世紀の茶番? 日本対ポーランドのスタジアムで何が起きていたのか

日本対ポーランドの試合終盤にタオルマフラーを掲げて応援するポーランドサポーター

体感温度が40度を超えた灼熱の地、ヴォルゴグラード・アリーナは試合終盤、皮肉にもこの日最も熱がこもった大ブーイングに包まれたのだった――。

日本対ポーランドはヴォルゴグラード・アリーナで行われた(筆者撮影)
日本対ポーランドはヴォルゴグラード・アリーナで行われた(筆者撮影)

6月28日、日本代表は決勝トーナメント進出を懸けて、グループステージ第3戦、ポーランド戦に挑んだ。日本代表は後半14分にセットプレーから痛恨の失点を喫するも、同時刻開催のセネガル対コロンビアで後半29分にコロンビアが先制したことにより、勝ち点、得失点差、総得点全てで日本とセネガルが並ぶ珍しい事態となった。

ワールドカップのレギュレーション上、次に順位を決定する要素はフェアプレーポイントとなる。イエローカードやレッドカードを提示された数で換算されるポイントのことで、この時点で日本がセネガルをフェアプレーポイントで上回り、決勝トーナメントに進出できる2位に浮上した。

そこで西野監督は後半37分に武藤に替えて長谷部を投入し、このままのスコアで試合をクロージングするように指示。日本代表の守備陣が後方で安全なパス回しをする中、この試合の勝利がほぼ手中にあり、かつ2点目を取りに行ってもグループステージ敗退は変わりないポーランドの攻撃陣も無理にボールを追わず、ラスト10分間はまさに「無気力試合」の様相を呈したのだった。

大多数のロシア人からは大ブーイング

勝利を確信し、意気揚々とタオルマフラーを掲げて応援歌を歌うポーランドサポーター(筆者撮影)
勝利を確信し、意気揚々とタオルマフラーを掲げて応援歌を歌うポーランドサポーター(筆者撮影)

ポーランドサポーターは勝利を確信し、タオルマフラーを掲げて応援歌を意気揚々と歌い続けていた。

日本代表サポーターもスマホで裏の試合のスコアを確認し、状況を理解した上で応援を続けたサポーターが多かった。

しかし、第3者としてスタジアムを訪れた大多数のロシア人にとっては話が別だ。

現地の物価としては非常に高価な観戦チケットを買って、極上のエンターテインメントを鑑賞しに来たはずの観客にとっては、「談合試合」とも呼べる体たらくな内容を見せられて、納得しなかったのだろう。容赦ないブーイングをピッチに浴びせる人、試合終了のホイッスルを待たずに席を後にする人、とにかく不満をあらわにした観客が非常に多かった印象だ。

試合後に日本代表サポーターに話を聞いてみると、「こんなレアな試合を現地で生で観戦できて幸せだ」とポジティブに捉える人、「折角何十万円もかけてロシアまで来てこんな試合を見せられて釈然としない」と否定的な感想を述べる人、悲喜こもごもだった。

責められるべきは選手ではなくルールを決めているFIFA

ちなみに筆者にとって、国際大会のグループステージ第3戦にて「談合試合」とも呼べる内容のゲームを目の当たりにした経験は、これで4回目だ。

過去の3回は以下の通り。

  • 2012年 ロンドン五輪 女子サッカー グループステージ第3戦 日本対南アフリカ
  • 2017年 韓国U-20ワールドカップ グループステージ第3戦 日本対イタリア
  • 2018年 ロシアワールドカップ グループステージ第3戦 デンマーク対フランス

世界の注目を集める国際大会において、このように賛否両論が巻き起こる試合は何度も繰り返されているのが現状だ。筆者の見解としては、責められるべきはチームや監督、選手たちではなく、レギュレーションを決めているFIFAだと考える。

選手たちはルールに則って、目先のゴールではなく、その先にある目標「決勝トーナメント進出」を達成すべく、プレーしただけだ。その決勝トーナメント進出を達成するための要素は、勝ち点→得失点差→得点→フェアプレーポイントの順で決まるとFIFAが決めている。チームはその優先順位に従って、終盤の戦術を選択したまでだ。

このように最終戦で勝ち点や得失点差、フェアプレーポイントを考慮して「無気力試合」が横行することを良しとしないならば、全てノックアウト方式の決勝トーナメントにすればいいだけだ。そうすれば無気力試合はなくなる。

では、大会を主催するFIFAは何故そのような改革を断行しないのか。

不条理なルールも含めてサッカーである

ここからは筆者の仮説だが、リーグ戦で勝ち点を競い合うスタイルは100年以上続く欧州サッカーの歴史そのものであり、最終戦で両チームがずる賢く「談合」する試合展開も含めてサッカーの文化であると考えているのではないか?

欧州のサッカー通はよく、「This is football(これぞサッカーだ)」という決まり文句を口にする。このような不条理な要素も含めて、サッカーなのだと。

日本対ポーランドの2日前にモスクワのスタジアムで観戦したデンマーク対フランスでは、終盤の「談合試合」の様相を呈してきた際にデンマークサポーターは後方でのパス回しの度に「オーレ!オーレ!」の大合唱をして、お祭り騒ぎだった。サッカー文化が浸透した欧州のサポーターは、サッカーの楽しみ方を熟知しているように感じた次第だ。

ただし、サッカーのルールは年々変化してきている。例えば、ペナルティエリア内で裏でずる賢くユニフォームを引っ張るプレーは、今までは審判に見つからなければ咎められなかったが、今大会からVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)が導入され、公正に罰せられることになった。

どの業界でも「ポリティカル・コレクトネス」が叫ばれる昨今、FIFAも「談合試合」を減らすべく大ナタを振るう日が来るかもしれない。

とにもかくにも、日本代表はアジアで唯一、決勝トーナメント進出を果たした。日本サッカー史上初のワールドカップベスト8進出という歴史の証人となるべく、筆者は今後もロシアに滞在して決勝トーナメント1回戦のベルギー対日本をスタジアムで観戦する予定だ。

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