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アイドルはClubhouseをどう使う?~ネットコンテンツに登場したブルー・オーシャンを考える

宗像明将音楽評論家
(筆者によるスクリーンショット)

Clubhouseの5つのポイント

現在話題の音声SNS・Clubhouse(クラブハウス)。1日ほど触れてみて感じるのは、とにかく会話が発生するハードルが低く、人との出会いが発生しやすいということだ。コロナ禍による緊急事態宣言下の日々のなかでは、なかなか楽しい。

2021年1月28日の21時から、友人たちが「アイドルはClubhouseをどう使う?~アイドルオタク雑談会」というRoom(Clubhouseでの配信枠の呼称)で配信をしていたので参加してみた。元アイドルの人が発言してくれるのも、まだ人が少ないからこその面白さだと言える。

Roomの画面。モデレーター以外は加工した(筆者によるスクリーンショット)
Roomの画面。モデレーター以外は加工した(筆者によるスクリーンショット)

Clubhouseをアイドルがどう活用するかについての議論から、私見として以下5点をポイントとして挙げたい。

1.音声のみなので気軽

2.招待の経路が見えてしまう

3.現在はそもそも人がいない

4.マネタイズができない

5.珍しく現れたブルー・オーシャン

音声のみであることは、一般人にとってはClubhouseの気軽さの大きなポイントだ。ただ、アイドルの場合はツイキャスやSHOWROOMの音声配信と何が違うのか――という問題が浮上するだろう。

また、執筆時点では「ユーザーを誰が招待したのか」が表示される。アイドルの場合は、ファンがそれなりに納得できる人物からの正体ではないと、微妙な空気になるだろう。

そして、現時点での問題は人が少ないことである。後述するが、これは現在のClubhouseの面白さの大きな要因ではあるが、マーケットとしてみるとごくごく小さい。

そして、現時点でのClubhouseには、直接的なマネタイズの手段はない。前述のツイキャスやSHOWROOM、そしてYouTubeのスパチャのような投げ銭的な機能はない。17LIVEのような、課金がカジュアルなカルチャーでもない。

しかし、非常に重要な点は、コロナ禍であらゆるネットコンテンツがレッド・オーシャンとなり、時間の奪い合いで新規参入者がなかなか台頭できない状況になっているなかで、現時点のClubhouseは珍しいほどのブルー・オーシャンであることだ。これはもっとも注目されるべき部分であり、現在のClubhouseにとっての最大の価値だろう。後述する現時点でのClubhouseの状況も考慮すると、「囲い込み」には強力なサービスなのだ。これをどう評価するか? そして、今後の状況次第でアイドルにとってのClubhouseの意義は大きく変わるだろう。

運営は、ひとまず下見に参加しておいたほうがいい。

まだまだカルチャー系が弱いClubhouse

アイドルという視点で見れば、小嶋陽菜さんの存在はClubhouseの最終兵器と言ってもいい。ただ、カルチャー系のRoomにはまだまだ人が少なく、名の知れたミュージシャンのRoomでも、50~60人いれば多いほうだ。

では、現時点ではどんなユーザー層が多いのか? それはビジネス系の人々が圧倒的に多い。IT、ベンチャー、インフルエンサー、オンラインサロン……といった言葉で表現することもできるだろう。前述の「アイドルはClubhouseをどう使う?~アイドルオタク雑談会」も、実は広告業界やIT業界の人間が多かったという状況だ。

ビジネス系の人々が圧倒的に多いなか、カルチャー系の人々はマイノリティである。Roomを作るだけで、アンダーグラウンド・レジスタンス化してしまうのだ。「アイドルはClubhouseをどう使う?~アイドルオタク雑談会」も、「地下アイドルならぬ地下配信」だとみんなで自嘲していたが、常に30~40人は聞いてくれていたので、現状ではカルチャー系としては充分に多い部類だった。

実は、現状では業界の裏方のコミュニケーションの場としてはかなり面白いことにも気づいた。冒頭で挙げた「とにかく会話が発生するハードルが低く、人との出会いが発生しやすい」という特徴のためである。

問題は、Clubhouseの1週間後の世界である。もちろん、「今が一番楽しい」という状況の可能性もある。2003年のOrkutの登場時のような楽しさがClubhouseにはあるからだ。ともあれ、機会があればClubhouseがどんな空間なのかは見ておいて損はないだろう。

筆者のプロフィール画面(筆者によるスクリーンショット)
筆者のプロフィール画面(筆者によるスクリーンショット)

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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