「ラグビー界のiPhoneになる」。エディー・ジャパンの目指すスタイルとは?

新年度の日本代表は、4月1日の長野県菅平高原での強化合宿から始動する。エディー・ジョーンズヘッドコーチは、就任2年目の今季、目指すプレースタイルをさらに磨きあげようと意気込んでいる。春から夏にかけて、日本代表は、3カ月弱のあいだに、10試合の国際試合(テストマッチ)を戦う。六連覇を目指すアジア五カ国対抗(4月~5月)、強豪ウェールズ代表来日(6月)、フィジー、トンガ、アメリカ、カナダが参加するパシフィックネーションズカップ(5月、6月)への参加である。

ジョーンズHCは記者会見の冒頭でこう語った。「去年、日本代表に欠けていると分かったのは、フィジカル、ストレングス、そしてセットピース(とくにスクラム)のテクニックです。フィジカルとスクラムを向上させることが、我々の望む結果につながるでしょう」。つまり、強豪国に力負けしない屈強な肉体を作ること、そして、スクラムの強化が目標の世界トップ10入りには不可欠と強調した。

これら格闘技的要素を引き上げることはベースとして、ジョーンズHCは具体的な数字をあげて目指すプレースタイルを説明した。「昨年の日本代表は、1試合平均220回のパスをしました。オールブラックス(ニュージーランド)は180回、オーストラリアは150回、南アフリカは75回です」。世界ランキングのトップ3よりも、日本は多くのパスをしていた。パスでディフェンスを揺さぶり、スペースを作って抜き去る。これは、日本ラグビーの伝統的スタイルなのだが、ジョーンズHCは、「それが長らくできていなかったことが問題なのです」と指摘し、「我々が目指すのは世界のどこにもないラグビー。我々はラグビー界のiPhoneにならなければいけない。つまり、他国が真似をしたくなるようなプレースタイルです」と話した。

世界の強豪国のラグビーは、どんどんレスリングのような格闘的な要素が強くなり、よりフィジカルになっている。その中で、パスを多用して勝利に結びつければ、他国との違いは明確になり、日本ラグビーは世界の注目を集めるだろう。ジョーンズHCは、サッカーのスペイン代表や、なでしこジャパンのプレーを例にとって、正確でスピーディーなパス回しのスタイルを語る。最近は、WBCで三連覇した野球から引用し、「スモール・ラグビー」という言葉も使い始めている。

ただし、パスばかりでは相手に読まれてしまう。時にはキックを織り交ぜて前進しなければならない。「日本がいいときの、パスとキックの比率は、15対1」と説明し、だからこそ正確なキックが重要で、「日本代表はキッキングゲームでもベストのチームにならなければいけません。これらが上手く行けば、ディフェンス側は、パス、ラン、キックの的が絞りにくくなる」と続けた。

「みなさんに分かっていただきたいのは、アプローチが今までとはまったく違うということです。日本がするべきラグビーを自信と勇気をもってやっていきたい」。この言葉には、「批判を受けても、必ずやり遂げる」というニュアンスがあるように感じた。「リスクを背負ってもパスをする。もっとキックを使え、それは無謀だ、そう思うことがあるかもしれないし、負けることもあるかもしれないが、私は勇気を持ってやる」と言っているように聞こえた。

いずれにしても、今の日本代表がオーソドックスな真っ向勝負で、世界トップ10入りするのは不可能だ。綱渡りのように、観客をハラハラさせながら僅差で勝つしかない。パスを多くすればミスの可能性も高くなる。どこまで精度を高められるか。ジョーンズHCの手腕、選手達の思い切ったチャレンジをじっくり見させてもらいたい。