フィジカル不足とは?

日本代表の欧州遠征は、2勝2敗で終了した。廣瀬俊朗キャプテンが「目標の2勝ができて良かった。成長を実感できた」と語った通り、ルーマニア、グルジアとのテストマッチ(国代表同士の試合)に勝利したことにこそ価値がある。選抜チームとの2試合には敗れたが、今回は、この遠征中にエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが発した「(日本の選手は)フィジカル面がまだまだ足りない」というコメントについて考えてみたい。

もしかすると、フィジカルという言葉だけでは真意は伝わらないのではないかと思うからだ。「フィジカル(physical)」。英和辞典で調べると、「身体の、肉体の」と出てくるが、ラグビーでは「肉体的に強く激しい」という形容詞として使われる場合が多い。「フィジカルな試合」という言い方もあるし、「フィジカル・コンタクト」といえば、激しいコンタクトという意味だ。ジョーンズHCも、“We are still not physical enough”という言い方をしており、「肉体的な強さ」を指している。

ラグビーのプレーでいえば、「タックルで相手を押し返す」、「ボールを持って相手にぶつかったときに力強く前進する」、「相手が持っているボールをもぎとる」、そんなイメージだろう。ただし、日本人が体格もパワーも、強豪国の巨漢選手にかなわないことは前提条件。だからこそ、日本代表もボールを動かし続け、運動量で勝利する道を模索しているはずだ。それでも、ジョーンズHCが、あえてフィジカル不足を指摘するのは、日本ラグビーの体づくりの取り組みが、世界のトップレベルに比して低すぎるからだ。

今春、日本代表の合宿に参加した選手の肉体は、みるみる逞しくなった。要因には、ジョーンズHCを補佐するジョン・プライヤーS&C(ストレングス&コンディショニング)コーディネーターの手腕がある。オーストラリア、南アフリカ、イングランドなど強豪国で指導にあたってきたジョーンズHCが、「S&Cコーチとして世界のトップ3に入る」と称賛するコーチだ。昨季まではサントリーサンゴリアスのコーチを務めていた。他チームの監督から、「サントリーの選手のウエートトレーニングは惚れ惚れする」と聞いたことがある。各種目での体の使い方が教科書通りだというのだ。トップリーグの各チームで鍛えられているはずの肉体が短期間に変化したのだから、大学レベルは言わずもがな、である。

適切な食事、睡眠をとり、適切なトレーニングをすれば、日本人もまだまだ強くなれる。持久力、スピードも上がる。ジョーンズHC、プライヤーS&Cは、その後、国内の各チームを回って情報の共有に努めている。日本ラグビーの伝統的なスタイルは、俊敏に動き回ってパスをつなぐ「ランニング・ラグビー」だが、それを磨きつつ、フィジカル面も限界まで引き上げなければ、格闘技要素の強いラグビーでは勝つことができない。日本代表合宿で鍛えるのではなく、各チームが質の高い体づくりをし、世界レベルのフィジカルを持つ選手が集まって技を磨く。そんな流れを一刻も早く作りたい。それが、ジョーンズHCの願いである。