ラグビー愛好家たちの危機感。2019年ワールドカップ日本開催まで、あと6年

3月17日、東京港区の表参道で開催されたアイルランドのお祭り「セント・パトリックス・デー・パレード東京2013」に、ラグビー愛好家有志が参加した。3月30日、31日に秩父宮ラグビー場で行われる「東京セブンズ2013」(7人制ラグビー世界大会)、「2019ラグビーワールドカップ日本大会」の告知を行うためだ。パレード参加は80名に制限されたが、沿道のサポートも含めれば100名以上が口コミなどで集った。日本ラグビー協会もサポートしたのだが、この行動はファン有志が主体的に動いたものだ。そして、その熱を意気に感じて、日本人初のスーパーラグビープレーヤー、田中史朗選手もニュージーランドからfacebookなどで参加を呼び掛けた。根底には、「愛するラグビーが今一つ盛り上がらない。このままでは、2019年のワールドカップが心配」。そんな焦りにも似た感情がある。こうした愛好家たちの独自の動きは全国各所で行われている。

ラグビーのワールドカップは「世界三大スポーツイベント」といわれる。オリンピック、サッカーのワールドカップに次ぐ規模という意味だ。開催期間も約1カ月半あり、史上最高の収益を記録した2007年のフランス大会では、48試合で約225万人の観衆を集めている。単純計算で、1試合あたり約4万7千人の集客だ。日本でこんなに入るのか?と心配になるのは無理もない。

ラグビー協会はいったい何をしているのか。先日、ワールドカップ組織員会の徳増浩司事務局長に話を聞く機会があった。2009年に開催が確定して以降、日本スポーツ振興センターの助成金の確保、公益法人化などグランドワークに追われていたという。今年に入ってようやく国内プロモーションが開始された。1月下旬から2下旬の約1カ月間、ラグビーファンの意識調査を実施し、これをもとに今年の5月下旬に大会ビジョンを発表。そして、試合開催地、参加20チームのキャンプ地の選定が始まる。高校ラグビーの聖地、花園ラグビー場のある東大阪市、埼玉県熊谷市、岩手県釜石市などが動き始めているが、最終的に開催地が決まるのは、2015年5月の予定だ。

2013年については徹底してラグビー関係者の意識を高めることに注力するという。「開催地も何も決まっていないなかで一般にアピールするのは難しい。関係者、ラグビーファンから広げて展開していきたい」。競技人口は高校生世代が圧倒的に多く、重点的にノベルティを製作したり、ゴールポストのある校庭を支援するプログラムなどの案がある。並行して、小学生、その親世代へのプロモーションも行われるのだが、これについては、「タグラグビー」が原動力となりそうだ。タックルの代わりに腰の紐を取る身体接触のないラグビーである。

神奈川県横浜市ではタグラグビーが驚くほど普及している。横浜市教育委員会の依頼を受け、小学校で「タグラグビー出前出張授業」を行う鈴木雅夫さんによれば、この10年間で182校、10万人以上の子供たちが楕円球を持って走った。横浜市にある352の小学校の中で280校が体育の授業にタグラグビーを採り入れている。「2019年W杯のとき、横浜で試合が行われたら満員になると思いますよ」と鈴木さんは言う。「子供たちにとっては、タグラグビーも普通のラグビーも、ラグビーなんですよ。実際にタグを始めた子供たちが、大学やトップリーグの試合を見に行っていますから」。

2月23日、24日に決勝が行われた「サントリーカップ第9回全国小学生タグラグビー選手権大会」では、地域予選も含めて、1,067チーム、約1万人の子供たちが参加した。これだけの子供たちが、楕円球を持って走る爽快感を味わった。ラグビーの魅力をアピールするのに、これほどの直接的で有効なプロモーションはないだろう。子供たちが楽しめば大人もついてくる。冒頭の表参道のパレードでも、ラグビースクールの子供たちの実演が見物客の興味をひいた。子供たちに楕円球を。これから6年で、どれだけ多くの子供たちに楕円球を持ってもらうか。大会成功のカギだろう。

子供たちへのプロモーションとは別に、徳増事務局長の言葉で印象に残ったものがある。「まず大切なのはブランディングです。いまの国内の試合を見て、お客さんが少ないからワールドカップは大丈夫か?という見方ではなく、ワールドカップを空に輝く星のようにブランディングするのです」。ここが肝なのは確かだ。しかし、言うは易し。どのようなブランディングが行われるか、注目していきたい。2015年イングランド大会の前に日本大会の開催地が決まり、2017年には第一次のチケット販売が始まる予定だ。日本の前にもう一つ大会があると思うと先は長いが、今後のプロモーション活動、愛好家たちの動きについてもこの場で紹介していきたい。