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U23日本代表がオリンピック出場を決めた3つの要因とは?

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
準決勝イラク戦勝利後に記念撮影を行う手倉森ジャパン(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

U23日本代表はリオデジャネイロ五輪のアジア最終予選を兼ねるAFC U23選手権の準決勝、対イラク戦に2-1で勝利し、見事に五輪出場切符を獲得した。

下馬評では苦戦が予想されていたが、今大会は今までの5試合全てで先制し、守備面でも合計2失点。内容面ではひやひやさせられるシーンが多々あったが、数字面ではこの上ない成績で5連勝し、五輪出場を決めた。

このコラムでは、各試合で活躍した選手に焦点を当てるミクロの視点ではなく、協会の運営面も含めたマクロの視点で、五輪出場権を獲得した背景を分析する。

筆者は大きく分けて、3つの要因があると考える。

上の世代を招集せずに一貫してこの世代で強化を続けてきたこと

2014年1月にオマーンで開催されたAFC U23選手権と、2014年9月に韓国で開催されたアジア大会は、どちらも当時の23歳以下の選手が出場できるレギュレーションだった。

つまり、ひとつ上の年代の宇佐美貴史なども招集できたわけだが、JFAはリオデジャネイロ五輪世代を強化するために、敢えて当時のU21日本代表メンバーで両大会に挑んだのだ。

結果的には、ルール通りに23歳以下のベストメンバーで挑んできたイラクと韓国相手に、年齢面でのハンデを克服できずに両大会の準々決勝で敗北を喫したわけだが、目先の勝利にとらわれず、地道に2年前からこの世代にアジアの経験を積ませてきたからこそ、今大会の成果に結び付いたと言えるだろう。JFAの長期的な育成計画が花開いたと評価したい。

シーズン中である海外組の久保裕也、南野拓実を招集できたこと

2つ目の要因は、スイスリーグに所属する久保裕也、オーストリアリーグに所属する南野拓実をシーズン中にもかかわらず、日本代表に招集できたことを挙げたい。

スイスリーグもオーストリアリーグも現在ウィンターブレーク中ではあるが、合宿を行っている最中だ。アンダー世代の大会には代表チームの招集に強制力がないのだが、JFAの地道な交渉によって、海外組2人の招集を実現できたことは大きい。

特に久保裕也は今大会3ゴールを決めており、現在チーム得点王だ。彼の活躍なくして、この快進撃は有り得なかっただろう。

ターンオーバーを遂行してチーム全体が一丸となれたこと

3つ目は、この5試合でフィールドプレーヤー全員を出場させた手倉森監督の采配に焦点を当てたい。

この5試合の出場記録をまとめてみた。

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  • 3試合連続スタメンは植田と中島の2人のみ
  • 4試合スタメンは櫛引、植田、室屋、遠藤、中島の5人のみ
  • 途中出場含め、5試合全てに出場した選手は久保1人のみ

中2日で試合が続く過密日程を見据えて、選手を適度に休ませるターンオーバーを敢行した上で結果を出したのは素晴らしいの一言。スタメンを固定しないことで23人全員に緊張感が生まれ、士気も向上し、チーム一丸となって闘える雰囲気を作り出した手倉森監督のチームマネジメント力に賛辞を送りたい。

決勝戦も勝って、アジア王者としてリオへ行こう

最後にまとめると、U23日本代表の快進撃の要因は以下の3つだ。

  • 五輪世代を強化する一貫した育成方針
  • ベストメンバーを招集するためのクラブとの交渉力
  • ターンオーバーを好結果に結び付ける監督の手腕

これら3つのうち1つでも欠けていれば、違った結果になっていたかもしれない。JFAの運営面も含めた日本サッカー界の総合力で勝ち取った五輪切符と言えるだろう。

決勝戦の相手は永遠のライバル、韓国に決まった。決勝戦は日本時間で1月30日(土)23:45キックオフだ。オリンピックでメダルを目指すためにも、アジア王者の勲章を胸にリオデジャネイロに向かおうではないか。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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