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コンサドーレがペトロヴィッチ監督を招聘した本当の理由 野々村芳和社長突撃インタビュー

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
ペトロヴィッチ氏招聘の理由を語るコンサドーレの野々村芳和社長(スタッフ撮影)

明治安田生命J1リーグの最終節が終わった翌々日、12月4日に筆者は株式会社コンサドーレの野々村芳和社長へのインタビューを行った。

本来は他媒体における取材の場だったが、テープ起こしや編集作業などを考慮すると、原稿が世に出るのは2~3週間後になってしまうため、今が旬な「時事ネタ」のみをピックアップして、当コラムで紹介する。

先週のミハイロ・ペトロヴィッチ札幌就任報道の経緯や最終節後のセレモニーにおける秘話、ペトロヴィッチ監督を札幌に招聘した理由について伺った。

本来は金曜朝に一斉に新聞が報じるはずだった

アシシ:まずは今シーズン、お疲れ様でした。J1リーグで11位なんて、サポーターとして夢のようです(笑)。

野々村社長(以下野々村):正直、出来すぎだよね。色んなことがうまい具合に噛み合ったんだけど、今季の成功要因については冷静に分析する必要があると思ってる。

アシシ:では、いきなり本題に入ります。まずは直近の話を伺いたいんですけど、先週木曜夜に浦和の元監督であるペトロヴィッチ氏、皆ミシャって言ってるからミシャと呼びますけど、ミシャが札幌の監督に就任するとNHKが報じました。なんで一発目の報道がNHK独占だったんですか?

野々村:それには色々経緯があって。札幌はミシャとの交渉を結構前からしていて、2カ月前くらいには既にメディア関係者が知ってしまった状態になっていたのよ。シーズンを戦っている最中にこういった情報が出るとチームに悪影響が出るし、四方田監督に先に話してからでないとこちらとしても困るし、メディア各社に対しては正式決定するまではちょっと協力してくれとお願いしたわけ。それで晴れて仮契約までいったので、先週木曜の午前かな? 各社を集めて今まで協力してくれたことに感謝して、明朝の新聞で報道してOKですと伝えたんだけど、そしたら1社が出し抜いた形になってしまった。

アシシ:そんな経緯があったんですね。NHKが抜けがけをしたと。

野々村:その報道が明朝に出る新聞と同じく、ちゃんとした内容だったら良かったんだけど、四方田が辞めてミシャになると短絡的な報道になってしまったのは残念。各社集めて話した時は、四方田にはヘッドコーチとして残ってくれとお願いしてるけど、今まだ悩んでいるという情報まで丁寧に説明したんだけど。

アシシ:この経緯、書いて大丈夫ですか?

野々村:別にいいよ。

まさに海外ドラマ24のような最終節セレモニーの秘話

アシシ:それで新聞各社が紙面で一斉に報じたのが12月1日金曜。間を置かずに12月2日土曜の最終節鳥栖戦を迎えるわけですが、試合後のセレモニーは、裏にプロのシナリオライターでもいるんじゃないかって感じるくらいに、完璧なストーリーだったなと感じました。

野々村:俺としては四方田監督にセレモニーで最後、サポーターによく頑張ったと言ってもらえる場を作りたかったわけ。シーズン終わった後だとそういう場を用意するのが難しいから。最初スタッフにセレモニーの進行表を作ってもらったんだけど、俺はこうやりたいと言って、あの形に変えてもらった。

アシシ:今季を振り返る映像を皆で見て、スタジアムを選手スタッフ皆で一周して、これで終わりかと思いきや、最後に四方田監督の挨拶で「来季もヘッドコーチとして頑張ります」という発表があり、ゴール裏の熱いサポーターたちは皆泣いていたと後から聞きました。

野々村:あの後に流れたミシャのビデオメッセージは、前日にミシャにお願いして送ってもらったのよ。

アシシ:前日ですか!(笑)

野々村:セレモニーで使うかまだわからないけど、四方田監督に向けたあのビデオメッセージは、本人に前日見せるためにお願いしたんだよ。

アシシ:ということは、まだ前日では四方田さんは決めかねていたということですよね。四方田監督が最終的に決断したタイミングはいつですか?

野々村:試合当日の朝10時くらいかな。

アシシ:キックオフ4時間前ですか! まさに海外ドラマ24(トゥエンティーフォー)ばりの展開ですね。

野々村:ある意味賭けだったけど、本当にうまくいって良かったと思ってる。

なぜミシャを招聘したのか?

アシシ:12月1日金曜朝のHBCラジオに野々村社長が生出演して「更なる高みを目指すためにミシャを呼んだ」と話してました。尺の関係もあったと思いますが、ちょっと抽象的だなと。もっと戦術的な話とか、目指すサッカーがどういったものになるのか、具体的に教えて頂けますか?

野々村:ざっくり言うと、現実的なサッカーで何とか凌ぐやり方だったり、「弱者のメンタリティ」で頑張る、一体感を持ってやり切るスタイルは、それはそれで素晴らしいんだけど、更に上に行くには守備だけじゃなくて「攻撃のDNA」をクラブに植え付けなくてはいけないと思ってる。

アシシ:なるほど。

野々村:では、そういった「攻撃のDNA」をクラブに植え付けてきた監督って誰がいるんだって考えた時に、何人か候補は挙がるんだけど、そのうちのひとりであるミシャがこの夏にフリーになったと。これは逃しちゃいけないでしょとなって、オファーした経緯がある。

アシシ:その攻撃的なサッカーをやるために、例えばミシャチルドレンと呼ばれる、ミシャが育てた選手たちを獲得するとか、そういう予定はありますか?

野々村:大体そんなお金がうちにあるわけがない。

アシシ:そうなんですか(笑)。じゃ、今のメンバーでミシャの攻撃的サッカーはできるんですか?

野々村:俺は絶対できると思っている。ボールを繋げる選手、札幌に多いよ。

アシシ:磐田戦でしたっけ? セレモニーでも18本とかのパスが繋がったゴール映像流してましたけど、「やればできんじゃん」と思った美しいゴールが今季、何回かありましたね。

野々村:そういった攻撃的なサッカーをやって、他のクラブの選手が札幌のサッカーは面白いから移籍したいと思うようなクラブにしなくちゃいけないと思ってる。

アシシ:ただ、ミシャのサッカーって浸透するのに時間がかかる印象があります。

野々村:それもわかってる。

アシシ:実際にミシャは広島時代、就任2シーズン目にJ2に降格したことがあります。3季目はJ2で無双して1年でJ1に戻ってきましたが、そうやってミシャのサッカーがうまく噛み合わなくて、万が一J2に降格したとしても、長い目で見て一緒にDNAを植え付けていこうという覚悟みたいなのはお持ちですか?

野々村:もちろん。そういう長期的ビジョンの話はミシャともしている。

アシシ:なるほど。ちなみに正式契約はいつになるんですか?

野々村:Jリーグとのやり取りとかもあるから、もうちょい先じゃないかな。

アシシ:そうなんですね。来季だけじゃなく、将来も見据えたビジョンを聞けて、サポーターとしては夢が膨らむばかりです。期待しています。

野々村:来年もサポーターと一体感持ってやっていきたいから、応援よろしくお願いします。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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