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「こわい」「また振られる」と恋愛に臆病な独身者が多い中、結婚相談所や仲人はAIに仕事を奪われるのか

村上れ以子成婚率東日本トップの仲人士(結婚相談所運営) 元新聞記者
(提供:Panther Media/アフロイメージマート)

政府が来年度(2021年度)からAI(人工知能)を活用した自治体の婚活支援事業を後押しすることを、先日、読売新聞が報じました。

年齢や年収などの希望条件に合わなくても、相性の良い見合い相手をAIで選び出すことで、婚姻数を増やし、少子化を食い止める狙いとのこと。

少子化対策の一環で、婚姻数を増やすための対策だそうです。

政府は、AIシステムを導入・運用する自治体に、必要経費の3分の2を補助する。内閣府が来年度予算の概算要求に20億円を計上した。少子化問題に取り組む自治体に支給する「地域少子化対策重点推進交付金」の対象事業に、AIを活用した婚活支援を指定する予定だ。

【独自】政府がAI婚活を後押し、希望合わなくても「自分に好意抱く可能性ある人」提案(読売新聞オンライン)

https://news.yahoo.co.jp/articles/78dd17187e3606f50a44c728516505004fab6a81

自治体が行うAIを使った婚活支援を、国が後押しするという内容で、少なからず結婚相談や婚活アプリを手掛ける業界に影響を与えるでしょう。

ただ、仲人として筆者は、若干の不安材料があると感じますので、解説したいと思います。

現状、婚活にAIは使われているのか

民間の婚活業界には多くの婚活アプリや婚活エージェントがあり、ここのところ、各社が次々とAIを導入しています。

例えばパートナーエージェントは2018年6月より、独自に開発した人工知能エンジンを婚活支援サービスのマッチングに導入。

日本結婚相談所連盟(IBJ)は、2019年2月に最新AIのマッチングシステムをリリースし、会員の趣味や嗜好、活動履歴などのデータを分析して、結果を仲人に紹介しています。

行政では、2014年からビッグデータを活用してカップリング率を飛躍的に高めている愛媛県、2018年度に約1500万円を投じてAIシステムを整備した埼玉県など、前出の読売新聞の記事にも書かれていますが10を超す県がAIによるシステムを導入しています。

注意しなければいけないのは、使われているのがAIなのか、コンピューターで行うマッチング機能なのか。

本当にAIを利用しているのなら、学習や推論、判断など様々な情報をインプットしロジック化されているはずなので、相応の効果は期待できるでしょう。

「不安」「こわい」「また振られるのでは」…こんなにも自信がない独身者たちに、AIの提案は届くのか?

危惧すべき点は、AIがインプットしロジック化する情報は、あくまで「紹介」のためのものということです。

そして、成婚するためには「紹介」も重要ですが、それ以上に大事なことがあるのです。

興味深い調査をご紹介します。

内閣府HP 平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書より抜粋(PDF)https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h26/zentai-pdf/pdf/2-2-2-1.pdf

内閣府のホームページにある平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」の中で、交際への不安を調査するため「恋人として交際する上での不安は何ですか。当てはまるものを全てお選びください」と質問したところ、「自分は魅力がないのではないかと思う」「自分が恋愛感情を抱くことができるのか不安だ」が1位の「そもそも出会いの場所がない」に次ぐ2位、3位なのです。

他にも「こわい」「また振られるのではないか」などの言葉が並びます。

これは自己肯定感の低さをあらわしているのではないでしょうか。

仲人としての経験から申し上げると、どんなに相性がいい相手を紹介しても、どれだけ価値観が近い人と出会っても、婚活するご自身の自己肯定感が低いままでは、成婚につながりにくいものです。

ですから筆者は、結婚を希望する独身者とお会いするときは、自己肯定感をどの程度お持ちか、を知るための質問を数多くさせていただき、自己肯定感を高めるためのお話をします。

結局、結婚するためには【相手の条件や相手との相性など外的要素よりも、内的要素のほうが重要】なのです。

少しかみ砕いていうと、自分の中で「自分は結婚したい、結婚していいんだ」と思えない人は、どんな相手と出会ったとしても、結婚には至らないわけです。

自分で自分の結婚を否定しているわけですからね。

埼玉県が婚活支援した中で2019年度成婚数は38組、うち過半数の21組がAIが提案したカップル…って、物足りなくない? AI以外に成婚に必要なこととは

果たしてAIが、婚活する独身者の自己肯定感を高めることができるのか。

もしできたなら、結婚相談所や仲人の出番はなくなり、仕事が奪われるという事態となることでしょう。

でも、現状はそうではなさそうです。

前出の読売新聞の記事に、埼玉県が婚活支援した中で2019年度成婚数は38組、うち過半数の21組がAIが提案したカップルとあります。少し物足りない数字ではないでしょうか。

つまり、AIがどれだけ優れた提案をしようとも、婚活する独身者にその提案に乗るだけの“準備”ができていなければ、成果につながりにくい、ということだと思われます。

AIと同じこと、つまりただマッチングさせるだけの婚活でなく、婚活する独身者の自己肯定感やモチベーションを上げたり、気持ちに寄り添う結婚相談所や仲人が淘汰されることはなさそうです。

AIでの婚活は、より相性の合う、価値観が近い人と会うために、とても役立つでしょう。

あとは、行政の担当者や、行政から委託されたボランティア仲人のような立場の方々が、婚活する独身者の自己肯定感やモチベーションを上げ続け、気持ちに寄り添うことができるのか。

本気で婚姻数を増やすことを考えるのなら、AIと行政の力だけでなく、自己肯定感やモチベーションを上げ続け、気持ちに寄り添ってきたプロフェッショナル(実績ある結婚相談所や仲人、婚活カウンセラーや心理カウンセラーなど)の力も必要だと考えます。

成婚率東日本トップの仲人士(結婚相談所運営) 元新聞記者

キャリア5年で成婚数、成婚率とも東日本1位仲人士に。17年間のスポーツ担当記者時代に取材した国内外トップスポーツ選手・コーチの必勝ノウハウを婚活にいかし、難しいといわれる30代・40代・50代の中高年と親の婚活で、通常の8倍の割合で会員を成婚に導く。慶應義塾大法学部政治学科卒業。既婚、二児の母で、趣味は子どものスポーツ応援。

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