとしている。

それから色々調べてみると、世界各国消費税の納税額の計算の仕方が違っていて、今の日本の計算の仕方だと、中小企業に負担がかかりやすい仕組みになっている。

もう一つ、新たな問題として、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる国境を超えたデジタル企業がどんどん大きくなっています。

これは、アメリカも、フランスも、日本もそうですが、みんな経済が活性化すればするほど、GAFAに各国の富が吸い上げられていっている。

地球上のいくつかの民間企業にどんどん富が吸い上げられていって、雇用も賃金も上がらないし、税収も上がらない。

この問題には、先進国が協調して早く答えを出して、税の網をかけられるようにしないといけない、本当に大きな問題だと思います。

足立康史議員(以下、足立):

今政治が何で争っているかというと、増税、減税とか、あるいは、歳出拡大、歳出縮小という切り口を先ほどのプレゼンで紹介して頂きましたが(筆者注:このパネルディスカッションの前に学生から問題提起のプレゼンが行われた)、消費増税と消費減税で争っているんです。

10月1日から、自民党と公明党は10%に上げて、それに対して、れいわ新選組(以下、れいわ)が減税と言っている。

問題は、玉木さん、落合さんたちが、れいわの減税作戦に乗るのか、あるいは乗らずに我慢できるのか。

れいわはやっぱ人気があって、永田町は今れいわに注目している。

そのれいわが減税で突っ込んできた時に、どこまで我慢できるかという問題。

もちろん、我慢しなくて乗ってもいい。

じゃあ足立や維新はどうなのかというと、我々は先ほどの4つの軸はどうでもいいと思っている。

消費税を上げる上げないとか、消費税だけを議論しても意味がない。

法人税もあれば、所得税もあれば、資産課税、相続税もある。

僕たちは税制全般の抜本的な組み替えをしないといけないと思っています。

歳出については、給付付き税額控除という、今まで日本が導入したことのないような格差是正策を導入すべきだと、参院選の時に柱に掲げました。

増税、減税、歳出拡大、歳出縮小よりも、そもそも今の行政の仕組みが、バケツで言うと、穴が空いている状態なので、どれだけ水を貯めても漏れてしまっている。

僕らはバケツ自体を作り直す作業から始めなければ、増税しようと、減税をしようと、何をしようとダメだと言う立場です。

給付付き税額控除とは

税金から一定額を控除する減税で、課税額より控除額が大きいときにはその分を現金で給付する措置。例えば、納税額が10万円の人に15万円の給付付き税額控除を実施する場合には、差額の5万円が現金支給される。低所得者や子育て世帯への支援策としてカナダや英国で導入されている。

出典:日本経済新聞

森信茂樹氏(以下、森信):

私は元々財務省の主税局で課長を5年やりました。

特に3%から5%に消費税を引き上げる時の担当課長でしたから、全国津々浦々、消費税というものがどんなに良いものか、話してきました。

なぜ素晴らしいかと言うと、立場とかに関係なく、消費に応じて、(均等に)負担をすることになるからです。

そして今日本で一番問題なのは、将来不安なんです。

将来不安があるから、消費が伸びない。

ではなぜ将来不安があるかと言うと、社会保障の持続性に対する信頼がない。

なぜないかと言うと、結局は財源の問題に突き当たる。

年金が足りないとなれば、税率を上げるなりして、どっかから財源を持ってくるしかない。

だから財源の問題というのは、どうしても一緒に考えなければ政策として意味がない、

室橋:

先ほど足立さんから、減税に対して国民民主党や立憲民主党はどうするかという話がありましたが、玉木さんはどのようにお考えでしょうか?

玉木:

複数税率付き消費税増税は止めるべきだと、参院選でも訴えましたから、仮に上がれば、戻すように言うのが整合性が取れていると思います。

税というのは3つの原則があって、そもそも税金が好きな人はいない。ただ税がないと世の中が回らないので、嫌いなんだけど、税金は必要だから、「公平性・中立性・簡素」という3つの原則を定めている。これらを満たした税にしましょう、というのが大原則。

でも複数税率というのは、公平じゃないし、中立性もないし、何よりややこしくて簡素ではない。

だから絶対経済社会に悪影響を与えるので、我々はやめろという法案の提出を検討しています。

国民民主党・玉木雄一郎代表(撮影・日本若者協議会)
国民民主党・玉木雄一郎代表(撮影・日本若者協議会)

「セーフティネットからトランポリンへ」

足立:

三党合意ありますよね。

玉木代表は当時1期生だったので影響力はあまりなかったと思いますが、当時、低所得者対策として、3つのアイデアがありました。

軽減税率と給付付き税額控除(か総合合算制度)と簡素な給付措置。

今3つの中で選ぶとしたら、どれなんですか?

玉木:

給付付き税額控除ですね。

最初は(軽減税率は)なかったんですが、後から公明党さんにご理解を頂くために、軽減税率を3つの検討対象の一つに加えました。

それで最終的には軽減税率になっていったんですが、問題は他の手段について検討を経ることなく、いきなり軽減税率に突っ走っていったこと。

正直言うと、自民党の先生や、中には公明党の先生に「絶対やんない方がいいよ」と言うと、「おれもそう思うんだけど」とみんな言う。

ほとんどの政治家がダメだと思う政策がまさに通ろうとしているというのは、非常に怖いことで、ヨーロッパなどで軽減税率を入れている国があって、よく成功例と言うんだけど、彼らに必ず言われるのは、「Don’t follow us」と。

本当に大変だからやめた方がいいよと。

各国の関係者から山のように言われた。

足立:

だから、臨時国会でも色んな議論があると思うけど、単に上がった消費税を下げるべきだと言うしょうもない議論ではなくて、もっと違った議論をしないといけない。

今の日本の税制の問題は、捕捉ができていないこと。

税を払う個人や事業主とか、どの人がどれだけ儲けているのか、捕捉できていない。

社会保険料も含めて、徴税が完璧にできていない。

例えば、国税と社会保険庁、年金機構が持っているデータが揃ってなかったりする。

それから、所得と資産が捕捉できてないから、本当に困っている人が誰かがわからない

だから、マイナンバーで所得と資産をきちんと把握して、取るべきところからしっかり取って、本当に困っている人に手を差し伸べられるような仕組みが必要だと、選挙で訴えた。

その時に、所得税、法人税、消費税、資産課税を全て整理しながら再構築する。

特に消費税については安定した財源だから、社会保障などの基礎的サービスの財源にすべき。

玉木:

私もマイナンバーをしっかり使って、所得と資産を両方きちんと把握して、本当に正しい給付をしていくべきだと思います。

ミーンズテストという言葉もありますが、制度によって、資産だけを把握するとか、所得と資産両方を把握するとか、所得だけを基準に何か給付したりとか、混在している。

足立:

今後は、給付付き税額控除とマイナンバーが鍵になってこないといけない。

落合:

公平、公正な税制を実現していくためには給付付き税額控除は大変重要だと思います。

森信:

給付付き税額控除で一番わかりやすいのは、イギリスのブレア元首相(元労働党党首)が言った有名な言葉で、「セーフティネットからトランポリンへ」という言葉がある。

当時、(サッチャー政権などで)疲弊したイギリスの中で政権交代をするためには、かつての労働党のような大きな政党に戻る政策ではなく、新しい政策を打ち出さないといけないと考えた。

それが、「セーフティネットからトランポリンへ」。

セーフティネットというのは、市場経済から落ちて失業したりした人々を救う、生活保護などの社会保障。

そういったものを張り巡らさせていくと、どんどんお金がかかる。

そうではなく、トランポリンのような、上から落ちてきて、もう一回市場経済に押し戻していく新しい社会政策が必要だと。

これが、給付付き税額控除。

ベーシックインカムと違うのは、ベーシックインカムは無条件に給付しますが、給付付き税額控除はあくまで勤労が条件

東京財団政策研究所研究主幹・森信茂樹(撮影・日本若者協議会)
東京財団政策研究所研究主幹・森信茂樹(撮影・日本若者協議会)

なぜ軽減税率に決まったか

森信:

軽減税率に関して言うと、民主党の時に、私はアドバイザーをやっていましたが、なぜこうなったかというと、当時の状況は非常に複雑で、自民と民主が結構くっつくような状況になっていた。

そこに、突然公明党が割って入ってきて、その時の一つの柱が、軽減税率だったんです。

その後与党と野党が政権交代して、法律にはこう書いてあるんです。

次に定める基本的方向性によりそれらの具体化に向けてそれぞれ検討し、それぞれの結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならない。

消費課税については、消費税率の引上げを踏まえて、次に定めるとおり検討すること。

1 低所得者に配慮する観点から、番号法による番号制度の本格的な稼働及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理と併せて、総合合算制度、給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。

2 低所得者に配慮する観点から、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する。

3 税率引上げ等の消費税法改正規定の施行から、1と2の検討の結果に基づき導入する施策の実現までの間の暫定的・臨時的な措置として、社会保障の機能強化との関係も踏まえつつ、対象範囲、基準となる所得の考え方、財源の問題、執行面での対応の可能性等について検討を行い、簡素な給付措置を実施する。

出典:税制抜本改革法第7条

本当は、給付付き税額控除か軽減税率、どちらがいいか議論されて、初めて軽減税率になるはずだったんです。

ところがそうはならなかった。

なぜかというと、新聞が軽減税率の対象だったからです。

新聞が軽減税率に乗っかったために、新聞紙上では給付付き税額控除がタブーになった。

私は国会でも参考人に呼ばれて、その経緯をよく知っている。

玉木:

先ほど、税は「公平・中立・簡素」を満たさなきゃいけない、と言いました。

食料品は生活必需品だから安くして、困っている人を助けましょう、と思うかもしれません。

でも新聞がなぜか8%の軽減税率の対象になっている。

しかも、家に配られる宅配の新聞だけ8%になっていて、全く同じ内容の新聞を駅やコンビニで買ったら10%。

私のような電子版でほとんど読んでいる人間は、全く同じ紙面を読んでも10%。

知識を得ることは民主主義の基盤になるから、軽減税率にしている国があるけど、ではなぜ(日本では)雑誌や書籍は軽減税率(の対象)になっていないのか。

将来の社会保障給付が足りないから消費税を上げましょうと、新聞は社説に書きますが、ではなぜ新聞が軽減税率になっているかという自己批判を見たことがない。

こんなことを税で許してはならない。

年齢ではなく、支払い能力のある人に払ってもらう社会に

足立:

森信先生がおっしゃったように、給付付き税額控除はチャレンジのためのセーフティネットなんです。

単なるセーフティネットではダメなんです。

ぜひこれを実現していくために、国会でも論戦を深めていけたらと思います。

けど、一つだけ課題があるんです。

(給付付き税額控除を実現するためには)マイナンバーをちゃんと入れることが大前提。

ところがマイナンバーには共産党が猛反対している。

さらにいうと、自民党も微妙な顔をしている。

要は公平・公正な社会だと困る人たちなんです、彼らは。

公平・公正な社会を実現する最後のチャンスが今来ていると思うので、野党も頑張っていきたいと思います。

玉木:

足立さんが言っていることは過激なんだけど、冷静に聞くと正しい。

難しい言葉でいうと、担税力という言葉がある。

支払い能力のある人には(税を)払ってもらいましょう、と。

これからまさに皆さんのような若い世代が生きていく社会は、若い人たちがどんどん減っていく。

今までの税制とか社会というのは、基本的に、お年寄りは弱い立場で、働いている人は毎月給料が入ってきてお金がある人という前提で、様々な制度が設計されています。

ただ今年金だけでも、月50万円という人もいるし、麻生さん(麻生太郎)のようにいくらもらっているか知らなくても生きていける人はいる。

その一方で、毎月手取りで20万円ももらえない給料で、ずっと増えることもなく、10年間、20年間過ごしている若者もいる。

単に今までのように若い人は負担してください、高齢者は単に受益者ですよ、というのを超えた仕組みに大きく変えていかないと、若い人が苦しくなる

世代会計というのがあって、世代ごとに一生にわたって国から受け取る便益と、納税者として納税したり、保険料を払ったりする負担を相殺して計算すると、今の60代はだいたいプラス4000万円です。

私(50歳)がだいたいトントン世代で、今の20代がマイナス1200万円。

さらに若くなるとマイナス8000万円ぐらいになる。

つまり、今の60代と今生まれた子だと、単純に計算すると、(生まれた子の方が)1億2000万円ぐらい生涯にわたって損をしている。

これを学者の中では「財政的幼児虐待」と言っている人もいますが、若いから負担をする、働いているから負担をする、のではなくて、直接税、間接税、それぞれ全体的に見直していく必要があると思います。

これまでの自民党政治の問題点

足立:

社会保障費でさらに歳出が膨らんでいきますが、なぜこれだけ世代間の差が問題になっているかというと、もちろん人口的な変化は背景にありますが、もう一つ痛感しているのは、自民党政権がバラマキ過ぎたんです。

例えば、介護保険。

介護保険の要支援とか、今保険の対象からどんどん外していっていますが、元々カバーし過ぎていたんです。

自民党というのは「今」のことしか考えていない政党だから、安倍さん(安倍首相)は将来のことも少しは考えていますが、相対的に自民党というのはその時にできるだけ今いる有権者を最大限喜ばせる政党なんです。

僕らは、まだ生まれていない子どもたちまで視野に入れて、議論したいと思っている。

自民党は今のお年寄りに最大限サービスをする政党。

平成8年に介護保険制度を作った時に(平成8年に介護保険制度創設に関する連立与党3党(自社さ)政策合意、平成9年に介護保険法成立)、美味しい制度にしたから、今どんどん削っている。

そうじゃなくて、もっと持続可能な制度を設計し直さないといけない。

だから一回、医療保険はどうあるべきか、介護保険はどうあるべきか、基礎年金はどうしていくべきか、棚卸ししないといけない。

特にこれから基礎年金は、マクロ経済スライドの中でどんどん減っていく。

基礎年金は、給付付き税額控除で吸収した方がいいと思っているんですが、税制と社会保障と労働市場、この3つの三位一体改革をやるべきなのが今なんです。

立憲民主党・落合貴之衆議院議員(撮影・日本若者協議会)
立憲民主党・落合貴之衆議院議員(撮影・日本若者協議会)

落合:

それは賛成なんですが、増税すると景気にはマイナスになるので、景気という部分だけに焦点を当てて見ると、90年代後半以降は増税できる環境には基本的にはない。

だから本当は、給付のための財源を確保するためには、それまでの間に(90年代後半までに)、増税しなければならなかった。

にもかかわらず、今これだけお金がかかるのに、財源がないから、増税しますと言っても、景気循環を考えると縮小均衡になってしまう可能性が高い。

今いくらいい税の仕組みがあっても、増税したらうまくいくかわからない、手遅れな状況だと思うんです。

なぜこれまでにできなかったんですかね。

森信:

90年代以降、バブルが崩壊してから、普通は、(景気対策として)金融政策から入るんですが、日本は、財政政策をやったんです。2次補正、3次予算をやった。

MMTというのがありますが、まさに日本は90年代にやったんです。

MMTとは

現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)の頭文字をとった経済理論。通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる貨幣を自在に創出できるため、「財政赤字で国は破綻しない」と説く。主要国は巨額の債務を抱えるがインフラや医療保険などに財政資金をさらに投じるべきとの考えにつながる。

出典:日本経済新聞

ものすごい公共事業をやった。それから、小渕減税(99年度、所得税と住民税の減税)、法人減税をやった。

つまり、歳入を減らし、歳出を拡大する、MMTを90年代にやってきた。

それで借金が増えて、これ以上財政政策ができないとなってから、金融政策をやり始めた。

これは、世界的には逆なんです。

世界的には、まず金融政策で景気を調整する。

これまで、円高、公共事業、建設業、というワンパターンが形成されてきた。これが長期的にずっとあったんだと、私は思います。

玉木:

私も財務省にいたので、森信先生と同じ気持ちで社会、経済を見てきたんですが、今なかなか消費税を上げられない社会構造になってしまった気がするんです。

例えば、日本は賃金が上がらない国になってしまっている。

ほとんどの先進国は上がっているんですが、1996年から1997年ぐらいが、物価の上昇を加味したいわゆる実質賃金がピークで、それからどんどん落ちている。

労働者の実質賃金が減っているのは(先進国で)日本だけです。

それなのに、増税してますます賃金が上がらないという悪循環になっていて、ここを突破するには、金融、財政政策をフル活用するしかないと思っているんです。

金融政策は今やっていますが、財政政策は新しい形に変えていかなければいけないと思っています。

公共事業も悪くないんですが、将来投資のようなものに変えていかなければいけない。

つまり、将来の税収増と人口増につながる分野は借金をしてやったらいいと思う。

今世界的に低金利になっているので、これを生かして、この10年間、もう一度教育と科学技術への投資を徹底的にやる。

潜在成長率という言葉がありますが、本当に実力ベースでどれだけ成長力があるのか示す数字ですが、ほとんど上がっていない。

経済成長は、どんだけの人口がいて、どんだけのお金を入れて、どれだけイノベーションが起きるかで決まるので、その3番目のイノベーションのところが日本は全然起きていない。

昭和の一番最後の予算と、平成の一番最後、この30年間の予算を比べると、予算規模は1.7倍になっているんですが、その中で年金医療介護の国庫負担分は約3.3倍になっていて、借金返しの国債発行が約2倍です。

この中で、昭和の一番最後の、教育と科学技術の予算がだいたい5兆円です。

それから30年経って、平成の最後の教育と科学技術の予算がだいたい5兆円で、全く増えていない。

税収も増えていない。

これからさらにナレッジソサエティ(知識社会)が進む中で、頭脳が経済成長、富の源泉になっていくんですよ。

やっぱり「人づくりなくして国づくりなし」だから、徹底的にここにお金を入れないといけないんだけど、社会保障の伸びがあるので、他に回す余裕がありません、とよく言われる。

と言いながら私も30年間やってきたんですが、反省していて、借金をしてでも今すぐ教育と科学技術のお金をドンと増やして、将来投資をやらないと、今後日本は急激に衰える

政策の効果を科学的に把握する仕組みを

足立:

僕も玉木さんに賛成で、先ほど4つの軸が意味ないと言ったのは、増税減税も意味がないんだけど、歳出拡大、歳出縮小も意味がないんですよ。

大事なことは、歳出の中身なんです。

お金は使ったら良いんだけど、投資効率が良いところに使わないといけない。

教育というのは、皆さんに投資をしたら、皆さんが生産をして、社会に戻してくれるから、投資効率が良いわけです。

だけど、投資効率が悪いところに、お金をジャブジャブ入れてきたのが今までの政治。

これからは投資効率にもっと敏感になって、コストベネフィットの割合が良いものをやっていくのが大事だと思います。

今日、チャレンジのためのセーフティネットと言いましたが、やっぱり競争は必要なんです。

その時に、結果平等じゃダメなんです。

玉木さんが教育投資と言いましたが、なぜ教育かと言うと、結果平等じゃなくて、機会平等だからなんです。

どんな環境に生まれても、ちゃんと機会を与えられるという、意思なんです。

そういう政治の意思が、教育投資という形になっている。

日本維新の会・足立康史衆議院議員(撮影・日本若者協議会)
日本維新の会・足立康史衆議院議員(撮影・日本若者協議会)

玉木:

京都大学の柴田悠准教授が政策効果の本を出していますが、例えば、1兆円出した時に、どれぐらい波及効果があるか、そういうのを我々は計算するんですが、かつては公共事業も、何もないところに道路を作れば効果があったんですが、今は公共事業の経済波及効果が極めて落ちています。

それに対して教育、とりわけ就学前教育、小学校に入る前の教育の効果が大きいと、エビデンスをもとにした調査結果がある。

これを我々は客観的に分析することが必要で、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)というのが最近流行っていますが、ある予算を投じた時に、一体どういう効果があるのか、経済的、社会的な効果を測って、効果があったものには予算を出し続けて、出なかったものはやめる。

陳情の多さとか名刺の多さで決めるような、自民党型の政治を変えていくことが大事なんです。

教育が大事と言いましたが、教育でも教育効果が出ないものもあるかもしれません。

税金なり借金で投じたお金に効果があったのか、科学的に把握する仕組みをきちんと作ることが必要だと思います。

*若者とのQ&Aなど、全編を見たい方はニコニコ動画でご覧ください。

https://live.nicovideo.jp/gate/lv321911225