ラグビー日本代表、世界王者オールブラックスへの挑戦

10月28日、ニュージーランド代表オールブラックスが来日した。成田空港には熱心なファンが駆けつけ、過去の海外ラグビーチーム来日とはまったく違う注目度の高さを見せつけた。世界王者に日本代表の力がどこまで通じるのか、いま、日本のラグビーファンはオールブラックスとの戦いに、不安と期待の両方をもって胸を高鳴らせている。11月2日、秩父宮ラグビー場のチケットはすでに売り切れているが、スカパー、ケーブルテレビなどで視聴可能のスポーツ専門局「JSPORTS」が生中継。地上波でも日本テレビがキックオフの1時間遅れながら中継する。

オールブラックスは、2011年のラグビーワールドカップで優勝し、その後も破竹の勢いで勝ち続ける世界最強軍団である。日本代表と対戦するために来日するのは1987年以来26年ぶりだが、2000年11月のフランス・イタリア遠征の前に来日。11月3日、秩父宮ラグビー場でNZ出身選手を中心に結成されたパシフィック・バーバリアンズとユニセフチャリティマッチとして対戦した。実はこの時期、日本代表も、欧州遠征でフランスA、アイルランドU23、アイルランド代表と戦っていた。その留守中の来日だったのである。その後は、2009年にオーストラリア代表との定期戦を日本の国立競技場で行っている。

この秋、オールブラックスは、日本、欧州遠征を組んだ。日本代表戦のあとは、世界ランキング5位のフランス、3位イングランド、8位アイルランドとの対戦だ(日本は15位)。来日メンバーは日本を経由せずにフランスへ向かう9名を除き、27名。おそらく来ないだろうと言われていたカリスマキャプテンのリッチー・マコウ、世界最高のプレーメイカーと言われるダン・カーターという二枚看板もやって来た。当初、日本での試合は、「次世代のリーダーに経験を積ませる場」と言われていたのだが、最終的には試合経験の足りない選手の試運転も兼ねることになり、怪我を抱えて試合経験が不足していたマコウ、カーターも日本戦に出場するようだ。世界最優秀選手賞を3度獲得したマコウのプレーを見られるのは、日本のファンにとっては嬉しい限りだろう。カーターは、「日本代表戦はツアーのスタートとなる非常に大事な試合だと考えている」と、日本の報道陣にコメントした。

日本代表は、エディー・ジョーンズヘッドコーチが脳梗塞で入院するアクシデントがあったが、幸い手足に不自由さは残るものの順調に回復しているという。頭のほうもクリアで病室からメールでスタッフに指示を頻繁に飛ばしているとか。代行でヘッドコーチを務めるスコット・ワイズマンテルは、「先手をとって仕掛け、世界を驚かせたい」と意気込む。廣瀬俊朗キャプテンによれば、エディー不在での初練習(28日)には、どこか違和感があったそうだ。しかし、29日は「きょうは、自分達の練習が取り戻せて、ほっとしています」と語った。ジョーンズHCは、良いプレー、悪いプレーを常に的確に指摘するが、不在の今は、選手達自身がその判断をしていかなくてはいけない。チーム力が一回り大きくなる機会ととらえて成長を期待したい。

世界最強チームに挑む日本代表の立場に立って今回のオールブラックスのメンバーを見てみると、日本にも十分につけ入る隙がある。抜群の運動量で現在世界最高のNO8と呼ばれ、いまやマコウ以上の存在感があるキアラン・リード、そして、オールブラックスの得意技であるカウンターアタックの要イズラエル・ダグ(FB)が来日していないのだ。もっと言えば、キャップ数104のPRトニー・ウッドコク、202センチの長身で空中戦に強く走力のあるLOサム・ホワイトロック、爆発的な突進力を持つWTBジュリアン・サヴェアも来ていない。それでも大きな戦力ダウンを感じないのがオールブラックスの常勝軍団たるゆえんだが、危機管理能力が高く、相手のトライチャンスの芽を摘むリードと、卓越したランニングスキルで防御を切り裂くダグという、攻守のキーマンがいないのは日本にとっては好都合。防御力と、カウンターアタックの威力は少し落ちる。日本の連続攻撃がトライに至るチャンスも増えるはずだ。

しかし、日本代表にも不安材料がある。SO立川理道とCTBクレイグ・ウイングがケガを抱えていることだ。立川はトップリーグ第7節(10月27日)に膝を痛めたため、29日現在、通常の練習ができていない。6月のウェールズ代表戦で勝利の立役者となった立川とウィングが出場できないとなると攻守に不安が残る。メンバー発表は10月31日、まずはその編成に注目である。