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少子化が少子化を加速させるメカニズム~仲人が見る婚活のリアルな現場から

村上れ以子成婚率東日本トップの仲人士(結婚相談所運営) 元新聞記者
厚生労働省「人口動態統計」より

親御さんがお子さんの婚活を阻む現状は、仲人として婚活の現場を見る限り、少子化による親世代の不安や寂しさが原因のひとつのように思えます。

その不安や寂しさから、意識的か無意識か、子どもの結婚や婚活に口を出したり妨害するケースが見られます。

実例を挙げてみます。

◆実例1◆ある30代女性のケース

彼女は色白のスレンダー美人で聡明な女性です。

最近まで、40代男性と婚約していたのですが、残念ながら結婚にはいたらずに婚約解消となりました。

「彼のお母さんがいらっしゃる限り、私でなくても、彼は結婚は難しいと思います」

一度は結婚を考えた方との婚約解消は悲しいことでしたが、すでに吹っ切れた様子で、事情を話してくださいました。

彼の父親は他界して、お母様と彼の2人暮らし。

あれ? と思うことは、無事に家族の顔合わせを済ませた後に起きたそうです。

「スルメを持って行かないと!」

彼の母親は、彼女の実家まで結納の品などを持ってきたそうです。

婚約中の2人の間では、「結納はしないで家族同士の顔合わせの食事会でいいよね」と話していたはずなのに。

違和感は続きます。

結婚式の日取りや時間や場所も、母親の考えに逆らえない彼。

結婚して新居を構えることを良しとしない母親の意見を彼女に言い出せず、新居決定をズルズルと先延ばしに・・・。

そんな彼を見て、彼女は

「結婚しても言いなりなんだろうな、結婚なんてとても無理」

と考えるようになり、結婚への雲行きが怪しく・・・。

最終的に、彼女に破談の連絡をしてきたのは、彼ではなく、母親だったそうです。

「彼のお母さんの気持ちも、わからなくはないんです。

たよりにしていた息子が自分から離れていってしまうのは60代のお母さんにとっては寂しかったんだと思います。

表面上は祝福してくれたんですけどね、実際には彼が何かを選択する余地を与えなかった・・・」

◆実例2◆あるアラフォー女性のケース

クリッとした瞳がかわいらしい、年齢よりかなり若く見える女性です。

気配り上手な彼女はお仕事も順調で、忙しくしているうちに、気付いたらアラフォー・・・。

子どもを考えると今がラストチャンスと一念発起、忙しい中、パーティーや紹介で婚活を始めたそうです。

華やかでモテる雰囲気の彼女なのですが、今は婚活が憂鬱なそうです。

それは、自身の母親に起因していました。

パーティーが終わり、家に戻ると、「いい人いたの?」「どんな人がいたの?」など母親が根掘り葉掘り彼女に聞くそうです。

「いい人がいた」「楽しかった」「いまいちだった」・・・

彼女がどんな答えをしても、母親のコメントはいつも同じ。

「そんなパーティーで出会えるわけがないって、知り合いの方から聞いたたわよ。

婚活なんかやめて、独りでも一生食べていける資格でも取りなさい!」

彼女はため息まじりに吐露しました。

「小さなコミュニティーの中の常識が、母の全てなんです。

ネガティブなことを言われているうちに、本当に私は結婚できないんじゃないか、って思ってきてしまって・・・」

老いを感じた親世代が子どもを縛る現実

グラフは「出生数及び合計特殊出生率(※)の年次推移」(内閣府 平成25年版 少子化社会対策白書より)です。

(※)合計特殊出生率は、出産可能年齢(15~49歳)の女性に限定し、各年齢ごとの出生率を足し合わせ、一人の女性が生涯、何人の子供を産むのかを推計したもの。

1947年には4.54、1948年は4.40、1949年は4.32と、第一次ベビーブームには4以上あった合計特殊出生率も、1975年(1.91)に2を割り込んで以降、2以上に回復する兆しはありません。

1975年といえば、その年に生まれた赤ちゃんは今年40歳!

単純に考えると、40歳以下のアラフォー世代は両親を、2人未満の子どもで世話する、ということになります。

かつては子どもが6人7人・・・という家族も少なからずあり、大家族だから、子どもが結婚しても、まだ家には多くの子どもがいて、一番下が巣立つ頃には上の子どもが孫を連れてくるという好循環が生まれていました。

親が子どもの独立を阻止する暇も必要もない時代だったと思います。

でも今の50~60代は、子どもが1人や2人という人のほうが多く、その子どもたちも晩婚になっています。

親は、自身の老いを感じはじめた頃、手塩にかけて育てた子どもに「結婚」という形で独立されるわけです。

親世代は「親世代だけ残されることへの寂しさ」と、「自分の老後が不安」だから、子どもを手元においておきたいと思うわけです。

実際、実例1の女性は、彼から「母に、老後の世話はたのんだと言われているから」と言われたそうです。

こういう例は、婚活の現場ではよく聞く話です。

少子化が少子化を加速させるメカニズム

親が子どもの婚活や結婚を阻止する理由は、

・健康や老いなど高齢者が抱える不安

だけとは限りません。

・経済的不安

・変化への抵抗

・親自身のわがまま

・子どもへの支配欲(過保護、過剰関与、子ども扱いなど)

など、様々な要因があるでしょう。

どちらにしても、少子化で高齢者が頼る子どもの数が減っている現状が、親の不安や様々な感情を生み、子ども世代の婚活や結婚を阻む形で、さらなる少子化に向かって世の中を突き動かしている気がしてなりません。

親世代の不安や寂しさが少しでも少なくなるような行政対策も、広い意味での「少子化対策」になると、私は考えています。

アラフォー独身の子を持つ親世代は不安より未来の幸せを考えて子離れを!

親子関係は幼少時から培われてきた濃い関係なだけに、力関係を急に変えるのはとても難しいでしょう。

特に、子ども側から関係を変える行動をとることは、勇気もパワーも必要です。

だからこそ、親は絶対に、親の考えで子どもを縛るべきではありません。

子どもの幸せは子ども自身がつかむもの。

アラフォーで独身のお子さんを持つ、子離れがまだの親世代は、今からでも決して遅くはないので、子離れしてほしく思います。

子ども世代は決して、老いた親の世話を嫌がっているわけではなく、新しい家族という違った形の幸せを持ってきてくれるのですから。

今のアラフォー世代が直面している、親子関係が婚活や結婚を阻む状況から「少子化が少子化を加速させるメカニズム」をご紹介させていただきました。

成婚率東日本トップの仲人士(結婚相談所運営) 元新聞記者

キャリア5年で成婚数、成婚率とも東日本1位仲人士に。17年間のスポーツ担当記者時代に取材した国内外トップスポーツ選手・コーチの必勝ノウハウを婚活にいかし、難しいといわれる30代・40代・50代の中高年と親の婚活で、通常の8倍の割合で会員を成婚に導く。慶應義塾大法学部政治学科卒業。既婚、二児の母で、趣味は子どものスポーツ応援。

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