帝京大学の連覇はどこまで続く? 大学ラグビーの価値とはなんだろう。

帝京大と筑波大の決勝戦を見た感想を、観戦歴の浅い知人がこう言っていた。「帝京大学は、練習通りプレーしているのだろうなって思いました。どこにボールが動いても、キックしても、他の選手がそこに走り込んできていたでしょう」。その通りだと思う。帝京は繰り返し練習してきたことを正確に遂行した。全員がその意味を理解しながら練習に取り組み、身に着けているということだ。個々にボールを奪いに来る筑波に対し、素早い集散でボールを乗り越えるように確保していたのも見事だった。

スクラム、ラインアウトなどのセットプレーは安定し、ディフェンスも全員の危機管理能力が高く、万事にスキがなかった。その強さの理由に、有能な人材の確保、そして留学生の存在があるのは確かだが、それだけならば同じことをしている大学はある。帝京が他大学と圧倒的に差をつけているのは、体づくりである。

昨年、日本代表選手の肉体が劇的に変化したのはよく知られている。世界のラグビー界で屈指のストレングス&コンディショニングコーチであるジョン・プライヤー氏を軸にしたコーチングスタッフは、日本代表選手に強度の高いトレーニングを指導し、栄養と休養を適切に織り交ぜた。すると、動きの質を落とさず、筋量を増やす選手が続出した。その日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチが、帝京大学の体づくりを高く評価する。帝京大学は、2011年春にスポーツ医科学センターを設立し、管理栄養士、トレーナー、フィジカルコーチなどの専門家が、科学的に競技力を向上させる方法を実践、検証している。ラグビー部の選手達はその先端をいくモデルケースなのだ。

身体動作の専門家は帝京大学の選手達を見て「強さとしなやかさが共存している」と感想を漏らす。ハイパフォーマンス・コーディネーターの手塚一志さんである。手塚さんは、野球、ゴルフ、テニス、ラグビーなど、さまざまなプロスポーツ選手の心技体の向上をサポートする。「心技体、何かが突出すれば勝てる時代ではありません。いまのスポーツは、心技体がひとつになって相乗効果を発揮しないと勝てない時代です。それができているのが、帝京大学だということでしょう」。

トップリーグでトライ王になった山田章仁という選手がいる。昨年は、アメリカンフットボールとの二刀流でも話題になった。山田選手は、一昨年のシーズンより6キロの増量に成功し、筋肉の鎧をつけたような肉体で、しなやかで鋭角的なステップを使いこなす。手塚さんは言う。「以前は、あの筋肉のつき方で、あのステップワークは考えられませんでした。強さとしなやかさを共存させるトレーニングが熟成されてきたということです」。

帝京を追いかける大学チームが取り組むべき課題は多い。体づくりだけで強さを測れば、他大学が追いつく前に帝京の連覇は、5、6とさらに伸びるだろう。今季、史上最重量のFWを作り上げた東海大は体づくりの面で帝京に接近している。能力の高い選手が多い筑波、明治、早稲田らも帝京を倒す可能性を有する大学だろう。一昨年の決勝戦で帝京を追い詰めた天理のように、大きな相手を倒すためのノウハウを蓄積しているチームもあり、帝京がどこかでつまずく可能性はある。しかし、トレーニング環境、日本一を目指す選手の意識の高さ、日々の練習に取り組む姿勢を見る限り、少なくとも今季の高校ラグビーのスター選手が入学する今春から4年間は優勝候補筆頭になることは間違いない。

ふと考える。大学ラグビーが日本のラグビー界を引っ張ってきたのはなぜか。革新的な戦術、新たなトレーニング理論などを研究し、実践、検証を繰り返す学びの場でもあったからだ。その過程に人々が惹きつけられたのは、人気の要因の一つだった。強化費や練習環境などに大学間の差はあっても、ラグビーについてさらに深く考えることはできるはずだ。決勝戦で敗れた筑波大学の内田キャプテンが言っていた。「帝京大学に勝つために考えなくてはいけない。そう思わせてくれるチームは多くありません」。強大なチームが現れたことを前向きにとらえ、勝つためにとことん考える。その先にラグビーの可能性が広がる。帝京の連覇が続くかどうかは他大学次第。来季以降、日本のラグビー理論が大きく進歩するのを、楽しみに待ちたい。