ラグビー日本代表強化の切り札。スーパーラグビー参戦意思表明へ

日本代表は、5月25日、国立競技場で行われたアジア五カ国対抗で香港代表を破り、2015年ラグビーワールドカップ(RWC2015)アジア代表の座を勝ち取った。エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、「次の目標は、RWC2015で決勝トーナメント進出(トップ8)です。それに向かって、すべての準備をしていきたい」と語った。

日本代表は過去7度のRWCに出場しているが、すべて一次リーグで敗退。まだ1勝しかあげていない。そんなチームが、なぜ一足飛びにベスト8を目指すのかと言えば、2019年、日本での開催が決まっているRWCで世界の強豪国と互角に戦う実力を身に着けるためだ。不甲斐ない代表チームでは大会は盛り上がらないし、大会後のラグビー普及を考えても、日本代表の活躍が不可欠なのだ。

世界でも屈指の名将であるエディー・ジョーンズHCが就任した3年前から、日本代表強化は一気に進んだ。肉体改造に着手し、フィットネスも向上した。強いスクラムは今では日本代表の武器になっている。現在の世界ランキングは13位だが、トップ10の国に対しても、一発勝負であれば勝つ可能性を感じるまでになり、ウェールズ代表、ニュージーランド代表、スコットランド代表など格上のチームとも頻繁に試合が組めるようになった。さらなる強化環境を整えるため、日本ラグビー協会が目指すのが「スーパーラグビー」への参戦である。

世界最高峰のプロリーグである「スーパーラグビー」は、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカという南半球の三強国から5チームずつが参加して、毎年2月から8月にかけて行われている。日本でもスポーツ専門局のJSPORTSが放送しており、世界的に人気の高いリーグだ。イングランド、フランスなどのプロリーグは、サッカーと同じように単独のクラブが参加するスタイルなのだが、南半球三カ国のプロリーグは違う。各国ラグビー協会がハンドリングし、主要な地域ラグビー協会が選手と契約をして期間限定のプロクラブを編成するものだ。関東ラグビー協会が優秀な選手を集めてプロクラブを持ち、スポンサーを募って運営するようなイメージである。

このスーパーラグビーを運営するSANZAR(既述の三カ国ラグビー協会合同の組織)が、2016年から参加チームを18にする拡大案を発表。内訳は、ニュージーランドとオーストラリアは現行通りの5チームずつ。南アフリカを6チームに増やし、アルゼンチンから1チームを加えるところまでは決定。そして、もうひとつの参加チームを募っていた。

参加希望のチームはSANZARに対し、6月初旬に意思表明をする必要があったため、日本協会も手を上げることになった。今後、財務的に可能かどうか、トップリーグなど選手所属チームへの補償問題など課題を検討。8月15日頃が正式な申請書提出期限のため、7月下旬の日本協会理事会に可否を諮る。9月には参加チームが決定される。日本が参加する場合は、南アフリカ・カンファレンスに入るので移動距離など現実的な問題も横たわるが、日本代表の岩渕健輔GMは、「今以上の強化をしようとすれば、レギュラーの大会に参加するしかない」とスーパーラグビー参戦への意気込みを語る。

スーパーラグビーの三カ国、イングランド、フランスなどの強豪国には、それぞれ国代表レベルとそん色のないプロリーグがあり、強豪国同士の国代表選手権もある。しかし、日本代表選手達は、田中史朗、堀江翔太ら4名がスーパーラグビーのチームに所属しているのみ。世界トップ10以上の国とは、年に2、3度の対戦機会しかなく、世界のトップ国に追いつくために必要な試合経験が足りない。だからこそのスーパーラグビー参戦である。日本協会所属チームが他国のプロリーグに参加するというのは過去に例がないが、日本代表強化の必要性は誰もが認識しており、日本協会の理事会(5月26日)でも参加表明のところまでは了承を得た。矢部達三専務理事は、チーム編成について、チーム名などは未定ながら「日本代表選手、今後、選ばれる可能性のある選手が軸になるでしょう。そうでなければ意味がない」と語った。

参加が決まれば、2016年からは国代表戦以外に十数試合の世界トップレベルの試合が組めることになり、選手の経験値は飛躍的に高まる。RWC2019に向けて、3年間、スーパーラグビーで戦えるか、従来通りの国代表戦で強化を図るのかでは、レベルアップのスピードに大きな差が出てしまう。シンガポール、香港が参加表明をすると噂されており、日本の立候補で即決定というわけにはいかないが、まずは、財務的な課題をクリアして、正式な申請書提出にこぎつけてもらいたい。