ラグビー日本代表完敗。オールブラックス戦で見えたものとは

世界最強のオールブラックスに対し、勝利を目指して挑んだ日本代表だったが、最後の猛攻もむなしくノートライに終わった。スコアは、6-54。落胆もしないが、すっきりもしない、そんな内容だった気がする。しかし、1987年から日本代表を取材してきた身としては、スクラム、ラインアウトでオールブラックスのボールを奪うなど、堂々たるファイトを繰り広げる日本代表に感動を覚えたのも正直なところである。日本の猛攻に大声援を送る観客の熱さにも胸を打たれた。

もちろん、現在の日本代表の目標は世界トップ10入りであり、そんな感慨にふけっている場合ではないことは分かっている。オールブラックス戦終了後の選手達からも、「もっとやれたはず」という表情がみてとれた。若手主体とはいえ、ラグビー王国のトップ選手と身体をぶつけたからこそ分かる世界との距離は、今後の日本代表強化に生かされるだろう。

スクラムについては序盤では押す場面も見られたが、次第にオールブラックスに対応された。この件について、日本代表PR三上正貴は言っていた。「向こうが日本の低さに慣れたこともあると思いますが、日本が低いとスクラムが落ちるので、レフリーに高くするように言われたのがきつかったです。それで食い込まれたのも何度かありました」。これは、スクラム最前列の身長が強豪国に比べると10センチほど低い日本代表にとっては非常に難しい問題である。スクラムが崩れるのを防ぎたいレフリーは、どうしても頭の位置を合わせたがる。だが、どうして小さな選手が大きな選手に合わせなければならないのか。レフリーと話し合いながら、低さを認めさせていかなくてはいけない。小さな日本は低いスクラムを組むしかないのだから。

攻撃面は常に圧力を受け、もどかしいものだった。FB五郎丸歩も、「もっとできるのにと思い続ける80分間でした」と話す。「ブレイクダウン(ボール争奪局面)で人数がかかってしまって、シェイプ(攻撃の形)が作れなかったです」。オールブラックスの接点の圧力に少人数では対応できず、必然的に攻撃に割く人数が減った。その結果、ボール保持者が孤立し、ターンオーバーを許したということになる。

日本の失トライに、相手ハイパントのキャッチミスが2度あった。これはオールブラックスが得意とするトライの形。この点について、元日本代表FL野澤武史さん(慶応大→神戸製鋼)の解説をまとめた文を公式プログラムに執筆した。要約してご紹介したい。『現在のオールブラックスは、世界で一番ディフェンスの優れたチームだと思います。一方で、一試合に30本前後のフィールド・キック(プレースキック、ドロップキックは含まず)を使うキックの非常に多いチームでもあります。その蹴り合いの中で、相手がミスしたボールを拾ったり、相手から奪ったりして、一気にトライを獲るのです』。もう一つ、こんな指摘もある。『オールブラックスの特徴を言うとき、まず言わなければいけないのは運動強度の高さです。GPSを使っての主な測定データの中に、ハイインテンシティ・ランニング(高強度のラン、ほぼトップスピード)があります。オールブラックスは、この割合が15%くらいある。速いスピードで動き続けるわけです。また、1分間の加速や、コンタクト回数の数値も優れています。走って、タックルして、ボールを奪い合って、また走る。これぞ「ラグビー」という動きをいたるところで繰り返しているのです』。

オールブラックスは何も変わったことをしていない。いつも通り、彼ららしく、必要な場所で、ひたすら速いスピードで動き続けていた。日本ボールを奪えば、間髪入れずに素早いパスで広いスペースにボールを送り、あわてて上がってきた防御ラインの裏をついて正確なキックを蹴り、爆発的なスピードを持つ選手が追いかけてトライを奪った。けっして偶発的なものではなく、準備されたプレーなのだ。最後の日本のトライチャンスを止めたリッチー・マコウは、当然のごとく「危ないスペースを埋めただけ」と語った。

日本代表の先発LO伊藤鐘史は、日本代表とオールブラックスの違いを説明した。「オールブラックスはプレーに一貫性がありました。最初から最後までスキルレベルが変わらない。日本が疲れてくるのを待っているかのようでした」。重い指摘である。日本代表がオールブラックスと互角の勝負ができたのは、約20分。プレーメイカーの立川理道の負傷退場などアクシデントもあったが、疲れがでてくるとプレーの精度も落ちた。手応えはあったが、やるべきことが果てしなく多いことも痛感する、オールブラックスとの戦いだった。