ゴールデンウィークにサッカー観戦をしにヨーロッパに出かけた知人が、羽田空港での検疫で陽性判定が出て、都内某ホテルで1週間隔離生活を余儀なくされた。

半年後にはカタールワールドカップが開幕する。世界的な情勢を見ても、今後国を跨いで移動する人々は確実に増えてくるだろう。

2022年5月時点での空港での水際対策がどうなっているのか、隔離中の当事者にオンラインでインタビューをして、現場で起きていることを聞いた。

日本の検疫は厳重なダブルチェック体制

まず5月時点における日本の検疫のルールを整理する。

・日本に向けて出発する72時間以内に現地でPCR検査を受けて陰性証明書を提出しないと、帰国便に乗ることができない

・更に日本入国時に数時間で検査結果がわかる抗原検査で陽性だと最低でも1週間隔離される

このように現地出国時と日本入国時、ダブルで検査が行われる運用となっている(ちなみに5月現在、ほとんどの国でワクチン接種証明書を提出すれば、検査が免除されるルール)。

ドイツで出国2日前に受けたPCR検査の結果は陰性だった。フランクフルト空港での出国手続きは問題なく完了し、帰途に就いた。

検疫でまさかの陽性判定

16:40

13時間のフライトで、日本時間5月9日16:40に羽田空港に着陸。機内では比較的睡眠が取れた。

17:00

航空機を降りて、事前に入力しておいた入国者健康居所確認アプリ(MySOS)の登録情報を係員に見せて、書類を作成する。煩雑な作業だが、これをしないと入国できないので従順に対応する。

17:30

検査キットを受け取り、自ら唾液を採取。唾液が出やすいように、レモンや梅干の写真が貼られているのを見て、ちょっと笑ってしまった。

(以下、すべての写真はインタビュイー提供)
(以下、すべての写真はインタビュイー提供)

所定の場所に提出し、待機場所へ。検査結果が出次第、電光掲示板に数字4桁の自分のIDが表示されるルールとなっている。

自分のIDは1時間経っても表示されない。その後、自分よりも後ろの人のIDがどんどん表示されて、待機場所から人がいなくなっていく。

2時間経ってもまだ自分のIDが表示されない…。段々と不安が募る。

20:10

係員に呼び出され、「陽性」と書かれた書類を手渡された。

陽性と書かれた書類
陽性と書かれた書類

「何ひとつ症状のない自分がなぜ?」と思ったが、ここで文句を言ってもしょうがない。係員の指示に従って、別の場所へ移動する。

ウクライナ人女性が涙する姿に心打たれる

別の待機場所には、見た目から日本人と思わしき人が自分を含めて5人、見た目が日本人には見えなさそうな外国人が4人いた。

すぐ隣に若いウクライナ人の女性がいたが、日本語も英語も話せず、翻訳アプリを使いながら検疫官と会話しているのが聞こえてきた。

涙声で「強制送還させられてしまうのか」と彼女は話しているようだった。検疫官も隔離されるだけである旨を伝えたいようだったが、何ともいたたまれない気持ちになった。

21:20

弁当とお茶が支給される。このタイミングで支給されるということは、まだまだ時間がかかるのかとため息が出る。

22:00

陽性判定が出てから2時間ほど経ったのに、今後の話を一切説明されない。近くにいる検疫官に「何時にここを出発できるのか? 隔離先はどこなのか?」と聞いても、「わからない」という回答のみ。

症状が出ている外国人は、ゲホゲホ咳込みながらぐったりしている。どんよりとした空気が待機場所を包み込む。

24:30

別途係員が各陽性者の入国手続きを代行してくれた。預けていたパスポートが戻り、ようやく入国完了。

陽性判定が出てから4時間20分後、やっと係員に案内されて、バスで空港を出発する。バスの座席シートがすべてビニールシートで覆われているのを見て、自分が陽性者だと再認識する。

隔離先へ移動するバスの車内
隔離先へ移動するバスの車内

25:00

隔離先の都内ホテルに到着。ひとりずつバスを降ろされ、健康状態のチェックをされる(自分は依然平熱)。

25:45

部屋に到着。内線通話で隔離時の注意事項の説明を受ける。久し振りにシャワーを浴び、歯磨きをする。

ベッドに横になったのは26:30くらいだったろうか。空港の固い椅子で長時間待たされた後だったので、吸い込まれるように眠りに落ちた。

振り返ると、着陸から隔離先のホテルで横になれるまで、約10時間かかった。

自分自身は無症状だったので何とか耐えられたが、空港の待機場所で同じように待たされた人の中には、明らかに体調が悪そうな人もいた。彼はホテルに着いた時に更に体調が悪化しているように見受けられた。

苦痛の隔離生活

隔離のルールとしては、抗原検査をした日を0日目とカウントし、翌日から7日間隔離、無症状なら8日目に隔離解除となる(発熱していれば、また別のスケジュール)。

隔離先のホテルの部屋
隔離先のホテルの部屋

ちなみにホテル到着時、「刃物は持っていますか?」と聞かれて、T字型のカミソリを持っていると答えると、「お預かりします」との回答。刃物は危険物ということで持ち込めないのだろうが、機内持込可能なカミソリまで没収される運用には驚いた。

隔離期間中の滞在費、食費は無料だ。

三食決まった時間に弁当が支給されるが、致命的なのは電子レンジが部屋にないため、毎回冷たいままご飯を食べないといけない点だ。

窓は3cmほどしか開けられず、ほぼ外気にあたることができない。当然散歩も禁止だ(部屋の外に出てはいけないルール)。

衣類は洗濯機などあるはずもなく、基本全部手洗いで対応しなくてはいけない。

知人からの差し入れやネット注文した商品の受け取りは、受け渡し時に中身のチェックがされるが、原則可能だ(アルコール類は禁止)。

Wi-Fiが使えてリモートで仕事ができたので、自分の場合は何とか隔離生活を乗り越えることができたが、リモートで仕事ができないワークスタイルの人にとっては、更に休暇を取るなど難しい対応となったことだろう。

自分は最終日まで一度も発熱せず、無症状だった。偽陽性の可能性も考えられるが、再検査などはさせてもらえなかった。

1週間の隔離生活を振り返ると、人ともじかに会えない、気晴らしに散歩もできない、毎日の唯一の楽しみは食事のみ、という何とも味気ない7日間だった。

5月17日早朝に無事、隔離が解除されて「出所」することができた。じかに浴びる朝日がまぶしく、頬にあたるそよ風がとても心地良い。

「自由」とはこんなに素晴らしいことなんだと、改めて認識する体験となったように思う。

海外渡航者は最新情報をチェックしてほしい

政府は6月以降、一部の国や地域からの入国者は抗原検査を免除することを検討している(ニュースソースはこちら)。

日本の水際対策も、コロナ情勢に応じてその都度アップデートされていくだろう。とはいえ、感染状況次第では、このような検疫運用が継続されることも考えられる。

今後サッカー観戦などで海外に渡航する人は、最新の水際対策がどうなっているか常に確認してほしい。5月時点の情報として、この実体験レポートが参考になれば幸いだ。