田中、堀江、リーチが加入したスーパーラグビーって何だ?

田中史朗、堀江翔太(ともにパナソニック)、マイケル・リーチ(東芝)といった日本代表選手の「スーパーラグビー」入りが、スポーツメディアを賑わせた。ラグビー界では快挙として高く評価されるが、この「スーパーラグビー」についての理解は、スポーツファンの皆さんでも、やや怪しいところがあるようだ。基礎知識として簡単に説明しておきたい。

スーパーラグビーとは、1996年に始まったプロ選手権である。ラグビーという競技は、大きく分けて2つある。日本で一般的な「ラグビーユニオン」と、北部イングランド、オーストラリアで盛んな13人制の「ラグビーリーグ」である。もともとは同じラグビーだったのだが、100年以上も前に袂を分かち、ルールも競技団体も違う別のスポーツである。「リーグ」は早くからプロを認めていたが、「ユニオン」は長らくアマチュアを堅持し、競技規則には「アマチュア規定」なるものがあった。ユニオンが「プレーの対価としての報酬」を認めたのは、1995年。アマ、プロ混合を認める「オープン化」と言われた。翌年から世界各地でプロ選手権がスタートするのだが、その先陣を切り、「世界最高峰のエンターテインメント・ラグビー」として人気を博したのが、スーパーラグビーなのである。

世界のラグビー三強国であるニュージーランド(NZ)、南アフリカ、オーストラリアの各協会(地域協会)がスーパーラグビー用の期間限定のプロクラブを作り、自国の精鋭を集めて12チームでスタート。当初は「スーパー12」と名乗った。その後、14、15とチーム数が増えたため、分かりやすく「スーパーラグビー」というタイトルに改められた。現在は、三か国からそれぞれ「5」の計15チームが参加。今年は、2月15日から8月3日まで開催。レギュラーシーズン(各チーム16試合)と、上位6チームによるファイナルシリーズで優勝を争う。

リーチが加入するチーフスは、NZ北島のハミルトンを本拠地とするチームで、昨年、悲願の初優勝を飾った。田中がプレーするハイランダーズは、NZ南島のダニーデンが本拠地で、昨季はNZ4位、総合9位。堀江のメルボルン・レベルズ(オーストラリア)は、オーストラリア4位、総合13位だった。過去最多の優勝回数を誇るのは、NZ南島のクライストチャーチがホームのクルセイダーズ(7回優勝)。オールブラックスのリッチー・マコウ、ダン・カーターの二枚看板を擁するチームだ。

海外選手とも契約しているチームが多いが、三か国の代表選考も兼ねているため、大半は自国の選手が自国のクラブでプレーする。若手選手にとっては、スーパーラグビーでプレーすることが第一関門であり、多くがそのチャンスを待っている。そこに、すでに日本代表選手である3人を加えたことには批判の声もあるようだが、勝利が収入に直結するプロチームのメンバーに入れたことは、まさに快挙だ。

スーパーラグビーは、エキサイティングな試合展開が魅力である。2013年のスーパーラグビー・メディアガイドによれば、昨年はボールが動く「インプレー」の時間は、一試合(80分)のなかで、およそ35分。インプレー中に使われるキックは、両チーム合わせて約41回。ラグビーはスクラムやラインアウト、トライ後のコンバージョンキックなどでゲームが途切れることが多いが、35分間ボールが動くと、見ている方は飽きることなく観戦できる。

トップリーグ・NTTコミュニケーションズの林雅人監督は、ゲーム分析の第一人者だ。林さんがコーチの道に入った1987年あたり、コーチをしていた清水建設ラグビー部のインプレー時間は23分だったという。この頃の日本ラグビーの平均的な数字だ。その後、インプレー時間は次第に増え、無用なキック合戦も減った。トップリーグ連覇のサントリーサンゴリアスは、一試合で10回台のキックしか使わない。「インプレー中のキック41回というのは、トップリーグでは平均的だと思います」。むしろ、トップリーグのほうがペースが早いというのが林さんの見方だ。田中史朗、堀江翔太という日本人選手の参戦がかなった理由の一つでもあるだろう。

「違うのはコンタクトの部分。ダンプカーの中に小型車が入って同じ力を発揮できるか、ということ。ただし、日本人でもサイズ、フィジカルで負けない選手が出てきていますから、ボディバランス、体さばき、という言い方をしたほうがいいかもしれませんね」。

俊敏にパスをさばく田中史朗、天性のボディバランスの良さでタックルをかいくぐる堀江翔太、マイケル・リーチは、スーパーラグビーを、さらにペースアップできるのか。日本選手の良さが認められれば、今後、スーパーラグビーでプレーする日本選手はさらに増える。ただ試合に出るだけではなく、彼らがチームの中で十分に機能しているところを早く見てみたいものだ。